アナログ録音の難しさ
お盆がちょうど土日になった2004年の夏、iPodの収録曲のことも
兼ねて、アナログ⇄デジタル変換でPismoに取り込むことにした。
使うのはいつものとおり。イコライザー付きディスクプレーヤーはオーディオ・テクニカ製のサウンドバーガー、変換取り込み装置(インターフェース)はローランド社のエディロールUA-1Xである。カセットテープ録音の方は実のところ簡単に
行えるのである。理由はいろいろあるけれど、過去、FM放送のエアチェックをはじめとして、当時、かなりの機材と良質のテープで録音しているから、アイワ社のSONYのOEMである最廉価版のウォークマンタイプでもかなりの音
質で記録できるのである。
ところが、アナログディスクとなると、そうは問屋が卸さない。とんでもないものが待っていたのである。
やり方は全然簡単。必要機器のフォーンからエディロールのインプットへピンプラグ→RCAピンプラグのコードを接続してやるだけで、エディロールは
PismoのUSB端子へ挿入すればいい。
録音はPismoのサウンド・イットを起動してテストした後、保存すればいい。そう、これだけなんだが、今回はそう巧くは行かなかった。思いもかけな
かったことが発生したからだ。
まず起こったのは、加瀬邦彦と
ザ・ワイルドワンズのOn the beachという、ワイルドワンズ再結成後のLPだ。これが一向にCDになってリリースされない。もち
ろん半分イン
ディーズ的な彼らのライブテープも持っているのは事実だが、LPと同じものを記録メディアとして手元に残しておくのが基本だから、ディスクの状態も含め、
最良のコンディションのもとでの作業になる。
PismoのiTunesでプレイバックすると、ディスク(LPレコード)の回転ムラが非常に多い。なぜだ?。理由が分かるまで1時間以上かかってし
まった。
原因はサウンドバー
ガーの内部にある駆動用ゴムベルトの劣化もあるが、パワートランジスタの制御用とイコライザー関係の電解コンデンサーの内部に残っている電気が蓄えが全く
消えてしまっている。ちっぽけなことだが、音質に大きく影響する。そして、モーターなどに直結しているオイル関係が潤滑度が落ちている。つまり、少しばか
り慣らし運転が必要であったことが理解できた。そして、センターの穴がセンターからわずかにズレているために、レコードをプレーヤーに置くときに注意する
こと、であった。
このLPの録音は無事終了。
次は僕の好きな野路由紀子さんのオリジナル・ゴールデン・ヒットLP。これも中古で購入したのだが、当
然、針が多く通されてよく聞かれている曲は「私が生まれて育ったところ」である。ノイズが多いが、ま、大丈夫。A面を終えて、B面へ。
若い方に説明しておくけど、カセットテープと同様にヴァイニルディスクは片面ずつの録音だから、片側が終わると、ディスクをひっくり返さないといけな
い!。
B面3曲目は目視でもミゾの一部分ゴミが盛り上がっているのが判るから、ティッシュに水を含ませたものでちょっと触れておいて、しばらくして乾いた
ティッシュで拭
き取るとOKになった。最悪の時はおしぼりを堅くしてゴシゴシ盤面を拭き取るクリーニングの後、スクアラン処理をするのだが、そこまでは必要ない。
が、全くキズも汚れも見えない2曲目で針飛びを起こす。針圧は3gだ。メインシステムでのプレーヤーはトーレンスのTD-125にSMEの3009と
シュアーのM-44で、針圧は1.5gだ。サウンドバーガーは3gだから普通のものだ。それで飛ぶとなると、カンチレバーのダンパー劣化?、などと専門的
な言葉が飛び出すほどアナログが染みつ
いている自分がおかしくなってくる。
無水アルコールも使ってみたが、やはり同じところで針飛びをする。ほかは大丈夫なんだから...
、と裏技を使うこととした。用意するものはティッシュとウーロン茶。ティッシュにウーロン茶を2〜3滴。それで少し力を入れて2曲全周を拭き取る。ティッ
シュを見ると黒ずんでる。お茶だと少し濃いめの暖かいのが必要となろうけど、ウーロン茶の方が便利。ただし、いずれの場合でも成果の保証はなし。
これでOKになった。
次は、盤面全体の調子がイマイチなんだ。というところで、イギリスはワッツ社のディ
スク・プリーナーを引っ張り出してきた。これは内部のスポンジに水を含ませて、毛足の長い特殊処理のクロスに湿気を与えてディスクのホコリ
を取るものだ。湿式クリーナーのパイオニアである。
これでディスクを数回拭うと実にいい音質になってきた。ようやく録音作業終了。
今は若い人たちの間でアナログディスクが人気だそうだ。泥沼にはいるか、ヤ〜メタになるのだろうけど、その前にディスクコンディションなどに気をつける
ことがもっともっと重要ですよ、と専門雑誌などで教えなくてはならない。
ターンテーブル、トーンアームを含めたプレーヤー、イコライザーアンプ、カートリッジ、スタイラスなどに注目が行くのが常だろうけど、それで再生される
ディスクそのもののことが抜けているとなると、単に人気アイテムだけで終わってしまいそうになってくるのではないか、と感じてしまう。
我が家の失火から再建なった時の最初の音出しをやったジュディ・コリンズのライブLPの最初の曲、「冬空」がチェロの伴奏と共に聞こえてきた。火事を生
き抜
いたこのディスクを必死でクリーニングして、スクアランで処理した日々が思い出される。あれから23年の月日が経過した。
Pismoも何とかなったが、僕のアナログレコードのバックアップとなると、相当な時間が必要だ。そろそろダイレクトにiTunesに記録できることに
なればいいが、これはまず無理だろう。