eMate 再びバッテリー(2002年12月現在)
 eMateにサンヨー製の1700mAhのニッケル水素電池単三型を4本購入し、快調に作動できていた。わずか4回の充電で、不思議な現象が起こった。
 以下はこの不思議発見的な報告である。「当たらずも遠からず」として参考にしていただきたい。

 eMateに使っていた東芝製のNi-MH乾電池をサンヨー製の1700mAhにリプレースしたことは以前に申し上げた。簡単に報告すると、以下のようになる。

東芝製の時は下記の状況で使用していた。
項   目
状   態
使用バッテリー
東芝Ni-MH 円筒単三タイプ 1600mAh
充電器
Apple純正9Wタイプ アダプター
チャージランプ変化時間
およそ1時間20分

●この状態でおよそ2週間使用できていた。
●ただし、数時間使用して、直ちにインジケーターの黒い部分はスケールの3/5程度に下がる。
◆時間・期間併用で大変申し訳ないが、5時間〜10時間の範囲内で使用可能、という状態であった。
◆これで3年間続いたが、少しずつオリジナルバッテリーと同様、ダメになっていくことになる。

 どうもバッテリーの状態がおかしい、として、バッテリーを様々なものに交換し、テストを重ね、ようやくのことで、サンヨーの1700mAh Ni-MHに交換し、センサーの配置を検討して良くなった、と前回報告したところだ。

 ところが、サンヨー製の1700mAh Ni-MHバッテリーを使用して、東芝製の時と同じように充電を行っていると冒頭申し上げたように不思議な現象が起こったのだ。
 僕の電気知識に乏しい頭をフル回転して原因究明を行ったのだが、所詮は家庭内マニュファクチュアのアマチュア、3回の充電を行っての、いわば実験結果だけを頼りに結果を纏める行為しか出来なかった。

 まずは、サンヨー製でこのような結果に至った過程を纏めてみた。

1回目の充電
項   目
状   態
使用バッテリー
サンヨー製Ni-MH 円筒単三タイプ 1700mAh
充電器
Apple純正9Wタイプ アダプター
チャージランプ変化時間
およそ1時間20分

 各セルの残量がバラバラであったためか、東芝製と同様の結果であった。ただし、ディスプレー右下のインジケーターで、急激な残量の減りは見受けられなかった。
 使用期間はおよそ2週間程度であった。

2回目の充電
項   目
状   態
使用バッテリー
サンヨー製Ni-MH 円筒単三タイプ 1700mAh
充電器
Apple純正3.5Wタイプ アダプター
チャージランプ変化時間
不明(充電時間は約10時間)

 ただし、今回は夜間に行ったために朝まで接続したままの状態にしてしまった。この時の充電では、Dates、Notesの記載とポーカーのゲームなどに使用して、実に1か月以上バッテリーで作動できた。

3回目の充電
項   目
状   態
使用バッテリー
サンヨー製Ni-MH 円筒単三タイプ 1700mAh
充電器
Apple純正9Wタイプ アダプター
チャージランプ変化時間
およそ1時間20分

 現実には機構的に何かあるのではないか、と感じ始めたのはこの頃だ。eMateの場合、バッテリー4本、4.8Vで全てをまかなっている。センサーの作動状況は温度感知が主、ということが数人の愛好家の実験で知られている。
 残念ながら、今まで僕はeMateのロジックそのものの解剖図、回路状態などを把握していないし、ここがこうなって、あそこは?、という日本語の技術レポートを知らないままでいる。
 したがって、主にバッテリー関係だが、アマチュアの僕がこうやったら、こうなった、という考察を加えた形で現在まで報告をしてきた。何度も言うが、数字としての理論と実際から実験の結果を導き出せてはいない。
 こういったことを前提として、今回の結果を見てみると、一つピ〜ンと来たものがある。それはバッテリーと充電器(アダプター)、それにeMateとのマッチング、そして、センサーの作動である。中でもバッテリーの特性と充電器のマッチングに何かあるのではないか、ということが少しずつ解決され始めてきた。

