T-140V またしてもプラグの謎(B7ESを標準とする)
2004年2月21日からしばらくの間、再び点火プラグの謎めいたこと
にぶつかってしまった。というのは、スロットルワイヤー修正前に、もしかしてと、BR7ESをB7ESに交換してからだ。
点火システムはボイヤーのフルトランジスタ方式である。このためもあってボイヤー装着時よりスパークノイズなどを考慮してNGKの抵抗入りのプラグ
キャップを使用していた。およそ10KΩである。若干国産のスタンダードのプラグキャップはそれより抵抗値が少ないかもしれない。したがって、スタンダー
ドの点火プラグにおいては、ノイズに対しては対策がされていると判断する。
ちなみに、NGKのRプラグの抵抗値は5KΩだ。
スタンダードプラグに交換する前は通常の点火システムの最終段で若干抵抗が増えていることになる。ま、点火コイルはダイナコイルの同時点火方式でこれは
3Ωの高効率だし、抵抗入りプラグでも影響無い、と感じていたのだが、そうは問屋がおろさなかった。
2月21日に、スロットルワイヤーの修正を終えて、B7ESのスタンダードプラグに交換してからの走りの方が火花が強く出ているような走り方をするので
ある。特に今回は左が抵抗入り、右がそうでないものでライディングしたのだから容易に変化に気づいた次第だ。(キャブレーションが均一という保証はない
が... 。)
ここまでお読みになってのとおり、これらは2004年3月の時点で文章化していた。ところが点火プラグで再び思いも寄らぬ結果が出てしまったのである。
そのために数か月の空白期間が出来てしまった。
その間、SUDCO MIKUNI のキャブレターのこと、スプリットファイアのツインコアプラグコードのことなどの確認を行ってきたところだ。
ことが起こったのは2004年6月の中旬であった。その時のことは後にまわして話を続けることとしたい。
SR500のこと
それでは、ここでSR500を思い出してみたい。
このマシンには現在オレブルのスーパーサンダー点火コイルを装着している。このコイルのプラグキャップの指定はノーマルを指定しているのものだ。
ノーマルのコイルでも点火プラグはBPR6ESが指定である。それに比例してキャブレターも薄い方向付けがなされて、全てがクリーンな排気を目指してい
るようだ。それゆえ、トライアンフT-140Vのグワ〜っという感覚はノーマル仕様のSR500には感じられない。ソコソコ走る。可もなく不可もな
く... 。
SRのキャブレターがSUでVMの特性と違うから?。エンジン自体の性格が違うから?。もちろん、それはそれで大きい関係があるが、点火プラグの交換だ
けで変わる、とすると、SR自体の点火系はなかなか優れているのかもしれない。NGKの7番に変更すると、若干濃い目の状態に近づくため、調子が上がった
ような感覚になるのも事実だ。
通常の点火システムでは意外に点火プラグの状況も避けて通れないものがあるようだ。
T-140の点火方式
ノーマルのT-140Vの点火方式はバッテリー点火で、タイミングはコンタクトポイント方式である。スパークアドバンサーは錘とスプリング
のオー
トガバナー。フライホイールマグネトーの発電なら、ここ15年前ぐらいまでは世界中でもっとも確実な点火方法であった。
エンジンはOHVの直立2気筒、ピストン口径よりクランク行程の上下が長いロングストロークタイプである。圧縮比も9行くか行かないかで、T-120R
よりは回転の上がりが穏やかなものである。
そういったエンジンのくせに、ChampionのN-3が指定の点火プラグである。NGKならB8ES、デンソーならW24ESである。オートバイを購
入して以来、くすぶりは若干あるもののB8ESで通してきたのを思い出す。
ボイヤーのトランジスタ点火方式に変更したときに、最後期のデボントラT-140Eがルーカスリタのトランジスタ点火方式を採用し点火プラグがB6ES
に指定されていたのを知ってから僕の考え方がおかしくなってきた。幸いなことに、
ボイヤーの点火方式を先にやったために、この点火プラグの熱価だけで片づいたのだが、キャブレターをSUDCO
MIKUNIに変更して迷路に入り込んでしまった。もっともT-140EはAMALのMK-IIにキャブは変更になっていたが... 。
その後、ダイナコイルに変更して何とかB7ESを使ってきて、一定の成果を出していたところであったが、状況は芳しいものとはいえなかったところだ。
その上に、書類上でのことを実際に合致させようと試み、コトのごとくそのとおりにならないジレンマも感じていたのは事実だが... 。
じゃ、どうすりゃいいのさ思案橋、という具合で、T-140Vとボイヤーのトランジスタ点火で考えてみた。
ストックの状態だと、前述のようにコンタクトポイントとコンデンサーによるバッテリー点火方式である。指定のプラグはチャンピオンのN-3でNGKなら
B8ESがそ
れに当たる。キャブレターの関係はAMAL MK-I の30mmだ。
また、プラグキャップはハイテンションコードを無抵抗で、ダイレクトにプラグのアタマに接続する方法となっている。
ところが、T-140Eになると、ルーカス・リタのトランジスタ点火になる。点火プラグは一気にB6ESだ。現実にはコイルは6Vタイプかもしれない
が、形状からすると12Vのシリーズのようだからコンタクトポイント方式からボイヤーに交換した場合と同じと思っている。
