そ の後のSUDCO MIKUNI(その2)

 早いもので、この前の記載から一月が経過した。僕の仕事柄、相当に多忙 な時期にもかかわらず、キャブレターに意識を持ち続けることは我ながらびっくりするほどだ。
 決して仕事のサボりをしているわけではないのだが、会議の途中などでも気づけば小さいノートにメモ書きしている始末。それが、結構自分自身の資料的なも のに なったりする。一杯やっているときでも気づけば「ブツブツ」独り言を言っているし、相手からすると僕の身の上に何かおかしいことが起こったのではないか、 と思われていたようだ。それだけ「もう少しのところ」まで追い込んでいる、という事実にほかならない、と僕は感じていた。




前 回まで
 2004年2月28日まで、前回報告の通りであったし、この日に#27.5と#32.5のパイロットジェットを発注した。
 ここまで、かなり調子は上がっていたんだ。これは何度も確認した。何がいけないのか?それが分かれば苦労はしない。ただ、ライディング中に感じたこと は、エンジンの回転というか、走行自体があまりにスムースなことであっ た。それと、アクセル開度が1/2以上になると二段ロケットに点火したかのように急激に高速型のエンジンに変化してしまうのである。決して乗りづらいもの ではなかったのだが、ロケットに点火する前と後とでの変化が違いすぎることに、いささか不満足であった。
 それに、発信は3000rpm以上での半クラッチの多用で、この点がコケ威しになっているようで赤面してしまう。およそストック状態のT-140Vらし からぬ動きに、心なしか「似合わないな」と感じているところだった。

2004年3月13日(土)
 いきなりジェット類の交換ということを避け、2月28日までのことを改善、ということを第一に考えてメインジェットの#280を#260へ落としてテス トを行った。
 どうして10番単位にしないのか?、とおっしゃることは分からないでもないが、メインジェットが主として働く領域からすると、これまでのテスト結果から 10番程度下げてもこの場合の影響はさほど気になる違いは無いだろう、との判断からだ。
 この日も「何だかな〜」と思う程度で、大きく変わったということは感じなかった。幾分かは#280の時よりいいのはいいのだ。
 もしかしたら点火プラグかもしれない、と考え、B7ESをBR6ESに交換した。大きな変化はないが、中心電極付近が黒からわずかに茶色っぽく変化して いる。プラグは6番の方が適しているのかもしれない。
 残念ながら、夜の会があるので、午後3時で切り上げた。

2004年3月14日(日)
 土佐礼子さんが優勝した名古屋国際女子マラソンが終わった後でキャブに取りかかる。
 今日はメインジェットを#260を#240へ落として、最終は#220にするテストを行う。取り替えテストを午後からやったわけだから、 最終のテスト走行は午後6時頃までかかった。
 結果として、#240の時に少し振動が出始め、これまでよりガスが燃えているな、と感じたところだ。この辺のところまでなら20番程度落としても大した 変化が 感じられない、ということだろうか。
 じゃ、薄い領域にはいるのだから次は#230か?、というところだろうけれど、バイカーズ・ステーション誌の中村トラ イアンフで#190のメインジェットを装備して、僕も確認したが、とても走らせる状況にならなかった結果を得ているし、これまでのところ10番程度落とし ても、どうも変化に乏しいように感じるた め#220とした。
 若干いい状態になってきた、というところで一応、メインジェットは終了、ということにした。もちろん、パイロットジェットの番手、スクリウの戻し回転数 など、別の要因も感じられるが、アクセル開度1/2以上でのこととしては、今のエキゾーストに対してはOKであろう、と決定したことだ。

2004年3月19日(金)
 午後3時から休暇を取る。季節柄仕事が忙しいのはわかっているが、四国自動二輪交友会へ参加するために、SR500のオイルクーラーへのラインの取り回 し変更をまず先に 行った後にトライアンフの取りかかる。仕事の性格上、僕一人が2時間程度休んだところで仕事に穴が開くものでもない。
 メインジェットはフィーリング上#220がいいようだ、ということでパイロットジェットを#32.5に変更する。スクリウなんて一切さわっていない。と にかくパイロットの番手だけを換えただけだったのだが、ガツーンとやられた。
 このスムースさは何だろうか。非常に好ましい走りになってきた。さぞやプラグもいい色具合だろう... 、と思いきや「真っ黒」。おまけに電極外周のカーボンの付きが尋常ではない。何がどうなってんだろうか?

