ヤマハNS-15のこと(その1)

壮 大なプロローグ
 1967年、私がちょうど高校1年製の時でした。私自身は家が手狭になった(私が成長した)関係で近所に家を借りていて、そこで寝泊まりをしておりまし た。4畳半の勉強部屋だけでしたが、日当たりの悪さを除いて、なかなかいいものでした。
 ちょうどその頃、私のオーディオはビクターのSEAを導入したモジュラーシステムに、山水の小さなスピーカーで楽しんでいました。その前はビクターのス テレオレコードプレーヤーでした。この頃が私のオーディオの黎明期ですね。
 ちょうど、その頃からヤマハがオモシロイギターなりをリリースしはじめ、ついにはエレキギターのSG-7などの名品が出るのですけど、何もかもが順調に はいかなかったのです。特にオーディオ関係は不思議なほど注目されませんでした。オーディオが超有名になるのはNS-1000のスピーカー、GT- 2000のレコードプレーヤーなどからで、はっきり言って、それまでは鳴かず飛ばずの状態でした。
 が、エレクトーンは好調で、まるでハモンドオルガンのような音を出していました。このスピーカーこそが、発泡スチロールの振動板をヤマハのグランドコン サートピアノのような形のスピーカーだったのです。これ1発で結構いい音が出ていたのを思い出します。ホントに壊れないんです。スピーカーがダメになって エレクトーンを買い換えなどは存在しなかったように記憶しています。
 私は別段このスピーカーを意識したわけではなく、スピーカーはもっぱら山水のLE-8の一発ものを狙ってました。だから、この発泡スチロールの平面ス ピーカーは気にも気にもとめなかのです。

当時のオーディオ
 あの頃から随分と時が流れました。音源メディアもアナログレコードから、オープンリールテープ、カセットテープなどから、CDの世界へ吹っ飛んでしまい ました。1982年頃でしょうか。当時の公会堂大宮ホールの会議室でソニーのCDデモがありました。
 妻と出かけて、雪のシンシンと降る音、それの歌舞伎での太鼓のばちさばき、山口百恵がフッと歌い出すシーン、私あっけにとられましてね、何がどうなった のか判らないこととして捉えてしまいました。価格を聞いたとき、即座に購入はできなかったのです。
 これからのオーディオとしては、スピーカー、アンプともどもこの銀色の円盤に込められた音を如何に音楽としてリスナーに届けるのか、相当な問題を含んで いるな、と思ったものです。相当に製品化されたソニーの最初のCDプレーヤーですし、その音を聞いていたため、以後雑誌などで紹介された「耳にきつい音」 などのイメージは全くありませんでした。
 ところが、レコードプレーヤー同様に、CDプレーヤーも良からぬ方向へ向かってしまうのです。現在でも多数いわれていることで、巨大化、高額化、精密化 の一方、極小化、定額化、乱雑さなど、CDに対して懐疑的なところも未だ存在しつつも現在を迎えています。
 一方ではFLACなるハイレゾの世界が蓋を大きく開け、CDは音楽配信に破れてしまいました。一方ではカセットテープが未だに存在し、アナログレコード ディスクが再び注目され始めているのが現在(21世紀初頭)ではないか、と感じます。

2015年の今
 そういった今、スピーカーはマジ、「どうでもいい」のと「絶対にこれ」、に別れてしまっているように感じます。スピーカーを駆動するアンプも意外にラフ な作りのものがいいアンプになったりしますし、緻密なアンプはCDの周波数特性から遠慮される向きもあるようです。
 かく申す私はCDの製造国違い、CDとアナログディスクの音の違いなど、結構投資をして確認作業を1990年代後半から10年ほどやってみました。
 この問題に対して一撃を食らわせられたのはFLACでした。MacにXLDのソフトウェアをインストールして色々な音源を変換して楽しんでいます。ここ 最近になって、このデジタル音源のモロモロを断ち切るにはFLACしかないのではないか、と思い始めたのです。
 が、この音として聞こえる部分は今の私にはイヤフォンだけなんです。すっかりオーディオのバカらしさが先に出てしまって、今さら大きなシステムでもない だろう、という考えが先に出てしまい、iPodとイヤフォンの組み合わせが一番自然に聞こえるのです。ちょうどそれが2014年の当時だったのです。
 この頃、友人達が意地になってスピーカー、プレーヤーなどを漁っているように見えたのです。その前に目指す音というのがあるでしょ、と私は諭したのです が、そんなのは気にならない様子。果ては、くだらないアンプは一切換えずにQuadのコンデンサースピーカーを鳴らす始末。
 FLAC、CDよりDVDの方が音がいい、何かおかしいのではないか、とも感じ始めていたとき、このヤマハのスピーカーが浮かんだのです。未だに一部マ ニアだけに愛用されているのですけど、思えば巷にはない。世の常ですね。
 しかし、現在流行りのシステムで鳴らされている方々のブログなどを見ますと、このスピーカーの素性の良さを解って使っているのではないか、とまで思えて きたのです。

