T-
140Vにおけるプラグコードのこと
ハイテンションコードって実際のところ何でもいいんじゃないの?!、と
いうのが僕の持論だ。もちろん、それを覆す事実もあるし、高性能どころか、性能低下を招いたという事実も知っている。
オーディオでもそうだけど、20年前なら(レコード針の部分の)カートリッジの接続線をリッツ線、スリーナインの無酸素銅(OFC)線などに交換すると
音が良くなる、と言われた。
現代なら一番分かりよいのはアンプからスピーカーまでをつなぐスピーカーコードの交換であろう。信じられないかもしれないが1m当たり数千円から数万円
の幅で多くのスピーカーケーブルが存在する。僕もこれにならって1m2,000円程度のものを使用していたのだが、出てくる音がどうも納得がいかない。
ちょうど上杉先生が50芯の小判コードで十分、ということを雑誌記事で知って早速試したところ、一瞬我が耳を疑った。極性こそ、コードの外被に記載され
ているメーカー名の向きを統一したが、これが実にスムースなんだ。
本来は、これをリファレンスとすべきだ、と感じた。アンプがU・BROS-3であったからか、とも思ったが、自作の2A3シングルアンプでも結果は同じ
であった。
このように、コンポーネントオーディオの一部分を交換してもシステム自体の性能が向上することはない、という結果を知っているので、たかがプラグコード
を交換したって大きい変化はない、ということは十分納得できるのである。
プラグコードだけ低抵抗タイプのものに交換されて、しばらく後に元に戻してその変化が大きいと感じられる方は実際のところ少ないのではないか...
、というところが現在のオートバイの総合性能のクォリティーを物語っているように感じるが、いかがだろうか。
前書きが長くなったが、オートバイの点火系の最終段であるプラグコード1か所を高性能タイプというものに交換しても大きな変化は感じられない。僕の場合
は、以前も記載しているが、悪い方向へ向かう場合もあった、ということを経験している。
SR500やトライアンフT-140Vでさんざん使ったテイラーのコードだが、点火システムを一定とした場合、コード自体が持つ数値的なものが感じられ
ない。それ以上に不一致な面が多く感じられた。特にSR500ではゴツゴツした感じとかがそれに当たるが、一般では「大きい爆発」とかいって賛辞を送るの
であろう。
SR500ではスーパーサンダーの点火コイルが指定しているノーマルのプラグキャップとカーボンのプラグコードに交換すると、ノーマルの時と較べて強い
火が出ているような感じを得た。
T-140Vではボイヤーのトランジスタ点火システムとダイナコイルに交換した後、差し込み式のプラグコード装着の関係などからスタンダードなカーボン
のプラグコードに戻したところだ。この時点ではT-140Vの吸入関係はもっとトルク重視のセッティングになっていたため、OKを出しても良かった。
2004年も3月に入って、T-140VのSUDCO MIKUNI 32mm
VMキャブがいよいよ佳境へ入り込み、良好セッティング寸前になり始めた頃、どうも純良な火が供給されていないのではないか、と感じられるようになってき
た。
キャブレターとインマニを含めての吸入側のいくつかの要素、マフラーという重要な排気系のパーツ、これらはストックの状態ではない。エンジン自体にして
も電流供給方式は同じだが、点火系はボイヤーのトランジスタシステムと同時点火の3Ωダイナコイルが装着されている。これらがいろいろな面で作用している
のは分かるが、混合気が何となく燃え切っていない、という感じが拭い去れなかった。強いて言うと、キャブレターのセッティングがもう少しで、というところ
になればなるほど「混合気が何となく燃え切っていない」感じが一層強くなるのであった。
それならプラグコードだろう?。これを高性能なものに交換するという手だて意外には考えられない。まさにそのとおりだ。
それじゃ、元の木阿弥になってしまうのではないの?。おっしゃるとおり。この堂々巡り的な考えに対峙する考えを導き出すまでに相当な時間を要したのだ。
まずは、電力供給面から考えよう。フライホイールマグネット方式の点火ならエンジンが回るのが先か、火花を飛ばすのが先か、といわれるところだが、T-
140Vの場合はバッテリーを装着しているから、まずはそちらより電力の供給を受ける。
キーをONにしてキックを踏み下ろすとプライマリー側に取り付けられたACGが回る。交流の電力はシリコンダイオードでブリッジ整流されて直流電力とな
り、各方面へ12Vが供給される。その一つはツェナーダイオード(レクチファイアー)で制御されてバッテリーに戻る。エンジン始動後は、この動作が繰り返
されるわけだ。
これらの動作は劣化はしているが、芯線の太い外被が柔軟なワイヤーが使われているので導通も正常と認められる。バッテリーはシールタイプで若干容量が大
きくなっている。これらの要件で走行した感じが「混合気が何となく燃え切っていない」なのであった。
パイロットジェットを#22.5まで落として、点火プラグのくすぶりは若干少なくなったが、もう少し燃えてほしいという感じがつきまとうばかりであっ
た。
さー、どうしよう。プラグコードに付加するものを僕は好まない。ノロジーのホッとワイヤーなどがそれに当たる。すでに僕のT-140Vでは点火系は相当
にいいものが入っている。
こうなると単純にプラグの火をいかに強くとばすか?。これの最終段としては点火プラグに強い火を飛ばせるプラグコードを考えればいい。
シングルのシリコン被覆コード。これは単純に銅線の外皮をシリコン被覆したものだ。リーズナブルなものだが、芯線の状態が変化無いので、今回は見送る。
次は芯線がスパイラル状になったもの。この問題はスパイラル状の芯線の太さと外被のシリコンの状態にある。よく使ったテイラーのコードはインナーと外皮