 実際の単三型Ni-MHバッテリーのスペックはどうなんだろう。手元にあるのはGP製バッテリー(Ni-MH 単三型)のスペックである。これは公開されているので、転用して記載する。
急速放電
5100mA(3C)
急速充電
1700mA 1時間(ーΔV制御)
標準充電
170mA(14時間) 425mA(5時間)
大 容 量
1800mAh(標準容量) 1700mAh(最低保障値:0.1C)
  (0.1C)で放電   1600mAh(0.2C放電)

 いかがであろうか。eMateの場合、どうも充電時間が少しばかり短い。過充電まで行かない急速充電を仮定しても短い。
 そうすると、センサーの働きは何なんだ?、と考えてしまう。そこで、3回行った充電結果から考察すると、2回目の充電が一番いい結果を残したことに気づく。
 と、なるとバッテリーか?、いや、そんなことはない。通常は1時20分で充電完了のグリーンランプが灯る。これでいいはずだ。

 確認機器もないまま、どうやってeMateにおける充電時間と充電器の関連というか、マッチングを調べればいいのだろうか。そしたらセンサーは... ?。エ〜イ、頭の中が混乱してくる。もう一回整理をしてみることとする。
 とにかく、一番の問題は充電器だ。ここから考察を始めることとする。
●純正の9Wアダプターのスペックは次のとおりである。

インプット
100-240V 20〜30VA
アウトプット
7.5V-1.2A
備  考
トリクル充電の機能があるかどうか不明

 
▼純正のMP120、130用の小型アダプターのスペックは次のとおりである。

インプット
100-240V 15VA
アウトプット
7.0V-0.5A
備  考
トリクル充電の機能があるかどうか不明



(実際の大きさは、上記9Wタイプの1/2程度)

トリクル充電とは?
 「低電流で長時間にわたり充電する方式」と通常の自動車用バッテリーなどでは言われているが、COMPACのQ&Aでは次のように謳っている。

● トリクル充電とは?
 蓄電池は微少ながら自己放電を行います。蓄電池の性能劣化を引き起こさずに満充電状態を保持するために行う充電方法です。微小電流による充電で、C/20〜C/50程度です。


 僕としてはコンピューター関連ではこの方式の充電システムを本体とソフトウェア、および充電器(ACアダプター)が持っているかどうか、ということにある。
 今のPower Bookeのアダプターはこの機能がある、と思われるが、eMateとかメッセージパッド(以下MP)が採用しているかどうか不明である。
 市販のNi-MHバッテリーはどういったものか、GP製のスペックでお分かりだろう。したがって、上記の純正アダプターにこのトリクル充電装置が組み込まれているか?、ということは、あえて不明とさせていただいた。
 東芝のホームページから、自社の充電器でApple純正と近似値なマルチタイプはTHC-34GH、これでの1600mAhの単三型バッテリー4本分だと次のようになる。

インプット
100V 3VA
アウトプット
1.2V-0.45A
備  考
充電時間は200分で急速充電タイプ

少しずつ謎が解明できてきたような気がしてきだした。

・宇和のT君に問い合わせてみると、バッテリーの最高稼働率とかいったものの数値はボルテージに√2を乗じたものになるらしい。
・そうなると、4.8V×√2=6.79Vとなる。つまり、単純に、この辺の電圧値に近い数値で作動するシンプルな充電器が必要だ。
・次にバッテリーのスペックに要求させるためには、0.42Aで5時間のスタンダードな充電時間が必要になる。

 そうすると、バッテリーと充電器の兼ね合いからすれば、純正のMP120、130用の小型充電器(アダプター)の方がフィットしていることになる。
 もちろん、9Wアダプターのアウトプット数値は充電器の特性として、搭載してある純正のバッテリーなら大丈夫ということになる。
 このアダプターはもともとがMP2000、2100用に開発されたもので、たまたま同じバッテリーセルを使用していたであろうeMateにも使われたものと思う。先に申したトリクル充電機能については不明だ。

