嫌われもののPower Book 5300の真実

思 い出
 もう何年前になるだろうか、PB5300csのリワーク品が相当に出た時期があった。おそらく1996年頃ではなかったか、と記憶する。僕はDuoも何 もかも購入できない状況に陥っていた。あまりにSE/30とともに過ごしたMacライフが長すぎたし、過去のプロダクツの良さを再認識していた当時だか ら、次のメインとなるQuadra 700もその頃は無かった。家庭内の居場所とともに、これからはノートを職場と家とで共用しなきゃならないことになりそうだ、ということが薄々分かりかけ て いたときでもあった。OSは8.0から8.1がかなりの速度で普及してきていたし、インターネットもISDN・ダイアルアップが一般化していた頃だ。
 思いもかけず、そこへ当時の半額程度で5300のリワーク品が出たため、これ幸い、と松山のOAシステムプラザにて175,000円で購入した。すでに 2400がそこにリリースされ、いよいよ凄まじい世界に突入する矢先であったようだ。が、今と違って、どうしても遮るものが価格だ。これが多くのマック ユーザーの触手をPower Bookに伸ばさせなかったようだ。ほぼ40万円近い金額を出費する中での175,000円。10台あった5300のリワーク品が1週間の内にほと んどが出てしまう、そんな中での1台を購入したのだ。同封物は全て開封されているが、全部未使用という不思議な内容で購入し使用が始まった。

最初の問題点から
 一番最初に来たのは液晶画面のちびまる子ちゃん現象だった。ディスプレーの下半分に縦縞が入ってしまうのである。この修理に3万円ほど費やした。例の対 面修理ショップ、場所が近いため輸送した大阪での修理になった。1か月保証の期限が過ぎているので、この時点でOA システムプラザからは縁が切れる。
 修理から帰ってきてしばらくは良好に使えていたが、ご多分に漏れずヒンジ部分の割れが発生。ディスプレーを開けるのが恐ろしくなってくる状態であった。 そして再びちびまる子ちゃん現象。
 どうすることも出来ず修理。送った先は東京出張の時立ち寄った、今は無きパワーラボの八重洲店だった。ここで5万円ほど必要だったが、今後のためにアッ プルケアに加入する費用も含めてでのことだ。バカげたことだが、これが大いに助かることになる。リワーク品でもすでに僕と同じような経験をしている人たち が多いことを聞く。

戻ってきて驚いた
 パワーラボへどれだけ電話を入れただろうか。いつになってもマシンが修理から戻ってこないのである。アップルケアへ加入した後なので、アップルへ修理を 出しているのだが、どうなっているのか不明であるとのことだ。
 待つこと1月。ようやく戻ってきたマシンを手にして唖然としてしまった。全く新品になっている。確認の末、筐体がアセンブル先のアメリカになっていて、 シリアルはもとのものを再貼付されていた。ディスプレーのヒンジ部分も全くの別物。狐につままれたような中で再び使用が始まった。

売却に至る
 すでにDuo 2300cがそこへ一気に流れ込んできた。当時のことだから、僕はDuoに夢中になってしまって、インターネットもこの機種から開始したところである。
 すでに、OSは8.5になって来だしたし、3400から発展のG3マシンが登場した頃を迎えていた。何かが大きく変わろうとするとき、5300が疎まし く思えて来始めたのだ。運良く使いたいという人がいて、何もかもが新しくなって、メモリーもアップしていたが、ほぼ最初の価格から2万円の損(現実には ▲120,000円?)であっけなく僕の5300はその方のところへ運ばれていった。

