SUDCO MIKUNI 32mmVMキャブ関連のもろもろ
 /// いよいよ最終章か ///

前 書き
 2008年の1月、2月は相当に寒かった。トライアンフはバッテリーの充電だけで終わってしまい、いざ乗る段になると少し気になるところが出てきて、結 局のところドレン(オイル)ボルトの交換というところで終わったところです。
 3月に入ると、気候はまぁまぁですが、天気が悪いという悪循環。日記などにも記載しているとおり、万一に対してAMALへ変更することも視野に入れて VM32をどうすればいいか、考えをめぐらせていました。
 さすがに、今回はエポックメーキングなことは起こりません。むしろ、このキャブレターを導入して7年間というもの、結構様々なことを楽しんでいた、とい うべきかもしれません。もっとも、私自身は苦痛のほうが大きかったのは事実ですが、それをエンスーは苦痛とは言わず楽しみとするんでしょうね。

論点1これまでの経緯
 最終段階は、2007年、香川での春のBritish Runで松山氏からメインジェットを下げたほうがいいよ、という言葉から下げに下げて#170にまでしたところです。
 同時に、ツェナーダイオードのレギュレーター、ブリッジタイプのレクチファイアを一体型のものに変更して、結構良くなってきました。
 点火プラグはスッタモンダの挙句、BP5ESに変更したのですが、今一歩のところ、という状況であったように思います。
 キャブレター関係の最終仕様は次のとおりでした。

項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#170
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#35
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
通常のアルミ製
一般品(内径30mm・外径38mm)
インシュレーターラバー
45mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nストレートラウンド 150mm
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リ プレース品

論点2何かおかしい
 3月に入ってVM32のキャブを掃除しました。CRCのキャブクリーナーを使用したのですが、大変古い話ですが、三共のピーナッツシリーズのプラモデル 戦闘機に付属していた接着剤のような匂いがして、それがいつまでも消えずに結構辛い思いをしました。一応、キレイにすることが出来ました。
 再装備してからの件は後ほどとして、エンジンが回らないのです。パチンという音がして、黒煙がボッと出る。それでも、これまではエンジンが回っていたの ですが...。
 点火プラグの状況は思わしくなく、5番から下げてもいいのですが、今の時代は一般的ではないのが実情です。
 何しろT-140VはNGKの8番が標準だったのですからね。下げても7番が妥当ではなかったか、とこれまでは考えていたのですし、ルーカス・リタのト ランジスタ点火を使用しているT-140Eは6番ですので、一般に言われる燃焼室の内部で点火する方が好ましいとして、ドライサンプが口をきくの記事から 電極突出型のプラグを用いたわけです。

ラフな考察
 嫌々でしたが、プラグを清掃してエンジンを回してみるのですがダメ。再び迷路の中へ私を引きずり込んでしまう。そんな状況になってしまいました。
 エンジンの形式は違いますが、たとえばヤマハXS650と違って、このT-140Vでは一部が少しでも逸脱すると、全体が狂ったようになってしまうので す。 意外と思われるかもしれませんが、これまでに、この状況に陥ったことをかなりの数経験しています。そのため、プラグだけが原因、あるいは、逆にキャブレ ターから始まって、吸入系統と関連する点火系統に及んでいるのではないか、と考えられたところです。
 そこで、もう一度、最初から点検です。
 まず、点火プラグ。これは掃除をしただけのBP5ESです。とんでもないほどの火が出てますから、点火系統はほぼ完璧。それじゃ、点火プラグ?。いや、 違う。という堂々巡りをやってしまいそうですが火が飛ぶ、しかも優良な火が飛ぶのですから...。
 となると、やはり混合気でしょうか?。すると、キャブ?。もっと違う面があるのかも...。いずれにしても、混合気関係であることは確実です。その混合 気をつかさどるのはVM32のキャブレターそのものではないでしょうか。
 が、これまでの実験で#170のメインジェットでもおかしいとは思わなかったんです。再び迷路へ入ってしまいます。
 このキャブレターとT-140Vに関して根本の原因は一体何なのか?。再び迷路の奥深くへ入り込むことになってしまいました。

