T-140V ようやくオイル交換
・・・青空工房での辛い面・・・
キャブレターの状況が落ち着いてきて、走行距離も少し多くなってきました。ギアが入りづらいことと、季節も夏を迎えることから、ようやくのことでT-
140Vのオイル交換をすることにしました。現実には1年ぶりです。「お前さん、そんなことをやっていたのですか?、信じられない」とおっしゃるでしょ
う。
ま、事実は事実として、それにしても乗っていないんです。前の記事までのキャブレターの状況からすれば、本当に走っていないんだ、ということはご理解し
ていただけるでしょう。本当にSR500のように、3000km走行毎に交換できている走行状態ではなかったんです。
はっきり申しまして、いつも通りの黒い汚れではありましたが、粘度など全く良好な状態であったところです。
オイルの選定で悩む
T-140Vの指定はSAE20W50のマルチグレードです。650までですと、プライマリーのオイルがエンジンオイルと違う粘度ですが、T-140V
ではプライマリーへエンジンオイルが勢いよく霧状になって吹き付けられます。従って、エンジンオイルとプライマリーは共通でなければならないわけです。
これまではelfの15W50が使いよく、多用してきました。ところが最近のオイルの状況は自動車が優先されますから、量販店でも10Wというのが多
く、ことに20Wなどというのは見かけない状況になってしまっているようです。当然、15Wを探すということは諦めました。
では、10WでOKか?、といえば、そうでもないんです。また、同粘度の合成油ともオイル単体で較べると別段変わった様子はありません。が、いざ、オイ
ルジョッキへ移し替えする段になって、粘度の状況がはっきり判ります。トポッ、トポッという音からして粘度の違いが分かると思います。
私の持論からすると、若干発熱量が多いエンジン、シリンダーとシリンダーヘッドが違うタイプのエンジンにはオイルの粘度保持から、10W50というオイ
ルは使いたくない、というのが本音です。
では#40シングルはどうか?。ここがプライマリーにもエンジンオイルが使われるT-140Vではこの点がクラッチの切れなどに影響してくるわけですの
で、これもお奨めではないのです。
忘れていましたが、トライアンフの多くのエンジンはギアボックスが独立しています。ここには#90のハイポイドオイルが指定です。幸いにも、このハイポ
イドギアオイルは、75〜85W90ぐらいのオイルが多く市販されておりますから助かります。
が、メインのエンジンオイルである20W50というのは結構少ないのです。このような状態で四苦八苦していたのも事実です。
私自身はT-140Vに関しては、鉱物オイル、合成オイルについてはそんなに区別をする必要はない、と感じています。もし、合成オイルを使用して、T-
140Vでオイルの滲みが見受けられるところは、ロッカースピンドルへの供給部分、プライマリーチェーンケースカバーの下部ということになりますので、そ
れほど気になるものではありませんので、いずれにしても、オールシーズンを通しての粘度をどうするか?、どこでも入手できる銘柄、が最大の課題です。
エンジンオイルの決定
以上のようなところで、15W以上50までのマルチグレードオイルで、鉱物、合成の区別はつけないところでの良いオイルはないだろうか?、を主として少
し調べてみることとしました。
ネット上ではウインドジャマーの牧瀬氏がハーレーのオイルについてなかなか良いことをおっしゃってます。#50シングルでも良いか?に対して、夏場に渋
滞に絡まれるようなところでは#50シングルはなかなかいいが、夏場の北海道へは20W50でなければならない、と。
ところが、ハーレーは多くがプライマリーが乾式クラッチのため、エンジンオイルはエンジンにだけ、というところが違います。
同じように、GUZZI SPORT JINGUSHIの神宮司氏も夏冬のオイル管理のことをおっしゃってますが、MOTO
GUZZIにしても乾式クラッチですから、T-140Vとは少しばかり内容が異なります。
私の経験と、各方面での造詣の深い方々の言を参考にすると、私自身のT-140Vのオイルへ関しての考え方が大筋当を得ている、と感じました。
で、ネット上で調べると、結構多くの銘柄が存在します。が、どのグレードにしても私の住むところでの入手は難しいものばかりです。
そんなこんなで、何とかしようとしていたとき、ありましたね。オイルの名前を聞いて驚かないでくださいよ!。それは、ホンダのウルトラオイル20W50
です。実は、このオイルは、T-140を再び動かす際に最初に使用したオイルでした。非常にスムースで、その時の四国自動2輪交友会へ坂出までの往復を走
り切ることが出来ました。その時に、プッシュロッドチューブの組み付けの不具合を見つけ、再組み立てした後も、このオイルを使用したところです。
その後、elfの15W50を年2回の割合で使用し続けたところです。2年前の花園村への道もこのオイルでした。半合成が途中鉱物油に変わりましたが、
現在では、このオイルはどうも入手できなくなってしまっているようでした。
そういったこともあって、エンジンオイルはホンダのウルトラオイル20W50を3本(3L)購入しました。
ギアボックスへは使い慣れたBPの80W90を使用することとしました。
オイル交換 体が...