キャブはAMAL
MK-IIで、同じく30mmである。ところがプラグキャップは抵抗入りになっている(ようだ)。古い方ならご存知かもしれないが、昔BMWに取り付けら
れていたドイツのベルウと同じような(内部は樹脂の)金属製のものだ。
しかし、オールメタルの航空機用プラグキャップを使うことが出来ないように、トランジスタ点火で金属製のプラグキャップはアンプ(ボイヤーならブラック
ボックス)をダメにする可能性が大きい。
このことから、僕のT-140Vも点火プラグ、プラグキャップいずれかに抵抗が入っていれば、まずノイズ関係に対してはOK、ということが判断できるの
である。もちろん、外部に影響を及ぼすノイズに対しても。
もう一つ、どこかのサイトに出ていたが、スタンダードプラグと抵抗入りプラグとでは、火花の出方が違うようで、エンジンの特性もダッシュが効くのがスタ
ンダードタイプ、スムースに吹け上がるのが抵抗入り、ということらしい。
この点は先に記したBR7ESからB7ESに交換したときに感じられたことだ。
T-140V単体で、もう一度見直してみる
次々に羅列が始まって申し訳ないが、点火コイルはダイナコイルに交換している。一次側は3KΩで、二個封入、同時点火方式だ。同時爆発ではない。お間違
いの無いよう。
このコイルとボイヤーのフルトランジスタ点火の組み合わせでは、火花が飛ぶ時間が長い。
ここまでになると、現在の点火方式に対して点火プラグは抵抗入り、プラグキャップも抵抗入りとした方が、現在のT-140Vを走らせる状況からすると好
ましいように感じる。
次は点火プラグの熱価の問題だ。T-140EではB6ESだ。このことからすると、僕の場合だと抵抗入りのプラグキャップだから、スタンダードのプラグ
ならB7ESの方がいいように思う。
3月頃のキャブレターの状況は下記のとおりだ。
項目
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状況
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内容
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キャブレター
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SUDCO MIKUNI VM32
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ハイパフォーマンスキャブレターキット
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メインジェット
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#220
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SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
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パイロットジェット
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#22.5
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キタコより購入(ミクニ純正) |
ニードルジェット
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6DP17 |
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正) |
ニードルクリップ位置
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下から2段目
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インマニアダプター
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SUDCOのキットに付属 |
エンドより1段目の滑り止めをカット
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インシュレーターラバー
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50mm長
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東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
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エアクリーナー |
K&Nテーパーラウンド |
間もなくラウンドタイプに交換予定 |
エキパイ
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ノーマル
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マフラー
