再びSUDCO MIKUNI VM-32をさわる
・・・
ようやく走れるように・・・

 「苦労し た」、そのことだけが、このキャブレターキットに対してのこれまでの感覚でした。確かに現在の仕様に至るまでの紆余曲折は、これまで報告してきたところで すので、一読された方にはお解りでしょう。
 私のではそのようにならない、とおっしゃる方は確かに存在しますが、私の場合の発進時の動きを楽にすると、次は点 火プラグがおかしくなる。どちらから手を付けるべきか?。やはり、キャブレターからでした。そして、点火プラグの熱価を落とした。ほぼ使える状態になって きたところです。

 どうしてこのキャブを使い続けるのか?、という疑問が生じることとは思いますが、これを言葉で表現しようにも少々難しいところです。
 強いて言いますと、AMALに対してスムースなところ、そしてトルクフルなところ、それに個体自体が通常のAMALよりは長期にわたって使用でき る... 、と考えているところです。

始動 直後のおかしさの原因は?
 MIKUNIの始動はセオリーどおりです。チョークを戻すタイミングが比較的難しく、一定以上の時間を食らうと、全てが濡れた状態になりますから、まる でツーサイクルのキャブに近いもの、と判断できます。
 プレップしてアクセルに回転が付いてくるようになるまで、夏場でも5分程度必要とします。2006年の改修で、ここからの発進が出来るようになりました が、どことなく不安、というものが支配します。
 そのポイントが何であるかを究明するために、結構いろいろなことをやってきていますが、吸気と排気以上に、マニホールドの状態を再び考えてみるのがいい のではないか、と思いつきました。

本当にそうなのか?
 T-140Vの吸気と排気のカムの違いはトリニティースクールの富成校長は吸気はサラブレッド、排気は農耕馬ほどの違いがある、とおっしゃってますが、 振動軽減対策(であろう)とはいえ、おかしい組み合わせになっているのは、よく知られているところです。
 そこへ2サイクル用に毛の生えたMIKUNIのVMキャブ、しかもAMALの口径より2mm大きいサイズを取り付けようというのですから、現実には無謀 なことかもしれません。
 これまで、効率の関係から、ラバーインシュレーター長を短くした方がレスポンスが良くなるかな?、とアマチュアらしい考えを持っていて、インマニを 5mm程度カットして使用していました。一度だけ55mmのインシュレーター長を持たせたことがありますが、調子は良かったように感じています。キャブレ ター以外、変わったのはK&Nのパワーフィルターを変えたことぐらいです。点火コイルはダイナコイル、プラグコードはテイラー+ツインコアで、な かなかのレスポンスを持たせるように考えて改造したところでした。
 よくよく思い出してみると、どうしても55mmのインシュレーター長の時が一番調子良かったような気もする?、とも思え、今のところ、このマニホールド 部分に一つのヒントが隠されているのではないだろうか、と思え始めたのでした。

原理から
 久々にSUDCOのカタログを同社のサイトで確認し、T-140V用のインマニだけ発売されていることを知りましたが、国内では海外のディストリビュー ターを経由して輸入しなければなりません。それに、今回はサイドバルブより、比較的良品のインマニ(30mm径)を装着しました。 
 さて、現在のラバーインシュレーターは40mm長としております。若干マニホールド側へ被るようになっていますが、この長さはなかなかのものと思いま す。
 しかしながら、インマニのトップとキャブのトップの間は8mm程度あります。したがって、32mm径から出た混合気の一部は逆のスワールになってしまっ て、次に 入ってくる混合気の流れを阻害しているのではないか、と考えたのです。
 実際は32mmで出された混合気は32mmで受けるのが本筋でしょう。が、ほぼ垂直カットの30mmインマニに入り込むのです。ここを32mmで受け て、緩やかに30mmにするには、インマニのテーパー加工をするのがいい、とおっしゃることでしょう。しかし、せっかく30mmで完成されたインマニに ホーニング加工して32mm部分を作る。しかも、深さをどの程度にするか、で性能自体は結構変わると思うのです。
 何とか方法があるはず、と2006年3月辺りから随分考えました。ちょうど継続車検を受け、冒頭のように、堂々巡りのセッティングをようやく「それらし く」落ち着かせたところです。

インシュレーター内部へ追加パーツ
 おもしろいことですが、キャブレターのインシュレーターへの入り込みは15mmです。同様に、インマニのインシュレーター装着部分も15mmでした。
 下の略図のように、「インマニと、キャブレターの間に2mmの段差解消物を咬ませ ばいい」。 これが今回の考えの発端です。

