SR500の点火プラグとプラグコードについて

 本年(2003年1月12日)のキャブレターを主としたチューニングで、一つの向上は認められた。単純に言うと純正BST-34の負圧キャブレターの制御スプリングを短くし反発力を弱めたこと。これだけだ。その間のテストはこれまで報告したとおりだ。
 しかし、どうも上手くない。5速2300回転域の独特のシャクリは別として、体感上と実際がちぐはぐでなければならないのに、妙に一致している。決して表現が間違っているのではない。
 VMキャブの時代のように、ガッガッガガというフィーリングで、力強いが走行速度の実際は遅い、という感じは一切欲しくない。SR、しかも500にはこういったことが一般的に求められがちだが、実際にBST-34の負圧キャブを使用した2000年までのモデルでは、そのような方向付けはされていない
 エンジン内部でも、圧縮比の低いピストン形状が用いられているし、クランクウェブも400より軽くなっている。エキゾーストパイプも内部径が大きいし、キャブレターもメインノズルの径が400とは異なる。総じてVMキャブ時代の500よりは現代向けにリファインされているものなんだ。
 純正キャブレターのファインチューニングによって、いい結果を得ることができた。しかし、何か詰めが足りない。どうすればいいか、様々な方法があるけれど、おそらくは諦めたはずの点火系ではないか、と感じた。もう少しいい走りができるはずではないか... と。

振り返ってみて
●点火コイルはさんざん悩んだ末、点火プラグの状況からノーマルに戻した。結果はそれで良かった、というものであった。
 しかし、プラグの種類によっては点火方式というか、SRにフィットするプラグはどうしても限定されることが判明した。
 間違ってもらっては困るのだが、点火プラグそのものの性能は評価できるが、僕のSR500にはフィットしなかった、というところのものである。

◆もう一点は、プラグコードを流れる電流量がどうも悪いように感じる。人間の血栓のようなものではなく、一般のプラグコードとしての劣化が早いようなので起きるものかもしれない。特に今のモデルでもそうだろうが、点火コイルから出たプラグコードはほとんど最短距離で点火プラグに届くようにセットされている。材質は普通のカーボン被服で数本の芯線である。ところが、外皮が合成樹脂製なので、ネオプレンゴムの外皮のものに対してフレキシブルなものが少ない。
 外見上も数値的にも劣化は認められないが、ストレスフリーを目指すと、意外にこのカーボン被服のスタンダードのプラグコードは劣化しているのではないか、と考えられるところだ。

プラグコードについて
 そういったところで、再びTAYLERのプラグコードをNGKのジョイントを介して装着してみた。コードの口径は8mmφだから、プラグキャップへはシリコンの外皮のまま装着できる。残念ながらNGKのジョイント部分への装着は、中へ入り込む部分とゴムブッシュのコードストッパーがかかる部分まで、外皮を剥き取ってやることが必要だ。NGKのジョイントはなかなか堅牢だし、絶縁状態もいいようだ。中心の針部分がTAYLERのスパイラル芯線の中へ入り込めるよう細身に仕上がっている。ねじ込みのふたの部分に外皮がかかっていれば、はずれることはないから、中へ入り込む部分は外皮を剥いて装着してもOKである。
 FUJIKURA-NGK-TAYLERの接続としたプラグコードの状態でエンジンを始動させると、一発で「変わった」と感じる。電流が流れよくなっていることが分かる。上手く表現できないが、決して力強さが加わったとかいったものでもない。確実にエンジンが回転している、と言ったものである。
 走ってみると、スムースに回転が上がるから、ことさら体感上の速さが速いし、実際に速い。SR500って、こんなに速く走ったかな、といった感覚になってくる。しかもこの寒さにもかかわらず、降りたくない気持ちになってくる。もっと悪いことには、このままどこへでも行けるのじゃないか、という気持ちにもなってくるのである。
 確かにTEYLERの外皮はシリコンだし、スパイラルの芯線を持つから、インダクタンスの関係から電流の流れがよくなる。しかし、それまでのこと。あくまで、良質の高性能プラグコード、と理解していただきたい。
 使用率の高いプラグコードで、主として強力な火を出させるよう点火プラグに作用するものをプラグコード独自に持っているノロジーホットワイヤーとか、ツインコアを主としたスプリットファイアのようなプラグコードとは一線を引いて区別していただきたい。
 松山の南海部品で、6mmφシリコン外皮のプラグコードで芯線に普通のツイスト電線を用いたものを見かけたが、これならダイレクトに点火プラグから接続できるから好適かもしれない。
 ダイナ社のホームページにダイナシステム(点火)を使用してトランジスタ点火方式にした場合、一部スパイラルの芯線を持つプラグコードは不適当なものがある、というレポートも承知おき願いたい。ダイナのDCコイルとトランジスタの点火システムではスパイラル芯線のプラグコードが悪影響を及ぼすものがある、ということだろう。
 トライアンフに使用しているダイナコイルを東京のブリティッシュ・ビートに発注したときに、普通のヤザキ電線のプラグコードが付属してきたのは、ボイヤーのトランジスタシステムで起きるかもしれない弊害を防ぐためだったのかもしれない。
 この件に関してはいずれ報告したい。