一筋の光明
 キャブの清掃が終わってしばらくしたとき、スロットルのピストンも完全に同調させて、左右のバランスを確実なものにしました。各ノズルからの噴出量も目 視ですが、ほぼ同一になったように思います。でもエンジンはパチン、ボワ〜、で音沙汰なし。しからば何?
 じっくり考えをめぐらせて見ました。点火プラグ(BP5ES)の状態から金属電極の周囲が黒く燻っている。ということはパイロットジェットの番手を下げ る。というと、現在は#35なので#30へ下げることになります。
 これはSUDCO MIKUNIのストックの状態ではないでしょうか。話を少し戻して、小誌で過去に申し述べているこの件からすると、全く走らない状態になってしまうんで す。松山氏もパイロットはさわらなくていい、とおっしゃってます。
 ちなみに、VM32mm単体でのストックは#35でした。そのため、#35にしてあるわけです。で、めっきりスタート時のウウ〜っというスロットルを開 けると止まりそうになる状態は回避できていました。#32.5にしてもそんなに変化は無いだろう、として#35で通していたところです。
 キャブレターもそれなりのセッティングは出ている。ということは、点火プラグか?。燃焼室とピストンヘッドの関係からT-140Vではノーマルの点火プ ラグの方が好ましいのではないか、と考えたのです。
 燃焼室の形状は別項で申し上げるとして、使い慣れたB7ESの新品に交換しました。ギャップなどストックの0.7mmぐらい。何もさわっていませ ん。
 若干ストップスクリューを締めこんで、キックすると見事にかかるじゃありませんか。何やってたんだろう?。でも待てよ、今度はプラグ全体が燻って、碍子 部分も真っ黒で、中心電極だけがタン塩色の状態になって、再び調整っていう懸念が無きにしも非ずでしたが、ともかくエンジンは回りました。
 オイルが温まるまでストップスクリューをそのままにして、エアスクリューで少し調整。ほぼ2回戻しでOKのようでした。
 シフトがガシャンと入らなくなるのを確認して、少し走ってみます。何だろうな、若干ですがスタートから2速辺りになるとき、アクセル開度を1/3程度に したとき、相変わらずのウウ〜が少しやってきます。ここをクリアしたいんですが、今のところはなすすべが無い状態です。
 やはり点火プラグかな〜?というところで、走行を終えました。
 もう一つは、点火プラグの何もかもが煤けているのだから、この際だからメインジェットも#165ぐらいへ下げてもいいのではないか、と思いつき、パイ ロットジェット#35のままでメインジェットを#165に変更する方が先ではないか?、と思いついて、こちらを先にやることとしました。

大間違いをやっていた対策の果て
 ここまで追い込んだ。久しぶりにそう思ったところです。点火プラグと燃焼室形状、それにピストンヘッドの形状。
 SRもXS系統もすべからく電極突出型の点火プラグが主流のヤマハ。ピストン形状からするとSR500のピストン形状がT-140Vに近いのですが、 SRは突出型で点火のタイミングを良しとしている。400のピストンは少し中部が盛り上がり型だが、電極の出る位置はT-140Vよりも燃焼室の球の中心 寄りだ。
 XS650はピストンが少し盛り上がっているため、圧縮比が大きいがスキッシュエリアは小さいしため、BP7ESで十分使える。
 が、焼け方をT-140Vと比べてはいけない。T-140Vよりは希薄燃焼度は遥かに大きいのである。
 水平方向の迷路の中心部に空から光が射してくる感じがしたのはこのときでした。T-140Vの燃焼室は一般的な単球型である。その上に純正のピストン ヘッドも あまり高くない。点火も効率の悪いサイドから行うもの。したがって、点火プラグは電極突出型よりノーマルプラグの方が好ましいのではないか、と考えまし た。

でもダメなんだ
 数日後、再びエンジンを始動しようとしたときに、パチン・モワ〜が起きてしまいました。パイロットジェットは#35で、メインジェットを#165にして も全く同じだ。結局なんだったのだろうか?。
 AMALに変更したい、と準備を進める一方でMIKUNIをもう少し...、がグルグル回り始めました。午前中にAMALの改造を済ませて...、が、 燃料コックがキャブに確実に当たる。これをクリアするにはピンゲルを2個っていうのは経費として今の時点では難しい。
 やはりMIKUNIをもう少しやってみよう、とし、キャブからシリンダーヘッドまでの補器類を検討しますと、ウグッ、インシュレーターホース内部に亀裂 が 入っている。外皮までには及んでいませんが、オーディオなどで言うレアショートの状態で、どうやら、ここから空気を吸っているようにも感じました。
 とりあえず、50mmサイズの長さのものに変更しました。