 残念ながら、これ以降1週間にわたって平日も休日も時間のとれない状況になってしまう。職場と家との往復だけの毎日になってしまったため、オートバイの オの字も口に出すことはなかった。もちろん、頭ん中は考えを巡らせ、ノートに気付いたことを記載をしていた。しかし、考えと実際とは違うものだ。それでも 意識は持ち続ける。
 #280のメインジェットと#35のパイロットジェットパイロットジェットの組み合わせが、相当に濃い状態ではあったが、何とも言えない走行フィーリン グを与えたため、この際パイロットジェットを下げてやれば、メインジェットが#220のため、キャブレター全体の働きとしてイイ方向になっていくのではな いか、というこ とが頭の中でのまとめであった。

2004年3月27日(土)
 実に一週間目にT-140Vをさわる。しかし、午前中は野暮用で職場へ出向くため作業は午後からになった。
 メインジェット#220、パイロットジェット#32.5のままで再度走らせてみる。この前と変わらない。もう一度BR6ESのプラグを確認すると、外周 電極にカーボンが多く付着している。そのススが中心電極部分をうっすらと覆っている。ちなみに、中心電極部分を拭うと、わずかに茶色っぽい碍子部分が顔を 出す。
 このことは、考えどおりパイロットジェットの番手を下げればいい、ということになる。アクセル開度とレスポンス、スピードの出方は変わりがないのだか ら。
 が、すでに夕暮れが迫る時間になっている。今日はこれまでで止めることとする。これ以上やると、余程のことがない限り煮詰めが出来ないまま悶々が夕餉に 悪 影響を及ぼすからに他ならない。全ては明日だ。明日こそ結論を出そう。

2004年3月28日(日)
 朝はまだ気温が上がらない。昨日の続きで午前中の早い時間職場で用務をこなして午前10時頃よりさわる。
 何もかも昨日と同じにしてパイロットジェットだけを#27.5に交換する。もっと下げてもいいように思われるが、すでに発進などが難しいことは確認済み だし#30にすると、「上げるか下げるか」難しい判断になって、#35に上げた状態は前回報告したとおりであり、それをふまえて#32.5に下げた結果か らだから、#27.5は今の状態としては最低の数値としていいように感じられていたのである。
 今回の交換作業はキャブの配置、止めの(ABA製)バンドの取り付けを考慮しながら、じっくりと作業をする。油面などはほぼ同一であった。
 まずはスクリウ戻しなどそのままの状態で近くを走る。走らせながら感じたのはこのオートバイは少なくとも5分のウォーミングアップの後、ミッション、プ ライマリーなどの関連が落ち着くまで、この季節(気温が18℃)でも20分は必要のようだ。
 650モデルならプライマリーが10W30だから、エンジンが温もるとともにクラッチハウジングも回転するので比較的短い5分程度でOKだろうが、 750では150ccのプライマリーオイルはエンジンと同じ20W50であり、エンジンオイルがプライマリーにも一部流れ込むようになっている。
 ギアオイルも650では#50シングルだが、750では80-90程度の乗用車並のものが要求されるのだから、実走行で落ち着くまでにはかなりの時 間が必要なのではないだろうか。
 クラッチがホッピングとかヨーイングするような現象が収まってから、三間から広見へ抜けるいつものコースを走らせる。務田の坂を越えたあたりから前を行 くカワサキのZ 1000FXの改造車に対してコーナーですっと近づける。なかなかのパフォーマンスだ。もちろん相手は上体を被せて倒し込むコーナリングは一切しない、股 をオッ 広げ粋がったようなスタイル優先の気分で走行していたものだから、追いつくことが出来たんだ、として途中から僕が引き下がった。
 かなりアクセルレスポンスも良くなって気分よく走らせて帰宅。プラグを確認するとミゴトにタン塩色になっていた。外周電極のカーボンも少なくバチっと付 着しているような状況だから、かなりいい状態になっているようだ。
 右のプラグが少し黒い。これは旧タイプのBR6ESのため、僕の経験からすると抵抗値が若干大きいからではないだろうか、と考えた。
 この状態でスプリットファイアのSF-405Dに交換して、松尾峠から三浦〜寄松を経由して帰ってきたところ、今度は左の方がくすぶっているため、僕の 考えは当たらずも遠からず、というところではないだろうか。
 その後、再びBR6ESに戻して走行し、申し分ない状態で全てを終了した。ホッと一息ついて、丸穂温泉でくつろいだ後、ゲルマンで祝杯を上げた。
 
