快速快適を目指して

 Power Book 540cを購入してずいぶんと長い期間が過ぎた。今時MC68040のCPUを搭載したキカイをどうのこうの言ったところで始まらないかもしれない。が、ツートーンカラーの筐体に美しいスタイル、世間は流線型というが、妙に女性のボディーラインを感じざるを得ない。これはリッドのディスプレーを開けて使用している状態ではなく、使用を終えて机の上に置いたときに感じる。僕はそう思っているから、スリープにしていてもディスプレーは閉じている。
 ところが、この思いに反してキーボードの使用感覚は最低だ。一時期Duoのキーボードがダメという烙印を押された時があったが、これは最終のType Fのキーボードで解決された。500シリーズを使用しだしてこの件でサイトを探すが、一向に見つからない。それなら自分でやるか、と今回手を下した。
 とにかく、ベースがペラペラでおまけにキーボード装着のビスの数が2本、そしてインナーフレームのスパーとリブの間隔が大きいから、一層ボンボンとタイプの毎に音が出る。当然カチャカチャという音なら気にもならないが、少しばかりグニャリとする、以前のAppleキーボードIIの感覚に似ている。この味は消せないが、少しばかりカッチリの方向付けは出来るのではないか、と考えた次第だ。
 それではテストケースとして、ボール紙を六つ折りにした台座をフロッピードライブの上とハードディスクサポーターの上に敷いてみた。
 結果はキーがしなっているように感じられたものが少なくなる。少しボンボン感は感じられるが、まぁ許容できる範囲になった。
 が、依然として取りこぼしは生じる。ボンボンという感覚はやわらげられたが、どうしてもキー作動そのものが硬いためにミス(取りこぼし)を犯す場合があるようなんだ。僕の540ではA、S、Kが特にひどい状況だ。敷いて言うと今のPower Bookのキーボードからすれば簡易なダンパー兼ガイドの合成樹脂とキーのプラスチックがあまりフィットしているとはいえないようで、この点がガザガザになってしまってスムースさに欠けるようにも感じられる。とりあえずは、この点を何とかしたい、と考えて思いついたのが、WD-40の塗布である。
 SE/30のところで出してはいるが、このWD-40は比較的オイル分が多く、CRC5-56などのように少し負荷のかかるところでは使えないのとは違い、潤滑を継続するようなところでもOKである。しかし、こいつは実に恐い液体でもある。
 Macのリペア本から引用すると、一体型のPlusなどのキーには直接スプレーできる。オートインサートのフロッピードライブの作動部分などはこいつで清掃潤滑が出来る。しかし、僕も失敗を経験しているが、Macのマウスの光学式読みとり部分の透明板は侵してしまう。ということになる。
 したがって、ゴムダンパーでフィルム接点方式のPower Bookのキーボードには直接スプレーできない。一度キートップを外して、綿棒にWD-40を吹き付け、そいつで塗布して組み込む。このぐらいの注意をして組み込めばOKになるはずだ。
 総てに処理を行うとローマ字入力なら少なくとも36個分をやらないとならない。この辺のところが時間と根気を要する。やるとやらないとではかなり変わる。一度おためしあれ。
 こういった調子で作業を行うのだが、嫌になるほどの時間を食う。ASCII配列なら気にもならないがJIS配列では外したキーが元の位置にない場合、入力がちぐはぐになる。僕は2回ほどミスした。
 とにかく総ての処理を終えてJeditでテストタイプすると、これまでの540cとはまるで違う感覚になってくるのである。以前のものとは比べものにならないほどタイピングが向上する。2時間の苦労が吹き飛んだ次第。
 しかし、いいことばかりは続かない。不思議なものでダンパーとのマッチングがスムースになると、キートップのエッジが隣のキーなどと干渉し始める。本来なら面取りを施すところだが、これは再度キートップを外してやってまっすぐに装着すると大半は大丈夫のようだ。根気のいる作業だがこればかりは致し方ない。
 ここで考え方・作業結果から考察すると、当然のようにキーボードの違いがまずは考えられる。写真でも分かるとおり、実に簡単な方法でキー入力が行われることになっている。キートップから純に白い樹脂製のダンパー、それを受ける(ダンパー兼)リターンラバー、そしてベース板となる。Duoは少し異なっているが、これはPower Book 100のときから連綿と続いている方法である。問題が生じるのは、ベース板の合成樹脂の材質とキーボード全体を受ける底板の強度にかかってくるように思う。そして、キーボード全体を受けるマグネシウムのフレームとのスパー、リブとのギャップなどが関わってくる。これはASCIIのキーボードでも同じだ。
 500シリーズならよく使うキーとして左のASD、中央のBNM、右のKIOというところがキーを打つと上下に動く度合いが強いはずだ。
 それにもう一点、信じられないようにも思われるが、中古で購入の場合は、前オーナーのキーの打ち方如何によってはキーの作動がおかしい、と思われるところが出てくる。これは確実に出てくる。気付かないが重要な問題である。
 それゆえの対策を僕が採ったという次第。

 これで十分にタイプできることと思った。何しろキーの上下の揺れも少なくなったし、叩き方入力(爆)の僕でも思いっきり叩く必要のあったキーがPower Book G3と同等にタイプできるようになる。
 が、ダメな部分が発覚し始める。今度はPTKの時と同じ取りすぎ傾向が出始めるのである。たとえば、jyoukyouとタイプすると「じょうきょおう」となるのだ。つまり「O」を二度叩くことになってしまう。
 接点部分かな?と疑ったが、どうも違う。何度もタイプする内にようやく分かり始めてきた。なんと、ボール紙を使ったスペーサーが絡んでいたのだ。そう、ベース板がフニャフニャしているのがキー入力不調の原因なんだ、と考えて行った対策だが、これが裏目に出た。もちろん、もう少しキーボードのベース板に強度はほしい。しかし、500シリーズのキーボードはDuoほどモデルチェンジされていない。このことはある程度キーボードのシナリを持たせてバランスしているのではないか、と思われる。Appleらしい心憎さかもしれない。
 で、スペーサーを外した。結果は良好。誰しも思いつきのようには行かないものだ。

▲入力で頻繁に使用するキーの総てのキートップをその列毎に順番どおり外す。
▲白い樹脂ダンパーがキートップといっしょに出てくるので、キートップから離しておく。
●白い樹脂ダンパーの中央のシャブト部分にWD-40を綿棒で塗布する。
●キートップのシャフトにWD-40を綿棒で塗布する。
●まず、白い樹脂ダンパーをキーボードのベース部分に装着する。
●キートップを樹脂ダンパーに入れて上からパチンと音がするまで真直ぐ押し込む。
●確認の意味で数回タイプしておく。

 入力漏れのキーの不調を解消して2週間、なかなか快調だ。これがいつもの使い心地なんだろうが、以前とは比べものにならない。ま、目出たし目出たしの結果であった。

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