プラグキャップについて

 現在は純正を使用している。抵抗値は約10KΩ、抵抗入りのプラグを使用するから、若干多めの抵抗値で、流れる電流量が減るかな、と感じるが、今のSRの点火方式からすれば一般的な数値であろう。
 抵抗なしのストレートなプラグキャップを使用すると、点火プラグの熱価を上げなければならないかもしれない。

点火プラグの電極ギャップについて
 さんざんこの点は確かめた。数本の同じプラグを用意する必要があるため、意外と確認が取れないかもしれないが、僕のテストでは0.8mmがSRではベスト、という結果になった。
 0.6mm程度にすると、ミスビートする場合がある。始動時に、キックアームを力を抜いて踏むと少しケッチンを食らう場合など、ギャップを少し広げてやると直る。
 ケルン石塚氏のレポートでは1mmまでOKとされているが、SRの場合、プラグによって指定のあるものを除いて、大半は0.8mmでいいようだ。

またもや点火プラグに
 一体何がどうなっていたのだろう。はっきり言えばスプリットファイに交換すれば何もかもいい結果が出る。しかし、それでいいのだろうか。スプリットファイアSF-426Cというプラグが、国内のいかなるところで簡単に入手できるかどうか、ということに着目した。多くの方々の答えは「NO」。すなわち不能なのである。僕の住む町でもパーツ屋へ行って聞き合わせても、「そんなプラグは無い」ということから、そう感じるのである。
 そういったもの以外に何かいいものが「絶対」にあるはずなんだ。NGKなどワールドワイドじゃないか。それでもプラグ1本で変化することはあるが、そのオートバイが持つ固有のものは大きく変化することはほとんど皆無なのである。
 それでも気になるのはなぜか?。

点火プラグの種類と熱価について

 冬場の走行テストで結構つらいが、気象条件などからは極寒でもなく、気温も10℃内外で安定しているため、出された結果は夏場の状況に置き換えても、まず間違いないと思う。強いて言うと冬場の方が燃料が気化しづらい面はあるので、吸入状態と点火プラグの関連からはくすぶりが少し出るかな?、と思われる。
 あくまで、日本国内で苦労することなくフィットするプラグを主として選定することを基準にしている。このことも念頭に置かねばならない。
 目安としては、NGKの6番相当でワイドレンジなものもチョイスしたい。ガソリンでのテストと同様、スプリットファイアのSF426-Cはいずれの場合でも好結果を得ているのでテストプラグからは除外する。
 BOSCHのプラチナ電極は、非常に良好なんだが、イマイチ白い。そのため、少し熱価の高いものが入手できないので、これも除外する。
 デンソーのIW20という6番相当のイリジウムプラグをチョイスしようと考えた。ノーマルのW20EPR-Uよりもワイドレンジということが一般に言われている。
 しかし、こいつを3000km毎に交換するか、というと1,600円ほどの出費に躊躇するのである。僕はスプリットファイアのように走行上大きな変化がないと思うし、熱価が同じなら、そこそこの点でW20EPR-Uと同じことではないか、と考えて除外した。
 別枠としてのNGKのイリジウムプラグについてであるが、このプラグも注意して見るとVXプラグの中心電極をイリジウムに変更しただけと言っても過言ではない。従って、VXと同様の結果を得ることとなれば、走行フィーリングとプラグの焼け方がほぼ同期しているので、形状も変化ないとしてこのプラグを取り上げなかった。
 現状でのものとしてはデンソーのW20EPR-U、NGKのBPR6ESを再びテストすることとしたい。

