マグラの油圧クラッチ取り付け騒動記(その2)

 明けて12月24日の日曜日、この日は朝から何やかやはないまでも1日 中テレビの守をしていた。ことに、高校駅伝は男女とも見つつ、その次はディープインパクトの最終レースの天皇賞。ここまで見続けた後、ようやくマグラの油 圧 クラッチの確認を行った。

 この時点での疑問点は、何あろう、「カムレバーのリターンスプリングをはずすこと」と、説明書に記載がしてあることであった。おまけに、僕の場合はダイ シンの乾式クラッチが装着されている。このプレッシャープレートにはアウター側からも遊び調整をする改造が施されている。
 つまり、右のクランクケース側に専 用の金具がプッシュロッドに当たるのはノーマルと同じだが、アウターにも同じようなアジャスターが装着されているから、その厚み分だけ遊びが無くなるた め、現実にはリターンスプリングを付けていようがいまいが関係ないというのが、僕の出した結論だ。
 そうすると、今の取り付けでは完全にスレーブシリンダーからのロッドが伸びきった以上に出ている状態になっているのではないか?、
 となると、アウターのアジャスター分の厚さを無視すると、カムレバーが正規の動きをするはず、とふんで、純正のプレッシャープレートと入れ替えてみた。

 結果からすると、ぜんぜん作動しない。わずか2mm程度の厚さがあるかないかだが、作動する状態では、大きく変化する。ここは乾式クラッチのプレッ シャープレートを元通り装着することとした。

 クラッチを(レバーを握らずに)作動させないフリーの状態だと、収まっているスレーブシリンダーは楽に動く。ということは、現状では最大の伸びだから、 クラッチは正常値ということではないのか。どうやらスレーブシリンダーからロッドを引きすぎの状態ではないようだ。
 これで安心。ひとまず減ったプレッシャープレートのエッジを丸くして装着した。トルクの指定はあるが、どうも強すぎる。そのため、およそ0.8kgのト ルク程度に収めた。

 そういえば、説明書にあったとおり、クラッチ関係が磨耗しても、作動は自動的に補正をするというのはこのことだったんだな、と理解した。
つまり、このときにリターンスプリングがあると、カムレバーが強制的に戻されてしまうため、スレーブシリンダーのロッドの作用幅が一定になってしまって、 クラッチ本体側の遊び量が増えているのに以前と変わらない状態になってしまう。
 表現が難しいが、ロッドの動きとカムレバーの作動とがフィットしなくなることになるわけだ。このことからリターンスプリングをはずせ、という指示なんだ ろう、と解釈した。
 そう、ディスクブレーキのパッドを押し出すピストンの動きと同じだ。パッドが減ってもピストンとパッドのギャップは、ほぼ一定を保つ。油圧作動のレ バー、ペダルの遊びが大きく変わることはまれで、ブレーキフルードの量が少なくなることの方が多い現象ではないだろうか。



(上の写真のオイルはカムレバー取り付けの 際、オイルクーラーへ行くホースをはずした時のオイル付着です。漏れではありません。)

ここで笑い話を一つ

 これま で、XT500から1978年製の2J2のSR500、そして1JRのSR500まで、エンジン始動の際、左手はグリップを大きく回しこんで人差し指でデ コンプレバーを引いていた。
 マグラの油圧クラッチはデコンプレバーがマスターシリンダーの上になっている。目に見えているにもかかわらず、そのことを忘れて、ついつい、いつものよ うに手首を回してレバーを握ろうとする。ところが、人差し指には何も触らない。
 で、上に変更になったレバーを握るのだが、その後の圧縮を抜く右足の動作が... 。そう、始動キック前の一連の流れが無いのだ。
 慣れとはいいながら、これまで身に付いたエンジン始動のコツはたやすく消えそうに無い。「今のデコンプレバーは上ですよ」と、僕の脳みそが感知するよう になるまでには、しばらくの期間が必要だ。

 年末年始の休暇に入った12月30日、冬空のもと、このSRを走らせる。やはり、デコンプレバーでへまをやる。下に恐ろしきは慣れというものか。
 いつもどおり... 。ン、晴れてはいるが、確かに気温が低い。どことなく始動性がいい。何というか、キックミスというか、たまにキックバックのようなものが来るのだが、それ がない。
 僕のSR500は吸排気系はノーマルで点火系だけが強化してある。それでも燃料が気化しづらい冬に3発でエンジンが始動することは、もしかして「ツチノ コ」のせいかもしれない。
 アイドリングが一定になるまでおよそ3分程度2000回転付近をキープする。この時点で1000回転程度なら、エンジンが熱くなると1200回転程度で 落ち着く。オイルクーラーは作動させたままだから、発信時は温い程度の油温であろう。この日は最高気温が10℃以上上がらなかったが、今年は、ついこの間 まで気温が比較的高かったため、オイルクーラーは作動させたままだ。
 いよいよ走行開始。クラッチレバーを握り、シャラシャラ音を確認して1速へ。つながりが急にくるが、コツをつかめば簡単だ。ワイヤーと違って、レバーが 急に硬くなると同時にクラッチが切れる。この逆のタイミングが1速での半クラッチのコツだ。
 ワイヤーのようにズズ~っと引きずるような入り方はしない。ズッ、パシッというつながり方だろうか、しかもレバーがフリーになるかならないかのところで つながるから、この1速のタイミングさえつかめれば、その後はいつもどおりよりスポーティーにギアが入っていく。
 もっとも、ノーマルの湿式クラッチではもう少しダルっぽいかもしれないが、それでもタイムラグは小さいはずだ。