2006年5月5日。朝からの上天気で気温が上がることが予想されるため、午前中にオイル交換を終わらせることとしました。
まずはエンジンオイルです。比較的長いアイドリング時間を取って、まずはメインチューブ(これをオイルベアリングフレームと呼びます)のオイルタンクか
らオイルを抜き取ります。これが一つ難問でしてね。
通常のインチサイズのメガネレンチではほどけないんです。どうしてもボックスレンチを使用しなければならない。そのうえに、国産のドレンボルトと較べる
と、ネジの咬み合いが硬いときていますから、ラチェットが必須工具になります。このラチェットって結構高価なんですよね。
この辺から路上でのオイル交換になりますから、両膝を立てて、左手をステップの上に置き、右肩を入れるようにしてネジを外したり締め付けたり、その姿勢
は回りから見ると「変な格好」ですが、思わぬことが後で出てくることになろうとは、この時は一切感じませんでした。
出てきたオイルは黒いオイルでした。が、金属の摩耗による不純物などは見られず、燃焼によって汚れたものが大半という状態でした。
パッキンの銅ワッシャーが当たる部分を綺麗にし、ドレンボルトのネジ部分にグリスを塗って組み付けます。
エンジンオイルが通るエンジンの各部にはモリブデン系は一切使ってはなりません。何度も申しますが、T-140Vでは、プライマリーにエンジンオイルが
吹き付けられますから、モリブデン系の添加物が入り込むと、クラッチは見事に滑るからです。
次は、クランクケース下部の(ガーゼ=金網)メッシュフィルターを伴ったドレンボルトを外します。これまた、ネジ寸法がイマイチで、ボックスを使用する
ことになります。これまで、どうしても、このドレンボルトが外せずにいました。つまり、緩めて少しボルトを出したまましばらく放置する方法です。ほどけな
い理由を一生懸命考えていたのですが判りません。
少しばかりクランクケースのバリが残っている状態でしたので、その部分を削ってはいたのですが、どうもそうではない。ネジ部分は完全にほどけているので
すから、一つ軍手をして、ボルトのフランジ部分を持って引き抜きました。ン、今回は上手くいきました。原因は簡単なことでした。メッシュのフィルター中央
に入り込むオイルラインのパイプの切削部分の面取りが無かったためと判断しました。次回もこの状態でしたら、ヤスリで修正をしなければなりません。
この部分からのオイルも黒い汚れだけでしたし、メッシュフィルターも目詰まりはありません。一応、フィルターを掃除し、元通りにドレンボルトを取り付け
ました。
次は、プライマリーです。やはり、この部分のオイルが一番汚れていました。
オイルジョッキを1つしか持っていないために、ここで、先にエンジンオイルを注油することとします。まずは、エンジンオイルを2L、メインチューブのオ
イルタンクへ注油します。次にプライマリーへ150cc注油しておきます。プライマリーのトップボルトは、Oリングの付いたネジ部分にグリスを塗って、こ
の時に完全に止めておきます。エンジンオイル部分はねじ込んでおくだけとします。
次は難関のギアボックスです。ここには二つのボルトがあります。一つはギアボックスを止めているボルトです。もう一つが2段になったギアボックスのドレ
ンボルトです。
2段になったドレンボルトの中の部分はレベルゲージ的になっていますので、外側のナット部分にレンチをあてがって外します。
いや、オイルはひどい状態になっていました。泡立ちと水分混入で白濁したものが下りてきました。今まではクラッチケーブルのアジャスター部分からの浸入
と思っていたのですが、どうもそうではないようです。いずれにしても、今回の交換の後、タームを早めてオイルを交換する必要があるように感じました。
ドレンボルトを締めるついでに、ケース止めのボルトも締め付けを確認しておきます。ギアボックスへはハイポイドオイルを500cc注油します。
一息ついて、セオリーどおりのエンジン始動を行います。エンジンから熱気が感じられる程度までアイドリングをしてスイッチを切ります。レベルゲージでエ
ンジンオイルの点検を行います。私の場合は300ccの追加でOKでした。きっちりと蓋をして終わります。
何と、ここまでで1時間半程度も時間がかかっています。何たること。リフトがあればな〜、と感じる一瞬です。
手を洗って、テスト走行をしようと思ったのですが、左手が痺れています。正座をして足がシビレてしまったような感じになっています。手を洗うのを水にし
たり、お湯にしたりしたのですが、どうもダメです。かといって、痛さも感じるし、力を入れることも出来るのですから始末が悪い。
いずれにしても、午後から走らせることとしました。
オイル交換の結果
前回のキャブレターの件で一つ申し上げた何かの確認の一つが、このオイル交換でした。何が変わったのか?。その一つがシフトアップの時のギアの入り方が
まるで違う。スコスコとは行きませんが、どことなくラフなシフト操作をしてもギアの入りはオイル交換前より格段に向上しています。
オイルの耐久性などは、もう少し走らなければなりませんが、今回使用したホンダ・ウルトラオイル、オートバイ専用の20W50としてはT-140Vに
とっては好適かもしれません。
