そ の後の SUDCO MIKUNI

 2004年2月はすさまじい月になった。少しずつ春めいて来だしたこと と相まって、T-140Vにも急に春が来始めてきたように感じた。10か月目の再始動の一件は僕の五感をも急に眠りから醒めさせるようなものを持っていた ようだ。

まずは...
 その一歩は偶然から始まるのである。先に燃料コックを交換した手前、SUDCO MIKUNIのインシュレーターホースの長さを55mmから50mmに変更せざるを得なくなったことは申し上げた。
 エンジンが再び回り始め、別段気にも止めなかったことをすっかり忘れてしまっていた。エンジンを冷まして数回行った結果、始動後のストールが少ないこと にハタと気 づいたのだ。エ〜、わずか5mmの差だゼ。そう、5mmだけど、結果は相当なものを持っていた。しかし、55mmに落ちつくまでは既に紹介しているとおり 試行 錯誤だった。当然50mmにセットした時もあったが、すっかり記憶から抜け落ちている。
 どうしてだろう?。それは、ジェットの変更でキャブレターの状況とエンジンの状態がことのごとく変わったからである。このことを逐次報告していると、ま るで一人メカニックのセミプロサンデーレーサーになってしまう。最初の頃はMacを使用してテキスト形式で逐次状況をタイピングしていたが、自然条件と か、僕の精神状態ま でも分析して記載などできないので止めてしまった。
 始動直後のストール問題を別にして、通常は55mmで安定したため、今回、燃料コックを交換するまでは結構いい調子だったのであった。

やってきたゾ!
 2004年2月14日(土)のセント・バレンタインデイの日の午後、タンクのリペイントから10か月目の再始動。その後の走行テストはすさまじい結果で 終わり、興奮が醒めやらなかった。
 一夜開けて15日、再びエンジンを始動したときにも同じ状況であった。そう、始動直 後にも関わらずストール状態が少ないのだ。エンジンが暖まるまでの数分間、タコメーターで900rpm近くからジワリと2000rpmぐらいまでスロット ルが開けられるようになれば、走り出すことができるようになったのである。
 エ〜、どうして気づかなかったのだろうか。バカな。狐に包まれたような気分になってしまった。燃料コックと燃料パイプ、それにインシュレーターホース以 外全く元のま まなのだから。



微調整
 もう一度、SUDCOのホームページを覗いたり、浅川トライアンフの写真を見たりした。決定的になったのは昨年春のブリティッシュランに参加してらっ しゃ った、Mさんのヴィンセント・コメットに装着されたSUDCO MIKUNIのシングルキャブだった。写真から判断して、そのストックのインシュレーターラバーが全く僕のものと同じ長さだったからだ。
 SUDCO MIKUNIに付属してあるのは、ある程度SUDCO社がきちんと自社ではじき出したデータによって決定されていたようだ。そのサイズは2と1/4インチ (換算= 56.35m)だ。ストック状態でのこの数値は変更すべきではない。
 お前さん、バカと違うか。そう、ラバーは50mmと言っておきながら、どうして56mmなんだ。おっしゃる意味は解ります。
 これはSUDCO MIKUNIのキャブセットに入っているラバーホースは非常に肉薄でバイアスコードにより相当に丈夫なんだ。おまけにインマニアダプターが長いため、ラ バーホース内での混合気の流れが非常にいい。つまり、650ccモデルでAMALを装着した時のインマニアダプターが比較的長いことも視野に入れなければ ならないために、汎用のモデルとしては若干のマージ ンを採ってのことだろう、と判断する。
 したがって、僕のようにアダプターまで切ってしまうなど、シビアに対応させようとすると、50mmの方が対応が良かった、という結果からである。
 また、アダプターをカットする理由はもう一つある。それはホースの銘柄によっては肉厚が大きいために、ホースを挿入する際に、かなりの労力を必要とする からだ。ただし、ダート レーサーとかオフローダーのような使用の下では、振動などによって、万一キャブが抜け落ちることを考えると、このアダプターのストックの長さは必要不可欠 なものかもしれない。
 これからSUDCO MIKUNI VMキャブを導入されるのなら、このインマニアダプターはカットしない方がいい、と、あえて申し上げておきたい。