 本格的に走行すると、これまでより軽い動きの車体に少しばかり驚く。何というか、パタンパタンと倒れこむでもなく、最初の頃、ちょうどメッツェラータイ ヤが快調な頃に良く似ている。
パタンパタンに気を良くして走っているが、止まってみるとリアタイヤの外周ブロックにかかるところまで使っている。極普通の使い方だ。僕自身は、そんなこ とは一切感じていな いし、感じられない。
 唯一感じるのはリムサイズとタイヤの扁平率が少しばかり一致していないためかしら、タイヤ断面が通常の扁平より楕円気味だから、最終でズッとスライドす るかな ~、といった感覚が出ることで倒しすぎかな、とも感じるところだ。
 いい具合に、フロントがTT900GPのままだから、こちらの扁平さがコーナーでの倒しこみがリアタイヤの限界以上にならないようにし ているようにも思う。それにしても、コーナリングが軽い。
 エンジンの回転の軽さも特筆物だ。完全にクラッチとセパレートになっている。前述のとおり、クラッチワイヤー時のアイドリング回転数のままだと、油圧ク ラッチにした途端に200回転ほど上昇した。おそらく、これは油圧クラッチに交換し、カムレバーを交換したために起こったことだろうことが想像できる。 (今まではフリクションが少し効き過ぎていたのだろうか?)
 この点でも、この油圧クラッチキットは大変優れていると感じる。

 今回のマグラ油圧クラッチキットは少々高価ではあるが、私自身とすれば実売4諭吉未満で入手できる素敵なシステムとしてお勧めしたい。
 現状なら、比較的安い車両価格、年式で大きな変化が無い車種、豊富なパーツ、基本整備ポイントがはっきりしているなどの理由でSR400を購入される方 々は多いと思う。
 その方々がまずやるべきはサスペンションの交換であろう。仮に足つきが悪いなどがあれば、ワイズギアがリリースしているローダウンシートが一番だが、私 が記載しているとおり、リアフェンダー周りの空間が確保されたリプレースシートに交換されるかもしれない。
 シート交換から、必ずハンドルバーの交換になることは必至だから、通常ステップ位置の現行SR400なら、サスペンションの次はマグラの油圧クラッチを 装着するべきではないだろうか、と感じる。

結 語
 年の瀬も押し迫った南予路を走ると、SR500自体、未完成のオートバイだな、とつくづく感じる。SR自体、最初からノーマルの ままで乗るとは考えられない上に、SR500は吸入・排気などのバランスが400に比べて許容範囲が狭い。この点はFCRなどの高性能VMキャブに交換 し、キャブの性 能の80%程度の状況で使った方がよろしいのかもしれない。
 僕のように、スーパートラップなどのマフラーを装着して、ノーマルのBST34のSUキャブをあえて使うとなると、恐ろしいほどのパイロットスクリュー の戻し回転が仇になる。標準の2回と1/2回転の戻し数だと、かえって下側が濃い状態になってしまうようだ。マフラー交換などを行った時などで、通常言わ れているスク リュー戻し回転数、は実のとこ、「止まらない」、「パンパン音がしない」ようにするだけのもので、全般にマフラーエンドを煤けさせる結果になる。
 当然、抜 け の良いマフラーのため、そうすることで混合気の状態はリッチ、結果、エンジンも調子良いから良いセッティング、となるのであろう。多分、燃焼室からエキパ イ内部、そしてマフラー内部も通常よりカーボンが多く付着するのは必至だろうから、エンジン自体は調子が良いとは言えないはずだ。
 もっとも、これらのことはホワイトブロスのスーパートラップで散々やった挙句の果てで理解できたのだが、おそらく、排気系の抜けがいいから吸気側を何も かも大きくして追いつかせよう とする行為は、ノーマルのBST34キャブ主体の吸気系では仇になるようだ。
 この点、ヨシムラのボアアップキットの説明に、「ノーマルのキャブではメイン ジェットを#2.5上げる」よう指示している。つまりBST34のキャブな ら、ノーマルは#162.5という特殊サイズだが、これをスタンダードサイズの#165に上げるだけでいい。これとても、そんなに大きい数値ではない。

 マグラの油圧クラッチ装備と走行テストのフィーリング、そして結果から話が少しばかり逸脱するが、SR500が今までとは違ういいものに変化したので、 結語とさせていただき、今回のレポートは、僕の新しいSR500を目指している手前、「SR500 これから」に綴らせてもらった。







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