問題は、交換のタームです。通常の5月・9月の季節交換にはフィットさせましたが、走行距離数での交換をどうするか、ということです。
ちなみに、T-140の場合は次のようになります。
6週間、あるいは2400km走行時にエンジンオイル交換、6か月、あるいは9600km走行時にギアボックスオイル交換となっています。
おかしいことにお気づきの方はオイルタンクを装備した1970年までの650ccモデルを使用されている方々でしょう。ここまでのモデルは、プライマ
リーチェーンケースのオイル交換は1か月、あるいは1600km走行時となっていますから... 。
ところが、750ccモデルの場合は400km走行時のエンジンオイルチェック時期についても、プライマリーチェーンケースのオイルはエンジンオイルが
ブリーザーから供給される、とありチェックの必要はない旨指示されています。
ところが、エンジンオイル交換時には、このことが記載されていなく、最終の特徴的違いについてはオイルチェックの時と同様のことが記載されています。
これらのことから判断して、プライマリーチェーンケースはエンジンオイルと同時交換とした方が良い、と結論づけられます。同時に、このことからエンジン
オイルが供給される部位にモリブデン系を使用できないことに至るわけです。
となると、マイル・メートル換算ですから、現代流と国産車の通常とフィットさせるとなれば、2400kmを3000kmに、9600kmを
10000kmに変更しても良いのではないか、と考えます。その理由は、オイルの質と長年使用しているオートバイだから考えられる数値です。
しかし、待ってくださいよ。確かにプライマリーチェーンケースはエンジンオイルと同様に交換すればいいことになるのですが、どうして過去の650ccモ
デルでは1か月、もしくは1600km走行時にプライマリーチェーンケースのオイルを交換させるのでしょうか?。
これからのオイル交換のポイント
その1、プライマリーチェーンケースのオイルについて
650ccモデルではプライマリーチェーンケースのオイル交換が1600km走行時という、異例に早い時期に設定しているのはどうしてでしょうか?。若
干構造は違いますが、K0(ゼロ)タイプから始まるホンダCB750の内部が1次駆動がチェーンです。しかもドライサンプ。しかし、エンジンオイルと共用
にもかかわらず、3000km走行毎のオイル交換ではなかったか、と思っています。
常にT-140Vのオイル交換時に感じるのは、エンジンオイルが粘度もあるし、劣化もそれほど感じられないのに黒く汚れるのはどうしてか?、ということ
です。
650ccモデルではプライマリー部分へ10W30のエンジンオイルを350cc必要とします。デュプレックス(2連)チェーンですから、トリプレック
ス(3連)チェーンの750モデルよりケース自体は薄いのですが、クラッチ部分の1/3〜1/4はオイルに浸かるのではないか、と思われます。
プライマリーチェーンケースにはオイルフィルターは存在しません。おそらく、クラッチプレートの金属面とフリクションプレートのハイカーコルク面が擦れ
るのですから、この部分がオイルに混入する。そのために、オイルが汚れるため、エンジンオイルの1回交換に2回のプライマリーチェーンケースのオイルを交
換を要求しているのではないか、と感じたわけです。
したがって、T-140Vでは、プライマリーチェーンケースのオイルはわずか150ccで、それもエンジンオイルと共用。その上にプライマリー部分にエ
ンジンオイルの直噴となっていますから、650ccモデルよりもプライマリーチェーンの作動状況は楽な環境ではないか、と感じたのです。
で、T-140系ではエンジンオイル交換時にプライマリーチェーンケースのオイルも交換してやることが基本になります。
一方、このこと(エンジンオイルの直噴)が、カジリを防止し、潤滑性能を良好にするモリブデン系などの物質を混入した添加剤などをエンジンオイルが通る
道筋には決して使ってはならない、ということに至るわけです。
過去、私はプッシュロッドと、エンジンのバルブガイドに一度少量のモリブデングリスを使ったのですが、再びクラッチを分解し、ディスク、フリクションプ
レートともに清掃しオイル交換を短期に2回ほどやって収まった経験がありますが、クラッチの滑りを確実に味合わせてくれることは確実です(汗)。T-
140系ではモリブデングリスもスタッドボルトの一部分にしか使用できないのはそのためです。
この謎が解けたのはズ〜ット以前、別冊MCの富成氏のトライアンフT-140系のエンジンのリビルト連載からなんですが、これまでは、別に気にすること
でも無かろう、と記載をしていませんでした。海外のサイトには目を通していなかったのですが、国内の旧タイプのトライアンフを扱ったサイトでも、オイル交
換についてはあまり記載をされていないように思います。そんなところから、オーナー諸氏はアマリーのオイルが良いとか、バルボリンのギアオイルが良いと
か、交換タームも各々が理解されて行っていらっしゃるのだろう、と判断していたところです。
今回のオイル交換を通して、国内での数もあまり多くないとは思いますがT-140系のオイル交換の参考になれば、と思い、過去の経験から記載することに
至ったところです。
その2、交換時期をいつにするか?