 当初そのパーツの材質を何にするかで大いに悩みました。耐油ゴムのインシュレーターで す。必要な要件は「熱変形しないこと」、キャブとインマニが接触し た場合に、振動などで「アルミ同士を摩耗させな いもの」というこの2点から浮かび上がったのはテフロン板です。8mm厚程度のもので外形を38mmとして、内径30mmの穴を中心に開ければいい。簡単 です。
 しかし、これだけのために大きいテフロン板を購入しなければならず、これはダメとしました。
 もう一つはカワサキエリミネーター400のインシュレーターラバーがフィットするらしいのですが、市販オートバイはキャブの固定がエアクリーナーボック スを介し てますから、キャブレター自体が軽いとはいえ、エアフィルター仕様のT-140Vに装着するには、どうしても耐久性がない、という報告が中村トライアンフ で紹介されていました。T-140Eの製品にしても同様 ではないか、と考えます。
 そんなとき、フッと思いついたのがリングです。そう、大阪在住で ノートンコマンドに乗っていらっしゃるTさんがグラスチューブを熱伝導するボルト類に被せるといい、 とおっしゃっていたのを思い出したのです。このグラスチューブならガソリンにも大丈夫ですし、電熱器の内部裸線のカバーにも使用されていますから熱にも OKです。



 それで、チューブ内部はどうするか?。これは園芸用のアルミの針金を使用しました。それを使用して作ったリングが下の写真です。
 なお、グラスチューブは2mm、針金は1.5〜2mmを使用します。針金の合い口とグラスチューブの切り口が一致しないよう、針金の合い口をチューブの 中に入れ込むようにします。



 本当に簡易なアダプターではありますが、逆流する 混合気などは、グラスチューブである程度吸収できますし、インマニとキャブのアルミがこのリングを介して装着されますから、振動による摩耗も無いものと考 えます。

一つ遊び
 ここでインシュレーターのゴムホースをSUDCOのセットに入っていた薄手のものを35mmにして使用することとしました。
 インマニ側の2列の段が少し隠れる程度までインシュレーターを差し込みます。次にインシュレーター内部へリングを挿入します。この時点でインマニ側の ホースバンドを締め込みます。そして、キャブをストッパーが当たるまでインシュレーターへ挿入します。
 この時点で、インマニのグレー部分とリングの白い部分との差が1mm程度あるわけです。



 次にキャブレターをインシュレーターに挿入します。キャブレターのストッパー手前1〜2mm程度までに収まらなければ、インマニ側のホースバンドを緩 め、インシュレーターをキャブ側へ戻し、もう一度キャブのストッパーまでの間が左右均等になるまで、この作業を繰り返し、ベストな点を出して、ホースバン ドで固定します。
 で、結局は写真のように収まったんですが、いかがでしょうか、マジに思い通りの結果に 収まりました。



 一番奥は、シリンダーヘッド部分ですから、前回の写真と較べていただければキャブレ ターの32mmからアダプターリング部分を介して30mmのインマニにスムースに導かれていることが確認できると思います。
 あまりのことに若干興奮しております。それはそうです。全くエポックメーキングな世界のことですから、次の予想も当たるとなると空恐ろしいことに感じて きたのです。が、それは的中しそうなことでもありました。
 はたして、その結果は... ?。