 以前挿 入したグラスチューブのスペーサーは、この部分に生ガスが貯まるように感じられて取り外しました。考えはよかったのですが、アルミのインナーは持たないよ うですからやるとすれば、ステンレスのインナー(針金)にする必要があるようです。

 点火プラグをB6ESに交換して、エアスクリューを1回と1/2回転戻しとして、キックすると 見事に...、が少しおかしい。ボボボボ〜でエンジンストップ。同時に、

アア〜ッ左のふくらはぎが痛ー!

 こむら返りです。即座に指をそらせばよかったのですが、それをも許さない痛さ。とうてい次のキックなど出来ない状 態。この日の作業継続は断念しました。

バカなことをやってた
 痛さに耐えつつ考えを巡らせますと、少し思い当たるバカな行為がありました。インシュレーターホースを変更したとき、どうしてエアスクリューを1回と 1/2回転戻しにセットしたのでしょうか。2回転戻しぐらいでよかったはずです。あのとき、そうしていれば... 。つまり、B7ESの時と同じにして、点 火プラグだけ6番にしていたら良かったのでは... 。
 考えても後の祭りです。じゃ、パイロットジェットを#30にしたら?。これは過去に散々試して結果が良いとはいえない状況でした。
 もしやるとしたら、次の二とおりのテストです。
  1. 一つは現在の#35のままでエアスクリューを2回転戻しとし、エンジンを回す。その後、プラグを6番にし てテストする。
  2. これでリッチなら#30に変更して、パイロットスクリューの戻し回転を1回と3/4回転程度にして調子をみてみる。
 これらのテストをやってみることと、この時点では決めていました。

 もう一点の要因は、キャブレターが燃料コックに当たって、振動が伝わったためにおかしなことになったのではないか、と考えられなくもない、ということで す。
 インシュレーターラバーの長さはほとんど影響がない、と言われていますが、実際はそうでもない、と感じるのです。過去60mmの長さにしたこともありま すが、確かに混合気の吸入状態は穏やかになりました。
 長さとコックに当たらないようにするため、その中庸を採るというと、やはり45mmが好ましいような気がします。
 これまでのことから、これらのことをまとめてみました。

穴があったら入りたい
 ようやく歩けるようになった3月25日、仕事が終わって次の会議までの45分間で、インシュレーターホースを交換して、キャブをセットするところまで やっておこう、として家路を急ぎます。
 階上の部屋へ行かずに仕事のかばんを背負ったままで作業開始。流石に使用していないラバーホース(インシュレーター)が硬く、インマニへなかなか入り込 みませ ん。右側の取り付けを終わって左へ... 。

左 を取り付けようとしたとき、キャブの外側にあるはずのストップスクリューが無いではないですか。
エッ、おかしい。まさか?!。
そう、右も外側にそれがない!。
と いうことは、キャブレターを逆に取り付けている。

そんなバカなことがあるものか、と思いつつ、スロットルピストンの カッタウェイ...、見事に逆になってました。

 じゃ、ピストンを入れ替えして...、とマジで考えるほどバカになっていました。ピストンを入れ替えするんじゃなくって、キャブ本体を入れ替えする の!。当たり前のそのことが考えに浮かばない。
 正常に入れ替えしてOKとしましたが、時間の関係から火入れは止めにしました。
 つまり、こむら返りを起こしたときにエンジンを回したらボボボボ〜となったのは、キャブレターはほとんど燃料だけで回っていた、という次第。
 全く何やってんでしょうか?。サンデーメカニックとして大失態。本当に穴があったら入りたい気分になってしまいました。
 ま、キャブを取り付けた状態から判断すると、45mmのインシュレーターホースは正解のようです。
 何とかならないものか?、とネットを探し回るのですが、帯に短し襷に流しの状況で、MIKUNI VM32とT-140Vに対しての事例は発見できませんでした。
 その中で二つほど発見できたのは、次のサイトでした。
 http://www.postdiluvian.org/~mason/moto/jetting.html  は'70年代の750のツインキャブに 34mmを装着する場合のジェッティング。もう一つ http://www.iwt.com.au/MIKUNIjn.HTM  は ニードルジェットの番手によって、燃料流量の状況をグラフ化したもの。
 この二つのことは私自身AMALと、このMIKUNI VMの関係から既に承知していたもの、と判断していたのですが、ニードルジェットの件はグラフを見るまで、ついぞ気が付か なかったことが解ったところです。
 もしかして!?。この件は後ほど。