 というところで、僕のT-140VにSUDCO MIKUNIのVM32を装着した、2004年2月27日時点でのセット内容を以下に報告する。
項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#280
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#35
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱)内径38mm
エアクリーナー K&Nテーパーラウンド 間もなくラウンドタイプに交換予定
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

 ところが、これが全てではない。T-140Vに'70年までのトライアンフタイプのマフラーを装着すると、上記の僕の一覧は若干フィットしないことにな るような気がする。特に筒抜けのマフラーではおそらくダメだろう。

まだまだ問題が... 
 一瞬にして覆ることがままある。問題は簡単なところにあったりするものだ。それが分からないから余計にまごついたりする。
 この間までのセッティングは表のとおりであった。中で少し違っていたのはニードルクリップの位置だ。表に載せなかったのは、大きい影響がない、と判断し たからである。
 2003年の春まではメインジェット#280、パイロットジェット#30にして結構すてきなフィーリングで走っていた。プラグは若干すすけるものの、こ の程度にしておいても エンジンは止まることはなかった。今回インシュレーターラバーを55mmから50mmに変更しても、直接エンジンへの影響は無かっ た、と感じていたからだ。

問題の2004年2月21日(日)
 息子の結婚披露パーティーの関係で宇和のT君宅へ出かけた。午前11時前に法華津トンネルを出た途端に渋滞に巻き込まれ、脇道へ逸れたところでエンジン がストールした。片肺状態でエンジンが回る。もしや... 、とワイヤーを引くとインナーがスルリと抜けてきた。ワァーオ、まただ。T君に連絡を取って、ステンレスハンダを使用して、いつもの方法でワイヤーのタイ コ 処理をしてOKとなった。

 でも、おかしい。この原因はメインキー(ベンツと同じ鉄製)の接触不良、というお粗末と、修正したワイヤーの再度の処理、そして、最大の要因は右 キャブのフロートバルブ がうまく作動していない、ということであった。
 これまでのことを思い起こすと、どうもスロットルピストンの作動が少しばかりスムースではなかったようで、 フ ロートバルブの動きが遮られていた、というか、動きがギクシャクしていたのが原因であったようだ。段付きの磨耗などは起こっていなかった。
 くすぶり側の右気筒のプラグをBR7ESから抵抗なしのB7ESに変更してエンジンが回り始めた。

 ワイヤー修正の時に話をしただけで、本来の目的を果たせないままの帰路になったが、エンジンの状態は若干の違和感があるものの通常の走行ができた。帰宅 してワイヤーエンドの修正によって再 びキャブレターのピストン作動の同期をとって、左の気筒もB7ESに交換。
 するとどうだ、エンジン自体がが力強くなってきたではないか。全くおかしい現象であった。レジスター無しのプラグでこれぐらい変化するとは... 。

またもやヤリ過ぎ、でも確認できた
 これぐらいのことでも変化することが次々と起こる。それゆえ楽しいといえば楽しいが、今度はどこから手を付けていいのか不安になってくる。が、バレンタ インデーに インシュレーターを55mmから50mmにして俄然調子が良くなった。ここを問題の拠り所として今のメインジェット#280はそのままに、パイロット ジェットを#35から、10か月目の再始動の時(#30)に戻してやる、唯一違うのはニードルクリップを下から2段目から中央へ持ってくることとした。こ れによって スムースさに力強さが加わるはずだ、と判断したからに他ならない。

2004年2月23日(月)
 ほんの2時間程度開いた時間が出来たので、T-140Vに手を付ける。まずはニードルクリップをセンターに、パイロット ジェットを#30しただけ。
 ナ・ナ・ナント走らないのだ。そんなバカなことがあるものか。でも、発進しづらい。ストールしそうになる。