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メガホンタイプ
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リプレース品
|
この時点でT-140Vの点火プラグがB7クラスの熱価がある程度解っていたのだ。それでは、どうしてスプリットファイアのSF-405Dに装着し換え
たのであろうか。一つにはツインコアのプラグコードへ交換した時のことがある。
なかなかの性能を発揮して2004年4月17、18日に開催された春のBritish
Runでの香川県までの往復を過不足無く走ることが出来たのだが、何かしら物足りないものがあった。再びキャブレターのセッティングを行ってみてパイロッ
トジェットを#27.5に引き上げてヨシとしておいたのだ。
ところが、British
Runの後、別項で記載しているとおり、ツインコアの前段をテイラーのコードに交換したときから、おかしな現象が起き始めた。この時のプラグはスプリット
ファイアのSF-405Dだ。順調に行ってたのだが、どうも濃い目であって、キャブのセッティングがおかしい。そのため、20047年6月 日にパイロッ
トジェットを#25に下げる。エアフィルターをSUDCO の付属品に交換する。
結果として、この状態なら過不足無い、として50kmも走ったところ、左のプラグが死んだ。
時として、人間は周りからいわれてきたものとか、書物に記載されてきたものを鵜呑みにして、あたかもそれが絶対に正しいかのように判断してしまうもので
ある。僕もご多分に漏れず2年間ほどこれをやってしまい、肝心要のセオリーから全くはずれてしまった位置に持っていってしまっていたようだ。
つまり、T-140Eにおけるトランジスタ点火とB6ESの関係、AMALコンセントリックからSUDCO
MIKUNIのリプレースキャブレターに変更したときの効率の件、ダイナコイルの同時点火の件などが絡み合って点火プラグの最適熱価をすっかり忘れてし
まっていた、ということになる。
6年前の花園村、1998年10月、ドンダン大阪の小川さんがロビーでお仲間と談笑中にポケットからプラグを出してきて「トラの場合はこれぐらいでない
と、高速では(ピストンが)心配だな」と提示していた。相手はそんなことはない、もっと白い色でないとダメだよ... 、と一歩も譲らなかった。
そのプラグはえらく燻っていたが、どことなく、高速を1時間も走ると碍子部分はタン塩色になるのは僕にも明白に解った。
残念ながら僕はSR500で出かけていたために、T-140Vのことを思い出しながら「そうかもしれない」とおもっていたところだ。
こういったことも忘れて、何とかB6ESをフィットさせようとしていたところだ。これまで、B6ESを4本、スプリットファイアを4本、B7ESを8本
ばかりパーにした。いずれもこの辺だからのセッティングを出す途中での昇天だ。3000km走って交換ではない。ひどいときは数キロ走ってダメにしたこと
もあった。
ダメにしたのはとりもなおざず「...
であるはずだ」の焼け具合だった。きつね色とか碍子部分の奥の方まで白っぽいとか、そういった状態にならないとウソだ、と思いこんでしまっ
ていたに他ならない。
実のところ、これは現代の希薄燃焼方式、そして四輪自動車での使用率が高かった突出型の点火プラグにフィットできる状況というのが最近になって解って
きた。
T-140Vでは若干オムスビ型のピストンヘッドの形状とともに、点火プラグは2サイクルと同様、スタンダードタイプを使用する。NGKでのPタイプの
プラグではないのである。2サイクルのオートバイに乗っていらっしゃる方ならお分かりだろうと思うが、点火プラグは結構燻っているし中心電極部分が狸色ぐ
らいで調子がいいはずである。金属部分には少しウエットなススが付着している状況だろう。
しかし、僕が解せないのはB7で燻るのならB6にしたらOKのはずだ、と考えた。すでにこの考え方を証明しようとする方向付けが間違っていたのだが、
「色」に狂っていたのだから致し方ない(爆)。
そのつもりで6番にすると電極も碍子も白くならず真っ黒になって点火プラグは昇天するのである。走行距離はわずかに30km程度、始動するのは3回程度
だ。全く不思議な現象なんだ。白くなって昇天するのなら解るが、全く逆の状況で逝ってしまうのだ。このときはもう一つの状況に注目していなかった。
ところが、全くひょんなコトからこれらの原因が明白になり始めた。これは後として、当然、こういった状況になってしまうと、吸排気系の問題、点火系の問
題などに気が向くものであるが、今回はどうも違う。AMALのキャブの時でもそうだったし、ことにSUDCO
MIKUNIのキャブはまるで2サイクル用だ。それも左右非対称だ。逆に機構自体はAMAL同様シンプルなVMタイプだ。エンジンの腰上をばらしたときも
バルブ関係には全く手を加えていない。マフラーさえオリジナルの排気効率に近いものだ。
そうなると、どうやら点火系がプラグの死と関係があるようだ、というのがおぼろげながら解りかけてきた。
後で思い出すのだが、そう知らしめた事件はプラグコードをスプリットファイアのツインコアに交換したときであった。別項でも記載しているとおり、残念な
がら結果はそう変化しなかった。ツインコアといえ