番 外辺
 3月25日、熊本のトラビスサイクルへ電話を入れてみました。ご存知のとおり、オーナーはトリニティースクールの卒業生で、同校の講師を長年にわたって 勤められたいた 方です。この方がオープンした、いわゆるトリニティースクールの九州校です。
 今回の問い合わせ内容は、T-140Vのエンジンオーバーホールの件、TR-7のシングルヘッドを装着する件、そして、このSUDCO MIKUNIの件です。
 少々お高い金額であろうと思うのですが、ちょっと私の気分と一致するようなところもあって、こちらでお願いしようかな、と考えたところです。
 電話での話の中でよかったのは、エンジンのオーバーホールであっても、テストを行うことから、1台丸々送ってほしいと言われるところでした。
 エンジンのオーバーホールは機械で測定値など出せば元通りになりますが、実際はフレームに搭載してその車両が満足に走らなければどうにもならない、とい うところにあります。あながち忘れてしまうところですが、これは重要です。
 熊本まで少々長い旅になりますが、一度訪問をしたいと思ったところです。

車検切れが迫って...
 とうとう3月も末になってしまいました。いつもお願いしているモータースへは車体搬入が月末ギリギリになる旨は申し出ています。サンデー車検程度の整備 は私のほうで行えますが、 光軸調整や、走る・止まるなどの重要な各部の点検などはモータースへ任せるべきでしょう。
 どうしてぎりぎりになったか?。それは年度末の仕事の多忙さと天候不順の関係で2時間程度の時間休暇さえ取得できなかったのです。したがって、3月29 日の土曜日 の午前中がリミットになってしまいました。
 翌日の日曜日は天気が悪いとのこと。土曜日は2番目の孫に対面することと、ご近所さんの病気のお見舞いが重なったため、仕事用のカバンを背負ったままで の作業になってしまいました。もちろん、カバンの中には納税証明も入っています。気分を落ち着かせて9時半より取り掛かりました。



やはりダメか?、でも...
 祈りは常に心の中に。しかし、誰に祈るのだろうか?。インシュレーターホース、キャブレター、全てOKです。祈りの心はあるものの神に対してではない。 いずれにしても私自身が背負う問題であることには違いありません。
 コックをONにして、チョークを引いて空キックを2回ほど。キーをONにして、キックをすると、パチン、ブルル〜。その後は一切音沙汰なし。やはりダメ か?。あきらめるかな?、と思ったときでした。

 「メ インジェットを#170にして、このパチンが頻繁に出始めたのではなかったかな?」と思いつき、750系のツインキャブのジェッティングと ニードル ジェットのグラフが頭の中を過ぎりました
 「もしかしたら、#165では薄 すぎるのではないか?!」

 脱兎のごとく、階上の部屋へ上がり、メインジェットを選別しました。スペックでは#220だったが、今度は濃すぎる。中村トライアンフが #190だっ た。それでは我がT-140Vはダメであった。パイロットジェットは時間の関係からさわれない。となると、メインジェットは#180でOKのはずだ。 #180でいくことにして、20分で交換。
 点火プラグは6番を万一のための予備として、7番に交換してセオリーどおりエンジンを始動。
 ブルン、ババババ〜。いいぞ。アイドリングは一応少し高めの1250回転程度として、ウォーミングアップ。若干濃い状態は今は文句が言えない。時折レー シン グして、濃い状態を回避することとしました。
 再び階上へ行って準備をし、いざ出発。

 オー、過不足ないではないか。以前のようにもたつくことも無い。これはいい、と思いつつ、モータースへ。
 キャブレーションの残りの作業は車検が終わってから、ということにして、まずは目出たしで終了しました...、となるのですが、そうは問屋が卸さないの が現実です。
 やはりダメ、の空気が大きく支配し始めました。

 ことの顛末はこの次にいたしましょう。



 

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