のシリコンが少し緩い。スパイラル芯線ももう少し径の太いものがほしい、というのが僕の気持ちである。
昔流行ったアクセルの黄色いコードがその用件を満たしていたように感じたが、今では一般のシリコンコードになってしまっているようだ。そうするとツイン
コアかな?。トリプルだと外径が9mmを超えそうだから、いいことは分かるが、フルオープンのオートバイだし、オーディオの時と同じくこれだけが飛び抜け
て大きい存在になっても、性能差がツインコアに較べて飛び抜けていいとは感じられない。
賛否両論はあるだろうが、僕として、コイルから点火プラグまで60cm程度必要とする今の状況下でのコードの作動数値、装着するときの手間、走行時のこ
となどを満たすものとして、今回はスプリットファイアのツインコア プラグコードを装着することとした。
今回もコヴェントリーの清水さんにご苦労いただき、通常のものと違ったプラグキャップ部分が赤みの強いオレンジ色のものを入手したのだが、いざ、現物を
手にして、いい意味で少しばかりたじろいだ。
テイラーのコードが外径8mm、ツインコアは8.8mmである。だが、その太さが感じられない。100円ショップで購入したノギスで計っても8.8mm
あるのだが、そんなに太くは感じない。
ジョイントが以前のシンチュウ製で熱収縮チューブでカバーするのと違い、合成樹脂製のジョイントが付属している。
はからずも、僕はこれを破損してしまった。このことを防ぐ意味からジョイント装着時の注意点を記しておく。
現在のアダプター(ジョイント)はセンターのねじ釘部分が非常にもろい。そのために、ねじ込みすぎると必ず、ねじ釘部分をねじ切ってしまう。
- まずノギスがあれば、コードが入る部分の深さを性格に計測し、コードにマスキングテープなどでマーキングする。
- コードを右回しでゆっくりねじ込みながら、ねじ込みが急に重くなるところになる。通常なら、ここからもう一つ、きつくねじ込むところだろう
が、これをや
ると必ずねじ釘部分をねじ切ってしまう。
僕がこれをやったのだから間違いはない。しかも2本とも「やっても〜た」なのだから、先に記したジョイントのコードが入る部分の深さを正確に計っておく
ことが大切なのである。
どのくらいの感触かを知るには、ノーマルのカーボンコードの方から先に装着すると、ねじ込み最終段階の感触が分かるはずだ。
コードをねじ込むときはゆっくり行う。ねじ釘部分にねじ込みの摩擦熱を発生させては、僕の時以上に底へ到達するまでにねじ切ってしまう。
僕のようにジョイントをパーにした方はNGKのジョイントを使用する。NGKのジョイントは外側にバリがかなりあるので、カッターナイフ、ペーパーなど
で修正をされることをお勧めする。
ツインコアが入る側のキャップの穴をテーパーリーマとカッターナイフで拡大する。このとき、必ず内側からリーマを通すこと。理由は簡単。写真のラバー
ブッシュが外被にかかるようにすれば、水の浸入を防ぐことが出来る。外からリーマを入れると、お分かりのとおり、外被とに隙間が生じるし、ねじ込み式の
キャップでは完全にねじ込めない。
コードの加工は写真のようにする。
- NGK製ジョイントの場合、どうしても、外被を剥かずに装着は非常に困難というか、出来ないと思われる。そのために外
被を剥かねばならない。
- 外被を剥くコツとしては、付属のジョイントと同じく、コードのはいる深さを正確に計る。その長さに合わせて外皮を剥く。
- ラバーブッシュは外皮に被せる。
- NGKのジョイントのねじ釘部分は堅牢だが、やはり付属のジョイントの時と同じく、プラグコードを最終段以上にねじ込まないこと。
付属でもNGKでもツインコアをねじ込むときの感じは、おそらくノーマルのコードより「キツイ」ということであろう。このスパイラル芯線は相当に強いヨリ
がかかっているのである。そして内部シリコンと外被の間にあるグラスの網、これによって一体感を強くし、丈夫さを保っているのである。
僕のT-140Vにはヤザキのカーボンコードをコイル側にして装着した。このノーマルコード8cmは効率の関係から出された数値であろう。見事に一体化
できた。
取り付け早々のランは松山までの200km走行である。
2004年4月12日(日)はれ後雨
いつもどおりの始動。チョークを引いて1分程度回す。チョークを戻し、2000回転程度で5分間暖気。3000回転付近までのプレップに付いてくるよう
になればOKとしたいのだが、むしろ、3000回転程度の半クラッチ操作で発信できることができればいい。
このタイミングが難しい。発信できても、次の一時停止の後の発信でストールするときがある。
当然裏道を少しばかり走らせて国道へ出る。それでも一定過不足なく走らせることが出来るようになるには20km程度走行した後である。万一を考えて一般
国道を走ることとする。
ことは帰路やってきた。往路、少し反応の悪い大洲道での高速道走行であったが、帰路はこれを見事に払拭していた。当然燃焼室内のカーボン除去が行えたの
ではないだろうか。
大洲から宇和へ抜ける鳥坂(とさか)峠でもカリカリ音も少ない。クラッチ滑りも少ないし、何よりダルな走行が出来ない。かといってシフトが頻繁というわ
けでもない。とにかく走りが楽しいのだ。たかがプラグコードだけ代えたのに?、ということが再び出るのだろうが、今回ははっきり違う。
僕はツインコアが影響していると確信している。おそらくテイラーのコードではこれが発揮できない。これは僕の経験からでも分かる。
後日、春のブリティッシュ・ランに香川県さぬき市まで往復550km程度の走りを行ったが、始動直後のごたごた以外は不安など一切生じなかった。
お勧めとは行かないが、やはり点火系は点火システム全体として、プラグコードも点火プラグも含めて、どういったパーツをチョイスするか、という難しさを
久々に味わった。