 次なる処置は単純に考えてメインジェットを#290にする。若干具合よくなるが、4000回転以上で半クラッチを使うバカげた状況になってしまうのであ る。刻々と時間が過ぎてしまうが、すでに今回は「動いている」という自信から焦りなどは一切 無かった。この状態でひとまず置いて、夕方からの仕事に出向く。

 仕事を終え、遅い夕食を済ませた後、午後10時前よりキャブレターを再びバラしてパイロットジェットを#35に戻す。すでに#280のメイン ジェットでのこの組み合わせは紹介しているとおりである。 今回はこれに加えてニードルクリップの位置を真ん中(3/5)から再び下から2段目の位置に戻した。一応、フロートバルブもルーペで確認したが段つきの磨 耗は起こっていなかっ た。点火プラグはこの前のB7ESのままである。
 酒が入っているので運転は避けたが、エンジンを始動して「アッ!」と息をのんだ。ン、やはり今のところはこのセットでいい、と改めて確認をした。

どうもおかしい...
 2004年2月28日(土)日中は晴天であった。夢はまだ続いている。 意識も明瞭だ。朝ようやくケリのついた新聞ドロ対策に安堵したせいか、どことなくドロ〜っとしたものが支配をしていた。
 前日は相当にひどい酒の席に着いていたし、早々に退席したもののやりきれない気分が、これまた大きく僕を支配していたのも事実だ。どっちつかずの中で、 ふだんの生活に戻す。
 久々にステファニーのパンを購入に出かける。のんびりとテレビなど見ている。そういえば昨日は麻原の判決... 。まだまだ裁判は続くのだろうな。番組自体もその関係のものが多い。

 午前11時、T-140Vの点火プラグをBR6ESに交換する。キックすると急激に回転数が増える。実のところ、相互互換はあるとはいえ、NGKの場合 だとR付きと無しとでは現実に火花の出方などは変わるはずだ。
 実際、NGKの公称抵抗値は5KΩである。NGKの製品一覧の中には若干だがR入りのプラグ はスタンダードのプラグに対して1番上位に位置づけされているものもある。おまけに、僕のNGK純正プラグキャップは10KΩの抵抗入りだ。26年前は点 火プラグの抵抗入りは存在していなかったのだ。
 前書きはこのくらいにしても、若干勢いが強くなった。つまり、熱価が下がった分焼け型になったのだから。でも、くすぶりは相変わらずだ。
 唯一同じなのは相変わらずの始動直後のストールがないこととアクセルレスポンスが変わらないことだ。そういえば、メインジェットを#290にし たときもほぼ同じレスポンスであった。

虱潰し
 そうすると、インシュレ−ター長、ニードルジェット(クリップポジション)、それにカッタウェイは今のままでよいことになる。本来はニードル自体は交換 すべきだろうが、これ!というものは単独で発売がない。強いて言うと、RD250〜400、RZ250〜350のものを選ぶか、ということになる。しかし ながら、SUDCOの30〜34mmキャブである本製品は、ボディーを共通にしているので、今回はこのニードル、カッタウェイはそのままにしておくことと した。
 不幸中の幸い、ボディーが共通のため、比較的簡単なVMキャブであっても調整ポイントが数点あるわけだから、インシュレーターは別にしてキャブ本体では カッタウェイとニードルはセッティングが一応終わった、と考えて差し支えない。
 虱潰しってったって、ここまでさんざんやってきたんだし、コツはつかんでいるんだ。おまけにSUDCO MIKUNIのこのキャブの出力特性のようなものは身に付いている。それじゃ、何が原因なんだ?