それでも何かがある
 映画インデペンデンスデイに5300cが登場する。Appleも大々的に紹介した。既に巷では5300ではなく1400の世界になっていた。カラーはグ ラファイト系で統一されてはいたが、1400にはミスしたようなところが無く、売れ行きは非常に好調だった。
 僕のこの頃はNewtonに首ったけの時代だったし、そんなにMac自体に興味を示すようなものもなかった時代だった。あまり突っ込んではいなかった が、知らないままでDuoを使い続けていたようであった。
 そんなとき、190を触ってみて唖然としてしまった。台湾アセンブルの本機には5300で不評だったものが一切無くなっている。特に筐体とキーボードは なかなかいいものを持っていた。そのマシンはすでに売約済みだったし、あのOA システムプラザで見つけたから、何かイワクがあるのではないか、とも感じられたが、時は既に完全にG3の時代に突入していた。
 僕も最終目的のような気分でPismoを購入して今に至っているが、Pismoの最初の不具合で、Mt.Mouthさんへ修理に出したとき、そこへ不動 の190csを見つけ、譲っていただいた。台湾メイドで、以前触ったものと変わりはなかった。
 5300のロジックをこいつに入れてやったら再び動き出す、と考えたままで、尻すぼみになってしまっていたところであった。もしかしたら、という気分は 500シリーズを手掛け始めてから一層深まっていた。
 それに一時期だが、ディプレーのヒンジ部分に取り付けるギプスが入手できることをヤフオクで知り、5300のことが急浮上してきたわけである。

だだっ子が再びやってくる
 あれほどまで痛めつけられ、僕自身も二度と手にしないことにしていた5300cs。事実小誌にもそういって記載してきた。そんな気分の僕だったのだが、 どう いったわけか5300の相場が下がらない。全く不思議な現象である。csだと通常は6,000円ほどだ。オークションでも強気なものは8,000円ほどに なるのも ある。
 問題はディスプレーのヒンジ部分。この部分が写真などではほとんど不明なのである。500シリーズのフロントパネルの状況とは違ってなかなか分かりづら い。特にディスプレーを閉じ状態の後ろ姿が少ないのである。
 今回の買い物はどうか、というと不安は拭いきれない。ただ、出された写真ではACアダプターに接続しないで起動している。ということはバッテリー関係が 活きているという証拠だ。これはぜひ落札しておいた方がいい、という考えが頭を巡り始めた。
 時に2003年11月4日の午後、職場でウォッチリストにアップしておいた。11月7日入札締め切り日、一向に金額が上がらない。評価の中でおかしげな 問答が出ていた。このことが引っかかってはいたが、ま、大多数の方々がいい評価を出品者に与えているから、まずは落札へ向けて奮闘する。が一向に上がらな い。以前のPower Book 100の時と同じだ。
 で3,900円で落札。出品者の方の素っ気ないメールのやりとりからして、どうも外国の方であるため、お国のやり方を日本でそのまま行ったために反発を かったのだろう。それ故の「悪い」コメントのやりとりであったのか、を納得。
 いざ、届いてびっくり。綺麗なこときわまりない。バッテリーも活きている。とりあえず分解してみて、パーツが1977年5月を記していた。つまり、ほぼ 最終ロットということが分かった。750MBのIDEハードディスクも薄いタイプになっているし、何かに付けて最後のロットのようだ。
 残念ながら、ディスプレーのボルトキャップが一つ無いのと、ヒンジ部分の関係から、パームレストをディスプレーの止めフックが引っ張り上げている。やは り、ヒンジのスプリングを何とかしなければならないことが分かった。

全体を通して
 まずは、このガタ何とかなりませんか?。ディスプレーを閉じた段階だと、フック がかかるパームレスト部分が浮き上がる。明らかにヒンジのスプリングが強すぎるために起きる現象と断言できる。
 とにかくこの部分を何とかしなくてはならない。実際に行うのは手持ちの190のヒンジと交換すること。もし、3400を持っていらっしゃるのなら、その ヒンジと交換するのが一番手っ取り早い対策だし、特に3400ではヒンジ交換で3400、1500ともに好結果が出るのではないかだろうか。何時の時代か 忘れたが、MAC POWER誌にこの記事が出ていた。
 僕の場合はこの改造はできるし、パーツを取り寄せれば可能だが、一般にはほとんどできない世界だろう。バネレートを変えるため、スプリングを交換しても ダメではないだろうか。
 そこで登場するのがギプスと呼ばれるものだ。取り付けなどは商品としての著作に関わるため割愛するが、これを装備すると完璧になる。しかし、運良く購入 できなければ絶対に無理だ。こ れをアルミで代用できない。薄い鉄板を切り抜いて云々では中古の 5300csが2台以上購入できることになってしまう。
 次にダメになる点はクリック部分だ。これもギプスの説明書にあるとおり。これをやるとなかなかいい状態になってくる。
 いずれ起きるのがACアダプターとの接続部分だ。これは1400のもの、つまり現在の形式になるまで待たなければならない。
 実際、これらのちっぽけなことで5300が不当に低い評価が下されるのはつらい。