●この考察から、2回目の充電の結果の裏付けが一部出来た。

 しかし、肝心のセンサーとの兼ね合いはどうなっているのだろうか。
 eMateのバッテリーセンサーそのものは温度センサーということは分かっている。通常は、+・−の各端子をニッケル板で溶接したバッテリーセルの表面(背中合わせの谷間)にセンサーの頭部分をアルミテープで固定し、長めの足の部分を耐候性のあるセロテープで固定したものを、ヒシチューブで熱収縮ラッピングしてあるのが純正のバッテリーだ。
 しかも、これが合成樹脂のケースに収まってeMateに収納してある。TAKAHARAレポートからバッテリーセル自体は東芝の1100〜1200mAhのNi-MH単三型である。(物はドイツのファルタらしいが)
 この状態で、純正の9Wアダプターを使用して、およそ2時間程度で(グリーンランプが灯って)充電完了となる。

 TAKAHARAレポートでも、僕のやった実験でも、こういった状態になった。唯一違うのは何か?。それは、バッテリーセルが(充電中)暖まっての温度である。カンのいい方はお気づきであろう。温度センサーは温度センサーとしての役目しか果たしていない。
 僕が実験をしていないこととして、バッテリーセルのみを交換して、元どおりにラップしてケースに収めた状態で充電をしていないことが上げられる。この点は如何ともしがたいが、ひいき目に見ると、おそらく純正のバッテリーと温度センサーと充電時間は密接な関係を持っていた、とすることが出来る。
 が、一定時間経過すると、必然的に「バッテリーがダメになる」として、交換を余儀なくされるのはどうしてだろうか。大半のNi-MH電池は数百回、1700mAhでは500回の使用が可能と謳われている。純正バッテリーを搭載したeMateを通常の使い方をして、本当にこういった数百回という使用回数をこなすことが出来ているのだろうか。
 実際はこのようにならない。相当に早い時点でバッテリーが使えなくなる。そうなると、バッテリーメーカーには申し訳ないが、この公称数値はウソということになる。
 充電完了のサインで使用しているにもかかわらず、少しずつバッテリーがダメになっていくのはどうしてだろうか。再び疑問が浮かび上がる。


 再びT君へ問い合わせると、とんでもない答えが返ってきた。
 何と、温度センサーは外気によっても相当に左右される、ということである。僕の実験結果が間違った方向ではないものの、僕が行った改造では、バッテリーボックスに収められたバッテリーセルはベア状態である。過去、アルミテープ部分がスポンジクッションに触っていたり、アルミテープの上にセンサーを置いて充電した場合などの結果が、それを物語っている。
 結局バッテリーボックスを使用して、センサー配置も固定方法も純正の状態に近いが、バッテリー全体が発する熱はもとより、eMate内部の発生する熱も、(部屋の)外気も全て含んだ中でセンサーが作動するものであることが想像できる。
 もう一つ、センサー自体の特性として、僕の想像だが純正バッテリーのセンサーはバッテリーセルにおける温度管理と充電時間の兼ね合いから決定されたものだ。つまり、9Wのアダプターで2時間程度の急速充電で充電完了、とされたものではなかったのか?。
 そうなると、バッテリーセルが違い、ベア状態のバッテリー部分で、ほぼ均一された1時間20分でグリーンランプが灯っても、実際は充電を続けているのではないか?

 ふたたび元に戻って考え方を纏めてみると、バッテリーセルの充電スペックに合わせた充電器と充電時間が必要である、という結論が導き出される。
 おそらく、充電器とバッテリー特性の二点をほぼクリアー出来る状態なら、僕のeMateのような改造でも確実に初期性能はキープできる、と判断し、2回目に行った方法とほぼ同じにして4回目の充電に取りかかった。

4回目の充電
項   目
状   態
使用バッテリー
サンヨー製Ni-MH 円筒単三タイプ 1700mAh
充電器
Apple純正3.5Wタイプのアダプター
チャージランプ変化時間
1時間20分程度
実充電時間
5時間

 実充電時間の5時間はApple純正の3.5W型のアダプターを使用したので、「0.425Aで5時間」というGP製のバッテリースペックに準じての設定である。
 結果は、あまりにあっけないが、全てが良好に作動している。

 今回の実験で分かったことは次のとおりだ。

1.バッテリーを市販のNi-MHに交換した場合は、バッテリーのスペックに合わせて充電を行うこと。
2.充電完了のグリーンランプが出ても、バッテリーのスペックに沿った充電時間を取ること。