どもコイルに刺さる部分はスタンダードのカーボンサプレッサーの一般コードだ。点火プラグはスプリットファイアのSF-405Dであった。
このプラグはNGKのB5ES〜B6ESをカバーする。焼け具合を重視すればSF-405Fに軍配が上がるが、これでは焼け気味になることは使ってみて
判っていた。
一瞬吸入効率が悪い?、と思ったが、そうではなかった。ずっと以前にパイロットジェット#30にしてK&Nのフィルターにして、BR6ESを装
着していたと
きも、こういった状況でプラグが死んだ。濃い、薄いの状態ではない。「走行フィーリングがいい状態になりかけると、今までのプラグが死ぬ」という状況は一
体何だろうか。
全てが解らなくなってしまった。キャブレターが吸排気を含めたエンジン特性にフィットしていないからか?。いや、そうではないはずだ。待てよ。早速ボン
ネヴィル関係の一連のデータ本を引っ張り出してきて調べてみる。
そこには一貫して点火プラグはチャンピオンのN3が指定されている。NGKではB8である。
次にボイヤーの点火システムのマニュアルを読み返しても、コンタクトポイント方式の点火からボイヤーのトランジスタ点火方式に交換しても点火プラグの熱
価には一切触れられていない。高性能を望む以外は点火コイルもそのままでよい、と記載されている。
BR7ESは全てにわたってスムースさが全面に出る。これは特筆ものだ。
しかし、若干ながらくすぶりが強い傾向になってくる。この状態で6番を装着するとプラグが死ぬ。キャブレターのジェットなりスクリウ戻し回転も変えていな
い。
B7ESは現時点であらゆる負荷がかかってもコンスタントにパフォーマン
スが発揮できる。けれどもくすぶりは相変わらずである。燻っても中心電極付近はタン塩色から狸色だ。これで普通の調子なのだろう。
ふっとこのことを想い出した。
勢い込んで、カーボンサプレッサー部分をテイラーのシリコンコードに変更した途端にSF-405DがB6ESが死んだのと同じ状況で逝ってしまった。
アッ!そうか。ようやく気づいた。一つ一つ点火系を整理してみよう。
- ノーマルのコンタクトポイント、しかもAMALのコンセントリックでパイロットジェットが装備されていない状態でもB8ESで大丈夫だったの
は、当初か
らT-140Vではこの熱価を必要としていたのだ。
- トランジスタ点火に変更すると、強い火花が長く続くので混合機の燃焼効率がよい。
- ダイナコイルの2個封入、同時点火の3Ω抵抗コイルはかなり強い火花を飛ばす。
- ほぼ同一状態のシリコンプラグコードは強大な電流を流す。
すでにお分かりのことと思うが、点火コイル、プラグコードなどで点火プラグへの供給電流料が多くなる方向とするのなら、熱価は上げるべきである。ただ
し、ここにも一定法則のようなものがあって、スタンダードのプラグを用いる場合は今の突出型のプラグでの焼け具合をフィットさせるべきではなく、分かり
切ったことだが、あくま
で、そのエンジンが必要としている点火プラグの熱価をまず基準とすべきである。そこから上下1番ほどの熱価で様子を見ることにとどめるべきだ。
この件はキャブレターを変更した場合は、スタンダードのカーボンサプレッサーコードと点火コイルを元に戻して再度確認した方がいいが、おそらく熱価は標
準から1
番下げることで要件は満たされると思う。
蛇足だが、SR500の場合は点火コイルとプラグコードを交換した場合はBPR6ESからBR7ESに変更するとしっとりと落ち着いた燃焼になることが
確認されて
いる。つまり、突出型は燃焼室の圧縮された混合機の中で着火させる。それに比べてスタンダードのプラグは圧縮された混合気の頂点に着火させて隅々にまで火
を伝播させることになるのだろう。そういえば、T-140Vのピストンヘッドはオムスビだけど、SR500ではほとんど自動車と同じフラットに近いもの
な。
2004年6月16日
早速BR7ESに交換する。キャブセッティングは全く同じだ。充填効率を考えて、再びK&Nのエアフィルターに戻す。
スタート直後、例のストール気味の現象が起きるが、ウォーミングアップを3分も行えば1100回転付近だ。ここからスタートしても問題がない。非常に力
強い、というか、上までそつなく上がっていく。クラッチの滑りが気になりはじめる。
しかし、5速の守備範囲が急激に増してくる。40km/hでもソコソコ進んでしまう。XS650とか、このT-140VとかGX-750とかの僕の標準
値「5速・2000回転・50km/h」がそのまま適用できる。今のSR500ではこのように行かない。
何か間違ったことをしていなかったのか... 、と思いつつ30kmの走行を終えた。
T-140VはBR7ESでうまく作動している。最近は7番が少なくなったが、一度戻って8番でやってみたい、と考えているこのごろであ
る。
今後はキャブレターのセッティングと関連するけれど、通常走る感覚からして点火プラグは7番を主として考えることとする。決してこれが結論ではない。今
回はキャブレターの吸入効率を考えたエアフィルターのことを加味していない。見えない電気のことからすると、
コードをカーボンサプレッサーにすれば、6番でも十分に使用できるのかもしれないし... 、まだまだやることはたくさんあるのだ。
10月の淡路島、花園村へ向けて新たなチャレンジをやっているところである。
しかし、7月になってエアフィルターの形状から思わぬ症状を呈してきたが、プラグは7番から変わることはなかった。