項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#220
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#27.5
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nテーパーラウンド 間もなくラウンドタイプに交換予定
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

考 察
 わずかインシュレーターホース5mmの差から生じた今回のSUDCO MIKUNI VM32mmのキャブ調整だったけれど、かなりの時間を要した。上記の表の現状を細かく分析すると、このキャブレターキットに付属していたもので、ある程 度はセッティングできる、ということであった。
 T-140V用としてのSUDCO社のキャブキットでは32mmが中心となる。このキットに入っているジェットはパイロットジェットが#20、#25、 #30であり、メインジェットは#200、#210、#220だ。当然、インマニアダプターが僕の場合より長いし、ホースも長い。が、アダプターを5mm カットした結果、ホースも50mmになって、ほぼ標準の仕様に近づいた。
 全くバカげた話だが、SUDCO社も相当に研究していることが確認できた次第だ。
 AMALの930MK-Iとの大きな違いはいったい何であろうか。おぼろげな記憶をたどると、AMALはいかなる時にでも、とにかく燃焼室に混合気をド バッと送り込む方向でセットすべきだ、と考える。T-140Vの場合ならメインジェットは#190でOKだろう。燻るから、といって番手を落とすと結果が 良くないように感じる。

 アメリカ仕様(のAMAL)ならこの当時はパイロットジェットが装着されていない。キャブレターの機構上必要のないものかもしれないが、#25〜#20 程度のパイロッ トジェットは日本で使用するのなら必要不可欠だ。この状態で使うと濃いめのセッティングになるが、いいフィーリングを与えてくれる。
 安心できなくなるのは夏場だ。高温時、渋滞などにかかるとインマニアダプターが金属製でシリンダーヘッドにダイレクトに結ばれるから、とてもじゃないが フ ロート室も触ると「熱い」と感じる状況になる。ノートンコマンドに乗っていらっしゃる大阪のTさんなどは、取り付けボルトにグラスチューブを被せ、セラ ミックワッシャーを用いたりして実験をされていたようだが、やはりダメ。T-140Vの場合はエンジンとキャブとの距離がないから、熱は一層伝わってしま うのである。
 もう一点は何度も記載するが、AMALでは本体もピストンも同一素材であることからピストンの編摩耗に本体への張り付きが起きる。キャブレターの機構そ の ものは単純明快で好ましいのだが、九州のショップがメッキのピストンを装着したMK-Iをリリースしていたが、多くのMK-Iは、あくまで10年程度は持 つ消耗品としての位置づけは今後も変わることがないのであろう。
 僕はAMALで編摩耗に張り付きが頻繁に起き始めた頃、浅川トライアンフを別冊モーターサイクリスト誌で知って、それからSUDCO MIKUNIの32mmVMキャブを導入することを決意したわけである。
 これまでの数年間、自分自身で色々いじくり、あーでもない、こーでもないを繰り返しながら、ようやくうまい走りを提供し始めてきた。もはやAMALの キャブには戻らない。もし、余力があれば34mmも確認したいが、今のところ、金銭面で少しばかり余力がない。向こう2年程度はこのままの仕様で楽しむこ とになろうけれど、その先はエンジンのオーバーホールを行わなければならなくなるのは明白だ。それに向けて、何とかしなければならないし、ブレーキ関係と かフロントフォーク関係とか、若干ながら不満も蓄積しつつある。

 ところが、問題は思わぬところに潜んでいた。SUDCO MIKUNI 32mm VMキャブそのものが持っている特徴がほんの少しの調整で大きく変化する。その結果、再びキャブレター内部のものを変更しなければならなくなってくる。
 ここまで記載すれば多くのエンスーの方にはお分かりだろうと思う。そう、そこなのである。日本では「ノーマル」と称されるストック状態のエンジン、排気 系に合わせる吸気系のキャブレターのほんの一つのもの、その重要さを改めて知った思いである。このことはFCR、TMRなどの高性能キャブレターに関して は記載があるが、単純なVMキャブレターのセッティングの中には簡単に記載されているが、実際はそのとおりにはならない。今回のMIKUNIとか、 AMALの 単純なVMキャブレターの一面では根幹をなすようなこと、多くが今のユーザー、ライダーにすっかり忘れられている、その問題にぶち当たったのである。


[も どる]





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