 実はこのことが最近まで知られていなかった、というか、メーカー(Apple)側でもeMate、メッセージパッド、Power Bookにおいても、バッテリーの特性と充電器(アダプター)の関連を大きく取り上げていなかった、とすべきであろう。
 そして今、Power Bookがリチウム・イオンバッテリーになって、ようやくにしてこれらの問題の80%は解決されたように感じる今日この頃である。

 今回のまとめと思い入れは次のようになる。
1.についてはおよその近似値のものを用いればいい。
2.については、グリーンランプを信じ切ってしまうと、おそらく、バッテリーのメモリー効果が作用して、数十回しか満足な充電が出来なくなる可能性が高い。

 純正のバッテリーはおそらくこのメモリー効果で使えなくなった、と処分されたものが多いはずだ。
 いつも言う、バッテリーケースから外して電球を点けっぱなしにする方法とか、デジカメに入れて放電させる方法を行ってみられるといいのだが、これがeMateとかMP120、130では行えない。

 もし完全放電に近い状況に追い込むには、「充電しろ」というダイアログを2回出すことだ。2回目が出た時点でバッテリーの性能に準じた充電器(アダプター)で充電を行うことが大切であろう。ただし、急速充電をやると元の木阿弥になりかねない。

 前回での報告ではセンサーをショートさせたり、水で冷却もしたが、立派にチャージランプはオレンジからグリーンに変わるため、影響はなかった、と確信する。

 現在、サンヨーから2100mAhの製品が出ている。これをMP130で使用している。以前の東芝製が使えなくなったのは、おそらく、メモリー効果であろうと思う。
 理由は簡単。センサーが無い代わりに、MP130ではバッテリーボックスの中央に突起があって、基板上のバッテリー認識スイッチを押すようになっている。この回路はおそらく時間センサーと電圧検出センサーを兼ねているのであろう。決して(バッテリー側の)電流検出センサーではない。MP130でチャージングステーションを使用して充電した場合、グリーンランプが点灯するのは時間にして2時間だ。
 しかし、最初の充電という手前、時間延長してみたところ、バッテリーの容量は格段に上がる。このことからも、大半のセンサーは機器に合わせたバッテリー側の電流検出センサーではない。このため、2時間でグリーンランプに変わっていても、メモリー効果で充電ボルテージが高められるから、すぐさま「バッテリーを充電しろ」のダイアログが出るのであろう。
 eMateと違い、MP120、130ではバックアップ用のボタン電池を搭載しているが、オリジナルのPower Book 100と違い、通常の場合はこのバッテリーがメインバッテリーに一部置き換わるという回路は設定されていないようだ。

 eMateもMP130も2100も過去の製品だし、こういったことをやってみて時間を費やすのは今の時代では何と言っていいのか分からない。それでも僕のようにこういった機器を愛して止まないユーザーは世界に沢山居る。
 システムもメモリー内部のモノも、そう簡単にクラッシュなどしない。Mac OS Xになって、Macもかつてのようなことがほとんど無くなっている。Newtonの基本は当時からしっかりしていたのだ、と感じている。こういったPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)の開花期はもとより、ハンドヘルドコンピューターとしての基本を確立した機器として、何とか今の世界でも使える状態で使いたい。使うと実際便利なのだ。こういったことで、MP130などは毎日僕と一緒に行動している。堂々巡りだが、こういった理由から、あれこれ行っているわけである。

 もう一点の理由付けは、Power Book G3 ('99 '00モデル)のバッテリーの中身を詰め替えるリフレッシュ作業が敢然と行われている。以前紹介したように、アメリカではMP2000、2100ではバッテリーケースがサードパーティーで製作され、市販のNi-MHの単三電池が十分使えるようになっている。
 このように、僕は愛らしいeMate(もちろんメッセージパッドも)をいつまでも使うという意味で、バッテリーケースを利用した入れ替えバッテリーの製作を紹介したり、MP130(120)のバッテリーセルの入れ替え方法などをやってきて今に至っているのであるが、ようやくにしてバッテリー関係は解決できたように思う。

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