T-140Vタンクリペイント始終

 そもそもこのオートバイとは1976年12月26日からだから、9月の今からすると間もなく26年の月日が過ぎようとしている。購入時の雨の中の高知からの搬送をはじめ、多くの危機を乗り越えて今日までよく走っていてくれる。このことは後日ボチボチ出すこととしよう。
 1994年、どうも妻の実家の方がオートバイを何とかよそへ移動してほしい、ということを聞いた。したがって、トライアンフは旧内田自転車商会さんの二階に鎮座させていた。それから2年ほどして、間もなくオートバイの車検が2年になって、保険料も安くなるらしい、という風の噂を聞きつける。この間の僕の愛車はヤマハのRD250であった。同じヤマハのGX750とどちらを先に整備するかの段になって、多くの仲間は僕の意に反してトライアンフを推した。そんなものか?と思いながら、早速点検にかかったのが始まりだ。
 以来、プッシュロッドカバー(チューブ)の交換を期にヘッドを開けてバルブの摺り合わせをしたり、カーボン取りをしたりして1年間掛けて動くようにした。その時以来気になっていたのがタンクの塗装の亀裂だ。
 発売当時は有鉛ガソリンが豊富だったし、オクタン価からしても、成分からしても今のガソリンとは比べものにならないほどいいものが豊富だった時代だ。タンクの塗装がガソリンで侵されるなんて全くなかった。
 亀裂の入った原因はそれ以上にある。つまり、英国で塗装された塗料と、僕がリペインとしたラインのホワイトが同じラッカーなのに少々違っていたのだろう。ベースの赤がガソリンに耐えきれなくなって来始めた頃であったし、この際だから塗装をしよう、と試みたのだ。まさに26年間がんばってきてくれた。材質が相当いいのか、内部にメッキが施されているのだろうか、ほとんどサビは発生していなかったのも幸いした。
 塗装屋さんは僕の友人のお仲間内だ。そのため最初の交渉で2色だから、ということで格安の交渉でOKになった。僕からの要望は、タンク部分がオーバーデコレートになっては困るので、この関係だけ申し上げて置いた。期間は一切関係なし。専業が自動車のリペイントだから、急がせることは控えた次第だ。
 6月に出して9月に出来たから実際は二ヶ月半だ。仕上がりは上々。ただし、僕のミスで、タンクバッジを渡してなかったので、白のライン取りがデボントライアンフのようになってしまった。
 どうしたものか、近い色のレタッチ用のペイントを買ってきて何とかするのも手だが、せっかくここまでになったんだから、何とか今流に... 、と思案を巡らす。もちろん塗料メーカーのそれも考えたが、ベースの赤だとあまりに段差が付きすぎる。それなら、タンクバッジの後ろが長いのだから、前も延ばせばいい。幸いにも、現在の看板に使っているものが耐候性もあっていい。これに決めることにして、アルミベースの白のカッティングシートの切れ端を看板屋さんからいただいてきて、はさみでカットしてやったのが写真のとおりだ。
 どこかで見たような風景ではないか?。こう気付くのはなかなかの通かもしれない。タンクバッジに沿わせたから旧トライアンフのサンダーバードのイメージレタリングの感じがし出した(爆)。我ながら一安心したところで、今回の作業を一段落させた。
 ここで少し気がかりな点がある。
 それは、今回もそうだがオートバイの特性を十分に知った塗装屋さんでなければ、オーダーする場合の細かな点の要求が合致しない。僕の失敗もここに起因する。ラインは当初テープで入れる、ということになっていたのだが、塗装の方が早いと判断されてそうなってしまった。そのため、外したタンクバッジとの整合性が無いままでのライン入れとなってしまった。これは僕がタンクバッジを渡していなかったのもミスの一因だから、出来上がったタンクを見て塗装屋さんを責めるわけには行かない。
 このことを除いたにせよ、もし、オートバイのことを何も知らない板金塗装屋に出したとしたら、もっとひどい状況になっていたかもしれない。通常はライン入れが球面になることに起因する。テープを使ってのマスキングがことのほか大変なんだ。そのため、平面が多いタンクでは引き受けてくれるが、トライアンフのようなタンクディザインでは難しいのではないか、ということである。また、ここはガソリンが直接飛び散る可能性がある場所でもある。もちろんライン一本の塗料配合から始まる費用も手間暇からすると余計にかかるのは言うまでもない。実際には割に合わない仕事なのである。
 リペイントを依頼するとき、ここんとこは阿吽(あうん)の呼吸なんだな。要求は要求、受け入れは受け入れとして、相手の職人気質を受け入れることでここは成立する。この呼吸をつかみ取れる塗装屋さんを見つけることがなかなか難しいんだ。
 すばらしい仕事をしていただいた今回のUボデーさんだが、一般にご紹介できない。それじゃ、と各々のタンクを僕のページを見て、と持参されると、肝心の自動車の板金塗装の業務が出来なくなってしまう。それ以上に立て込んでくると、僕のように2か月もかかっては... 、よそう。しかしいい仕事をしていただいた。
 タンクはクリアー出来た。しかし、難問はまだ続く。サイドバルブから購入したコックのインナーストレーナーがことのごとく折れてしまっている。これからしても今のガソリンがどういった成分を含んでいるか疑問だろう、と感じる。問題は次々に発生するものである。もっともパーツ屋さんは問題としては取り上げていないのかもしれないが。

[もどる]

inserted by FC2 system