本来の30mmに戻す
 上の二題は走りながら考えていたものだ。最終結論は何だろうか。いくらパイロットジェットを換えても、このキャブ本来のパフォーマンスを出すために足か せになっているのは何だろうか。
 現実に、どこをどういじっても、インシュレーター長さ以外は破綻のない能力を示すのはどうしてだ?。実際はもっともっと変化するはずなんだろうに... 。
 そうか、見かけの28mmアダプター(下の写真を)取り去って本来の30mmに戻せばいい。

 そうすると、またしても#290とかのテストをしなければならないのではないか、とか、パイロットも、決定しているニードルも... 、と考えが悪い方向へ向かう。致し方ない考え方だったが、結果として今回は少し違っていた。

 ずっと以前の状況を覚えていたし、今回もセント・バレンタインデーの好結果によっても今の状況ではジェット類を先に触る必要がない。まずは見かけの 28mmのプレートを はずしてテストをする。

 若干濃い気分が味わえる。上は#280のままだから、パイロットを思い切って#25へ。当然のようにエアスクリウの戻し回転数が異なる。ストップスクリ ウもしかり。セットを終えてテスト。
 ウ〜ム、どうもピンとこないな。いいのは確かにいい。しかし、55mmのインシュレーターの時と同じであって、やはり、#25は失敗だったかもしれな い。が、イ ンシュレ−ター長、ニードルジェット(クリップポジション)、それにカッタウェイは完全にさわらなくてもいい状況になってきた。とりあえずは#27.5と #32.5のパイロットジェットを発注しておいた。
 時間も時間だし、明日は雨模様のため、 T-140Vのエンジンを冷却しカバーをかけるため、本日はここで青空工房を閉店することとした。

翌日のこと
 明けて2004年2月29日(日)閏年の2月の終わりは日曜日になった。比較的強い雨が朝から降っている。
 朝のうつろな気分で、キャブの各部の動きを確認していた。ストック状態からアクセル開けていって... 。やはり... 、そう!、このキャブは普通のVM然としているけれど、レーシングキャブというか、高回転域まで伸びることを意味している。そういったキャブだ。それな ら、スタートも3500程度回しながらクラッチミートさせる。そういった使い方からすると、5速では80〜90km/hという速度域が手に入る。
 点火コイルの性格からも1200回転程度をアイドリング回転としてやった方が全般にわたって都合がいい。そう、スタートは3500〜4000で、周りか らするとおかしいように思われるが、2速・3速と各段は同じように3000回転ほどでシフトしている。スタートしてしまえばそんなに違和感無い通常のギア チェンジだ。
 そうすると、やはりパイロットを#30にしてスクリウを再調整してテスト走行をしよう... 。残念ながら外は雨、運良く止んで道路が乾いてもやるのは3時近くになるな、と考えていた。

 ま、実際はその通り、天気も回復し短時間で変換作業を行ったのだが、どうもエンジン内部がススだらけになっているようで、解消するまでには数十キロの走 行が必要であった。
 アイドリングを若干上げて、エアスクリウの調整を行う。およそ1回と3/4程度でいい状態になった。アイドルはどうしても1100〜1200としておい た方がアクセルの初期反応がいい。
 これで宇和島道路でテスト。先に記載したとおりの状況で回転とスピードが一致する。100km/h程度はツーっと上がっていく。かなりのパフォーマンス を示す。 
 実際、何かが変わったのか、と言われると少し悩む。現実には苦労した分、結果がよかった。

項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#280
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#30
SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nテーパーラウンド 間もなくラウンドタイプに交換予定
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

今のところ
 おそらくAMALには帰らない、と考える。
 もう一つは、ヤマハを例に出して申し訳ないが、口径が大きいように思われるが、安定した混合気をシリンダーによどみなく送り込むことを主にしたら SUDCO MIKUNIも34mm VMの方がセッティングなども簡単なのではないか、とも考える。一説には28mm口径の方がツーっと伸びる感覚からすれば好ましい、とされるのだ が、僕は「ここぞ」と言うときのことなどを考えると、750ツインのボンネヴィルには34mmの方がいいようにも感じる。が、シリンダーヘッドの方が 30mmのままだとこれも少し問題がないわけでもないが。
 この組み合わせで結果を出してみたい。次は2.5で変化するパイロットジェットを確認するに止めたい。

 ともかく今のところのセッティングはこの程度に留めたい。次にやることは今の基本を変更せずに別の面で考えを巡らしてセッティ ングを煮詰めることだ。そして、再び周辺から攻めてみて、を報告する。そのときの報告は上記のとおりまと め替え になるかもしれないが... 。

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