いよいよ実験、そして...

 点火プラグの種類によって金額が大きすぎるというのも偽らざるところである。げすの勘ぐりではないが、今、こういった経済状況の中にあって、そこそこ調子がいい場合は気にしなくてもいいようなパーツだ。
 スプリットファイアのように、ほとんどの場合で好結果が出されると、納得できるが、うたい文句などで高性能が唱えられていても、実際はそんなに変わらないよ、というものが多く、自動車と違って点火プラグの交換頻度が高いオートバイの場合、種類によって大きく変わる金額を考えないわけにはいかないのである。
 何とかスタンダードな点火プラグで結果を出すことが必要なのではないか、と感じたのだ。結果は予想だにしなかったことになった。

実 際
 リファレンスとしての最初のBPR6ESをじっと見つめていた。本当に申し分無いのである。その当時は「チェッ、プラグなんてそんなに気にすることはない。もっと違うところをいじるべきだ」とされて、点火プラグをはじめ、それをとりまく環境のことなど一切眼中のいなかったのである。
 なにぶんにも、そういった考えが大きく支配しているため、ここをどうやって切り崩したらいいか、相当に点火プラグ、発電装置自体について考えた。
 とにかく、僕自身も前回のテストから相当にいじめにあったような調子に陥ってしまった。松井のヤンキース、新庄のメッツなんぞ気にもとめないときが過ぎたのだ。
 多くは割愛するが、とにかく、良好な火花は得ている。その上に調子の一元化を目指すとこれは絶対に吸入・排気の方を言うべきであろう、ということになった。
 じゃ、点火プラグと点火方式はどうなんだ?ということになり、フランクな気分でケルン石塚が行った点火プラグのリファインを実際にやってみることにした。

まずは、使用中のBPR6ESを選ぶ

 全くばかげているよな。デンソーのプラグをはずす。確認作業が始まる。「このプラグ」と決めていたのが、一瞬たじろぐ。どうしても火炎伝播の陰が出るのである。UカットのL字電極だからここんところは絶対に改造できない。
 デンソーのイリジウムプラグでは、NGKと同じようなVカットは施されているし、L字電極のUカット部分も存在し、しかも中心電極をわずかに越えて位置している(でないと、U字カットされたL字電極の意味がない)。
 スタンダードなデンソーのUプラグはL字電極に溝が切られているということだが、火花を飛ばす方式が独特なため、このプラグはリファインできない。
 そこで、BPR6ESにケルン石塚が行った点火プラグのリファインを試すこととした。



 一瞬たじろいだ。決してスタンダードなプラグをバカにしているのではない。このフィーリングを文章表現すると、「あたかも、スプリットファイアの特殊点火プラグと同じようなフィーリング」と言われるのではないか。全く自画自賛ではあるが、それほどの走行フィーリングの変化を示したのである。何度も何度も言い聞かせる「これってBPR6ESのL字電極を少しカットしたものだよな」と。
 リファレンスとしている最初のBPR6ESと見比べていただきたい。碍子奥の煤けた部分がL字電極のところだけになっているのがお解りであろう。パイロット系も問題がないようだ。
 ようやく、僕のSR500は平穏でゴキゲンな状態になってきた。まずは、目出たしである。
 が、何かおかしい感じが出始めたのだが... 。

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