メモリー部分
 このメモリーのセット方式も疑問だ。できれば、ここはテープ止めを施したいが、強力なものでは後々の問題が出る。キーボードが押さえることを考慮して、 メモリーのボード下にスポンジ状のものを貼って、上側は絶縁材にテープ止めする。

キーボード取り付けビス
 この部分にはトルクスビスの頭がトラスになっていない。そのため、中心部に締めつける力が働いて筐体の底抜けをきたすのである。過去多くの5300がこ の部分をダメにしてしまっているのを見た。
 この部分にはワッシャーを1枚加えることでかなりの改善が出来る。本来はネジ専門店へ出向き、トラスのものを購入してくるのが最良の方法だ。必ず1本見 本として持参すること。ピッチはご多分に漏れずISOではないし、メートルでもないようだから、DIYショップでは購入が難しいと思う。

この時点での考察
 実際5300はどういった位置づけなんだろう。欠点ばかりが先に立ってしまったが、真の実力などはどういったものがあるのだろう。ベンチマークなどでは 決して現れない5300が持つ魅力とは何だろうか。僕の5300で検証してみよう。
 スペックは603eの100MB、メモリーは24MB、ハードディスクは750MBだ。この状態でクラリスワークスとかエクセルとかを使うと、Duo 2300cよりも快調さが先に立つ。今のレベルと較べるのは酷だが、スピードはなかなかのものを感じることが出来るのである。
 全体のたたずまいとしても、現在使用しているPPC 520cよりもディスプレーの状況などが自然だ。1400はもう一回り広いが、5300でも過不足ない範囲だ。
 こういった状況でしばらく使っていると5300の非凡さを感じるのだ。全く不思議な世界である。が、そう、ほんの数カ所の欠点がこのモデルを大きくダメ にした。一つは幾度も記載するが、ディスプレーのヒンジ部分から来る筐体(ホルダー)の材質上の弱さ。もう一つはACアダプターのコネクター部分の細さ。 この二点が 5300シリーズの大欠点であった。

ギプスの取り付け
 あらかじめ190のヒンジ金具を取り付けたのであるが、抜本的なものは変えようがない。もちろん、リターンスプリングが弱い、ということは分かるが、交 換したところでおそらく同じように確実性が増すわけではない。ホルダー自体も3400とは大きく異なるので、どうしようもないのである。
 というところで、今回はギプスを着用することとして、その結果を出したい。あらかじめ申しておくが、5300の延命措置ではないし、かといって、名誉回 復でもない。単に「結構使いやすいフロッピードライブモデルの行き着くところのマシン」として、今の時代もフィットするのですよ、とした、使えるモデルの ためにギプスの装着を行うのである。



取り付け作業
 すばらしいマニュアルに沿って作業を開始するが、実は悪戦苦闘。それでも何とかいけるところまでになるまでに3時間。理由は簡単、まずは元に戻せないこ とによることからの十分な作業と確認を要したからである。詳しくは製品の都合もあって申し上げることが出来ない。写真でご容赦願いたい。
 画面側の筐体も樹脂のリブ、取り付けナットなどを切り落とし、液晶内部のシールドなども取っ払う大胆な変更を加え、大小のL字型金具をディスプレーユ ニットに取り付け、それをカバー側の筐体の一部として取り扱う改造である。
 

使い心地
 いやはや、恐れ入りました。最初にお見せした部分はやや良好、というか、本来はこういった状態になってしかるべきものなのだが、現実にはそれが上手く行 かなかった。
 ギプスを装着して始めて解ったことなのだが、ディスプレー部分のホルダー(筐体)が樹脂製のみで、ディスプレー本体のフレームを補強の一部として使って いるため、ヒンジの左右がねじれる。したがって、ディスプレーを開けるとき、どちらかに力がかかり、それが繰り返される毎に、筐体の弱さからヒンジの開度 がずれて、そのままの状態で閉じられるから、ヒンジの左右バランスが崩れることになるわけである。もちろん、フック自体がセンターにあれば申し分ないのだ が、設計上出来なかったのだろう。
 ギプスは筐体に補強を加えることによりこの現象を最小限に抑えるわけである。何とも素敵な状態、しかも格安で入手した5300csが、今ようやく使える 状態 になった。



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