いよいよ...
 2006年4月30日(日)晴天です。連休2日目ですが、真面目に、その前の2週間の仕事の日々を思い起こすと、今回のインマニ修正の件は、正と出るか 邪と出るか、事実は不明の状態でした。
 そりゃそうでしょう、真面目に考えてもそんなような結果が出る、と安易に考えてはいけないのではないか、とも感じたところです。
 そういったところで、このインマニアダプターを装備し、いよいよ始動です。真面目にオイルの消費量が大きく1.5リッター程度しか残っていないことは間 違いのないところでしたが、大丈夫とふんでいつものテストコースへ入れることとして、午後4時、エンジンを始動します。
 「ア~ッ」、何でしょうか。全く不明な大きなものが支配し始めているように感じました。まるで、何かが違ったような、それでいて、十分な満足度のような ものが漂う、という、これまでの状況が良いと判断していたセットの時より全く違うものが感じ取れるんです。
 それが何というのか、ごく普通のT-140Vのエンジンになったような感じに包まれたのです。
 2000rpmをホールドしたまま2分程度。左へ回ってクラッチの張り付きをはずします。そこから2分程度。プレップを数回して、回転がアクセルについ てくることを確認して、ライディングを開始しました。
 不安は拭い去れません。スタート時のクラッチミートは2500回転ぐらいになります。このスムースな接続のコツがつかめれば、まずOKです。200m程 度走って、国道へ出ました。外気温は比較的高く25℃ぐらいありますから下着とワイシャツ1枚の服装で十分です。
 和霊町のJomoでガソリン補給。残量ではなく、自然落下方式による燃料供給のために、テストの統一性をもたせるための補給です。エンジンが完全に暖ま るまでは、どうしても務田の坂の手前ぐらいになりますが、この日はゴールデンウィークの2日目ですから、車の量が多く、若干入りづら いミッションのせいもあって、4速を多用しなければなりません。この間の状況は無視することとします。
 三間街道へ入ると、俄然調子の確認が出来ます。端的に言いますと「格別の安定性」と「知らない間にスピードが上がっている」という2点が感じられたこと で した。振動も今までよりも少ないことが感じられました。苦しいという感じも出ません。混合気の状態も良いように感じられました。
 鬼北町から須賀川ダムへの下りへ向かう緩やかな登りにかかったとき、ふとしたことが頭をよぎりました。これは後述するとして、ダムサイドの下りもごく普 通に帰ってきました。アイドリングは1200回転程度。若干高めですが、このキャブにはこの程度の回転数のほうが使いよいのではないかと考えます。

頭を過ぎったもの
 そう、今のSUDCO MIKUNIのロケーションは淺川トライアンフのものと同じではありませんか。その記事中には32mmと34mmを比べて34mmの方が良かった、とあり まし た。
 が、インマニのインシュレーター長が当初の写真と相当に違うんです。そう、この一件から私の苦悩も始まったように思います。
 今回のアダプターの作成から感じられたのは、どうやら、淺川トライアンフは、(シリンダーヘッドのインレット部分の改修と)インマニ自体を修整している のではないか。そして、アダプターが必ず挿入し てあ る、と確信したのです。なぜなら、SUDCOのインマニでなければ34mmへの拡大が出来ない。それほどの厚みを持っているからです。
 もちろん想像でしかありませんが、ようやく謎が解けた思いがしました。



結 語
 車検の再取時から、ほぼ1月、SUDCO MIKUNI VMキャブ32mm径のおよそのパフォーマンスが見えてきました。これまで7年間もかかったのか、と言われますと赤面の至りです。
 が、よく考えてください。当初のキャブは1971年以降のT120系統の650ccに対応させることになっています。強いて言いますと、T-140Vの インマニフランジと同じキャブレター取り付け形式 を持つタイプ用のものです。
 もちろん、今のSUDCOキットには専用のものが存在しているし34mmを推奨しているフシもありますが、7年前では、650cc用を750ccに応用 するわけですから、ベースになるものは一切無い!。こんな状況下から、どうやったら、極普通なライディングが出来るのか?。全て の始まりはここだったようです。
 これまで数回キャブレーションのセッティングはまぁまぁの結果が出されていたように感じます。が、どこかおかしい。そのおかしいところの原因が全く分か らない。そんな状 態のまま年月が過ぎたところです。決して大げさなことではないのです。が、このキャブレターを見放すことはありませんでした。曲がりなりにも、そのパ フォーマンスの一端を体感すると、AMALには戻れないかもしれない。こ のことが、私をこのキャブレターを捨てなかった要因の一つです。
 今回は、32mmは32mmで受ける。じゃ、インマニの30mm部分はどのように処理をすればいいのか、この考え方を生かせるための悪戦苦闘でありまし た。そして、インマニアダプターの製作。これは全くエポックメーキングなことでありました。その結果が良好であった、ということでした。
 しかし、これが全てではありません。もう少し細部にわたっての点検をする必要があるのは事実です。すでに車両購入から30年の月日が過ぎます。
 当面は、このセッティングで通そうと考えているところでしたが、再び機関が中速域からの伸びなどのフィーリングが悪いことが感じられるようになりまし た。またか〜、と感じましたが、もう、やることは分かっています。
 インマニの決定。インマニアダプターの決定。インシュレーターラバーの長さの決定などから、キャブレターは一応この程度として、何をどうするか、もうオ ワカリのことでしょう。妙な自信めい たものを感じつつ、SUDCO MIKUNI 32mmを使用し続けることとしました。


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