モヤモヤを晴らす(Vol. 2)
 「どうしてこのように、始動直後のエンジンストールが起きるのだろう」という疑問が消えない。とにかく発進できないんだ。
 あらゆる所へ電話をしまくる。前に申したように、中でもOZハウスの小関さんの一言が何かのヒントのようで頭から消えなかった。それは「アメリカではキャブレターの出口にアダプターを装着するんです。32mmで少しって時に、見せかけの30mmにしてみたりね。そんなパーツもあるわけです。」というものであった。

 フムー、何だろうな、と思っていた矢先、バイカーズステーション誌にデイトナなどに出場しているAHRMAのクラシックレーサーの写真が多く掲載されていたのを見て、「これだ」と気づいたことがあった。以前のダートトラックレーサーの時もそうだったが、今回も同じ処理だろう。
 しかし、僕のはアダプターを数ミリカットしている。知り合いの造船所で溶接ったって、迷惑かけるだけだ。つまり考え方は、キャブの前だからアダプター側を伸ばせばいい、という考え方なんだな。この方法は以前申し上げた。

 いつものとおり、コヴェントリーの清水さんに電話。アダプターのラフスケッチをファックスしたら「あるから、送る」ときた。いつもながらの調子だ。
 けれども、またしても疑問。そのアダプターの内径は32mmなんだ。わずかに周り1mmの差。しかし気になる。おまけにキャブの出口の内径は32mmときた。こりゃ、どうすりゃいいんだ。送られてきたものをスムースに整形修正しながら気になるところをまとめていた。

 こういったときはD.I.Yの店を徘徊するに限る。店員は怪訝な顔するだろうが、確実に得るものは何かあるはずだ。はっきり言って、応急に何とかするなら農機具の噴霧器のコックはトライアンフに装着可能だし、建材の軟質穴あき補強プレートはもとより、壁へのパイプ装着Uホルダーはマフラー取り付けバンドに早変わりする。結構あるものなんだ。
 でも、毎回のことではないし....、と配管の塩ビパイプのところで、どこやら見たことのあるパイプ径発見。やおら店員を呼んで計らせると、内径30mm、外径37mm、ときた。「なぬ!」価格を見ると200円。バカいうな、2mもの購入してどうする?。誰か持って....、あ、そうだ酒道場でいっしょになる電気温水器屋さんが持ってる。これで安心。でも待てよ、と。

 この部分は80℃近くに跳ね上がる。ま、走行中は混合気で冷却されるが、もう少し丈夫なものの方がいい。というところで、職場の若いのに相談したら、おやすいご用、とばかりに耐熱のものを用意してくれた。パイプカッターでカットしたものをヤスリによって人海戦術で仕上げる。SUDCOのアダプターの現状で装着すると長さは13mm程度だろう。
 でも、キャブの32mmが心配なんだ。清水さんに問うと心配ないよ、っていうし、現実には32mmで出たものは32mmで受けるのが普通だ。しかし、キャブのメインボアっていうのは少し意味が違うし、アダプターを出ると30mmのインテークへ吸い込まれる。なら、最終のシリンダーヘッドを削る必要がある。

 また、悶絶状態だ。最近では仕事も忙しいし、自分の時間もとれない。青空工房の我が家では、内田自転車商会さんのファクトリーが唯一工具を使える場所だし、そこへ行くのは土曜日、けどその日が休めない。
 最近では酒も飲めないし、トライアンフのこと言っても相手にしてくれる人も居ないから、こんな問題も発散できない。自分の経験と少ない資料とでの検討だ。幸い現車がここにある。たまの休日は天候が悪い。もう大変だ。

 再度、SUDCO MIKUNIをやっているショップで電話をしていないところを、と思ったとき、ブリティッシュ・ビートさんを思い出した。早速電話する。

 思いもよらないコトバが帰ってきた。通常なら僕のセッティングでいい、ということだ。だが、ニードルが違うのかもしれない、という。5L1というのがジャストフィットらしいが、これが入手できないらしい。もう一点は、パイロットジェットの番手を下げていってほしい、ということであった。最低は17.5で安定した、という。
 ジェット類は安いものだ。早速発注した。
これまでのところをまとめてみると、エンジン自体は、どノーマル仕様だ。「もともと排気カムは農耕馬」とトリニティースクール富成校長が言われるほどのもの。
 ま、このことは否定しないまでも、僕は反対意見だ。当時1975年当時、ベストマウンテンロードバイクと呼ばれたように、余力を持ってワインディングロードを快適に走れるようにセッティングされているし、排気量に対して低い圧縮比、大容量のマフラーなど、650ccボンネヴィルT-120Rの元気いっぱいものとはまるで違う設定のバイク、のように僕は感じている。そのため、非常に頑丈で、ボルトナットもアメリカインチを使用しているし、かなりモダナイズされていて現在に通用するモデルだ、と感じている。特に1976年からは操作系が今流だし、排気量もフルサイズに近くなっている。

 そういったところから、混合気の流れは変更できない。キャブレターのメインボアが増大しても混合気量のみ増えたのだから、それを落ち着かせてシリンダーに送り込んでやればいい。おまけに、エアクリーナーボックスのないフィルター仕様だから、空気量は増えるため、混合気の流速が速い。
 この辺を考慮すれば、何とか改善できるはずだ。再度トラックレーサー、改造ロードレーサーを見ると、当然のように(マフラーエンドまでの)排気が短いし、アイドリングも高いはず。なおかつ安定させるためには小関さんの言うように、見かけのキャブ口径に混合気安定化対策を採った上で、セッティングを出しているはずだ。その中から得られるものをまとめて計画し、実行に移した。

 現在のラバーチューブ長のままで、13mmにカットしたエスロンパイプをアダプターに触るまで押し込む。ホースバンドは1個をアダプターの上、もう1個はエスロンパイプの上、と前側2個となる。唯一の救いは、先に記したホースバンドだ。こいつをイデアルに替えたら、しまり具合と幅がうまい具合にジャストフィット。救われた気分がした。
 エンジンを始動する。気温は22℃。いつものようにエンジンを回す。あれれ、チョークを引いたままでないと安定しない。よく考えると、これが普通なんだ。
 気温の関係もあろうけど、およそ5分で安定した。いつものプレップをすると安定している。唯一いつもと同じ症状なのは、シュパ・シュパ・シュパと吸気が安定するまではストールしかかる点だ。(以前とは比べものにならないくらいだが)おそらくこれがニードルなのか、パイロットジェットなのか、というところにある。
 実験は、まぁ成功だ。

 はっきりいえば、バカこくんでネー、となる。タダでさえ古いバイクで持ってる人も少ないバイクにこれだけ入れ込むのだから、妻やかつてタンデムした息子にさえ無視されているのが現状だ。でも、僕は止めないぞ。だっておもしろいんだから。

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