T-140Vは確かにイギリスメイドのオートバイです。メートル表示になっても、いまだにヤードポンドが一般化しているのは事実です。が、使うのは日本
です。間違っても尺貫法をここへ持ってくるわけにはまいりません。あくまでメートル法を対応させたいのです。
それなら別にマイル=1.6kmとすればいいじゃないか、と思われるのですが、日本人というか私の性格から来るものでしょうか、5とか0とかで区切りを
付けたいんですよね。と、いうところで、長めを取るか、短めを取るかという問題なってきます。
私の考えはこうです。この当時のオートバイの資料(ヨーロッパ向けXS750=GX750
I型)を参考としますと、どうやら、エンジン、ギアボックスとも5000km走行時ごとになっています。ところが、これが国内仕様になりますと少々異なり
ます。エンジンオイルは2500kmごと、ギアボックスは10000km走行毎となっています。この当時のオイルグレードがAPIのSDクラスの時ですか
ら、現在のオイル品質からすると、エンジンオイル自体は3000km程度かな、と感じます。
しかしながら、シリンダーが鋳鉄。ヘッドがアルミのごくシンプルな構成のエンジンにもかかわらず、結構大きい爆発量を伴うT-140Vのオイル交換時期
はどういった方向付けをすればいいか迷うところです。
ここで参考になる一文を見つけました。それは神宮司氏のモトグッチに対してのエンジンオイル交換を2000km走行ごとにしてほしい、とありました。
T-140Vのオイルの汚れ方からすると、プライマリー部分の汚れがエンジンオイル全体の汚れに多分に影響しているのではないか、と思ったところです。
そうすると、ギアボックスとの兼ね合いもありますから、エンジン、プライマリーともに2000km、ギアボックスを8000kmごとを目安として交換す
る、ということに決めました。つまり、エンジンオイル4回に対して、ギアボックス1回、というものです。
もう一点は、マニュアルどおり4800km走行時のオイル交換において、メインチューブのドレン部分のガーゼ(メッシュ)フィルターを取り出して洗浄し
て組み付けよ、となっていますが、過去の経験から、この部分は少なくても4回に1回程度で良いのではないか、と感じています。現実に10000km走行時
にあっても、500km走行時、1000km走行時、以後3000km走行時ごとにエンジンオイルを交換し、10000kmを過ぎた頃、シリンダーヘッド
を分解し、その時にこのフィルターを外してみたのですが、スラッジらしきものは一切見つからなかった、という経験をしているからのことです。濾紙方式の
フィルターとは全く違う金網のみのフィルターですから、オイル交換を定期的にやっていれば、この部分は頻繁に交換する必要はない、としたところです。
これらのことは、あくまで私個人の考え方であり、実際のところは未知の領域でありますが、指定より早く交換することは、ある程度必要かな、とも感じると
ころです。
戯れ言
以上のように、T-140Vのオイル交換は大変な労力と、2種類のオイルを使用しました。通常のエンジンオイル交換でもドレンが3か所ですから...
。
今回のオイル交換は妻が乗用車で出て行かなかったため、路肩での作業となりました。そのため、姿勢がヘンテコリンになったために起こった左手のシビレで
した。結局、その日の夕刻に丸穂温泉に出かけてマッサージなどを行ったのですが、後遺症的なものが解消されるまでには1両日必要であった、という結果でし
た。
現実にはドレンの位置が結構困難なところに存在するため、オイル交換自体にはリフトとボックスレンチの駒用のラチェットが必要です。「知り合いのオート
バイ屋さんへ行けば?」とおっしゃるでしょう。が、今時20W50などというオイルは国産車には使いませんし、ハイポイドギアオイルもしかりですから、オ
イルも何もかも別物を持ち込んでの古い英車の面倒を見てくれるところは無いのです。そのための、自らが手を下さなければならない、ということです。
久々にオイル交換の作業をして、身体の柔軟性も必要だな、と感じた次第。否、それよりオイル交換を広いところで出来る環境の方が重要かもしれません。