Getする
 数台ヤフオクで逃してしまいました。どうしてもこれ!!、というのが出ない。この状態が数か月ありました。これぐらいかな〜、と思えるのはありました が、どうもベースが弱そう。やはり、ある程度の大きさとエンクロージャーのつくりなどから、NS-15をターゲットとしたわけです。
 としたとき出ましたね。微妙にOKなのですけど、ジャンク扱いなんです。音が出ることは確認されていました。スタートがべらぼうに安い。何かありそう。 時を狙っていたかのようにNS-10の綺麗なのが(数が少ないので)レアって触れ込みの40,000円。私も考えましたよ。でも、何かピ〜ンと来ないんで す。妙なものですね。普通なら綺麗な方へ動くはずなんですが... 。
 さて、始まりましたね。最終日当日、上がるは上がるは私もトコトンやれ!!、になってしまいました。で、結果は延長が3回ほど。相手は少しずつ上げてき ますから、最後の最後に2度打ちをやってしまいました。結果としてこれが良かったように思います。
 落札した後、出品者から異例とも思える金額での落札で恐縮ですが、の連絡。そりゃそうでしょうね。私も現物見てビックリしたのですから。訳知りの人には ジャンクではあるけどジャンクではない。音が出ると完璧なんです。何しろ数がないのですから...
 ものが到着してすぐには
ゲーッ!!、何これ?!、
というそれほどの梱包でした。頑丈ではありますがハダカの梱包だけですから、Kは荷物として受け付けてくれなかった、というのが解るような気がします。お まけに、梱包材がダイレクトにエンクロージャーに貼りつけてあるのですから...
 そのストレスから解放してあげたい、とすぐさま梱包を解きます。やはり、ジャンクかな?、と思いましたが、エンクロージャーの状況はさすが世界のヤマ ハ、と思わせるに十分でした。磨きをかける前に、全体のクリーニングが必要ですが、これは後でやることにします



 とにかく、このスピーカーの素性を把握している人にはNS-15、20、30でなければ本来の音は出ない、というのが解る瞬間です。後方のバッフルの開 放は理解出来ますが、エンクロージャーにも穴が開いている理由も同じようにわかるはずです。それが施してあるのがNS-15以上なんです。



 しかし、スコーカーの丸いスピーカーが後ろ向けに装備しているNS-30は後方にかなり大きな空間が必要です。そうすると、このスピーカー特性を御する 性能を持ったエンクロージャーを持ったミニマムはNS-15ではないか、と考えるのですが、いかがでしょう。
 若干、(それ以上か)違いのあるBOSEの802のスピーカーがどの向きが正しいのか?で論議する必要もありませんけど、NS-15はスピーカーの後ろ に30cm以上の空間を有して設置すべきでしょう。仮にそれを0にすると、このスピーカーは死にます。本当にツマラナイ音しか出ません。
 当時、そういった使い方しかできなかったため、このスピーカーを潰してしまった、というのもあながちウソではないな、とも感じます。小さなこの手(NS -)のスピーカーは壁掛けまでになって、実際そう使われた家庭もあったようです。

音出してみると
 いずれにしても、「音出しベル」のテストをやってみました。いつもながら、2A3シングルのメインアンプにダイレクトにiPhone4sをダイレクトに 接続します。どうしてか?、iPhone4sにはFLACの音源が入っているからです。



 ブーンとハムが出ます。BOSE101MMとは違う、素直なハムノイズです。アッテネーターレベルは中立。驚きましたね。音が出ないんです。接続も確実 です。エーイ、アンプの入力ボリウムを最大にします。あれ〜?、ブ〜ンのハムのイズがイヤらしくないぞ。何だ何だこれは... 。私自身もこれまで経験したことがない気分です。このアンプではこの程度だろう、という気分になります。ストレートな低帰還のシングルアンプで、これだけ ですから。いきなり、She Loves Youです。
ガーン、何これ?。
 バスドラムの後が聞こえるじゃないですか?、今まで聞こえなかった音が聞こえるのです。モニタースピーカーでは聞こえなかったような音までこの小出力の アンプで出してしまうのです。全くおかしいのです。私が素直なスピーカーとしていたハーベスHLでもポリプロピレンウーファーはコーンが強すぎる。で、ア ンプの出力を大きい者にすると、他の音も一緒になりそうでしたから、アッテネーターなしなので制御不能になります。
 NS-15のアッテネーターは同じ位置です。30分ほど過ぎたでしょうか、このポン煎餅のあらゆる部分から音が出てくるのです。この瞬間でした、これは NS-15という音楽ソース再生楽器じゃないか、と思えたのです。
 立ったまま、iPhone4sのiTunes音楽をあれこれ楽しみました。というよりは、次々に聴きたいのです。いつまでやるのでしょうか。とうとう⒉ 時間ほどドライブしてしまいました。
 いやはや、おどろきました。上杉アンプを購入してスピーカーに対して横向きに座っているのに、前から音が聞こえてくる経験をしましたが、これに似ている ような気分になりました。

続 く


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