SR500点火プラグテスト(その2)

大きく変わった
 新しい年2003年になった。寒風吹く中、三間から広見への道を走る。気合いが入っているのかしら、ハンドリングにも力が入った。
 大晦日からわずかに2日目、実は元旦から検証は始まっていた。その検証とは何か、思いもかけないものが影響していた。何あろう点火コイルである。僕のSR500にはオレンジ・ブルバードがリリースしていたスーパーサンダーという点火コイルが装着されていたが、これをノーマルに戻したのである。
 このことは、項を改めて記載することとして、まずは点火プラグの関係を、(その2)として報告したい。

追 想
 実はこの点火コイルが、SR500の混合気の爆発に大いなる影響を及ぼしていたのである。1998年当時、オレブルの代表である藤井氏が、専門雑誌SRに「これからは点火系のチューニングが大いに活発化する」と発言していた。
 僕は、それ以前よりコンタクトポイント点火方式のコンデンサーをボン・ファイアという大きいものに交換して、とんでもないことを経験していたし、妻が乗っていたスバル360の点火コイルをBOSCHのブルーコイルに交換し、コンデンサーをボンファイアにして、すさまじい変化を感じとっていた。スーパーサンダーよりも前に、トライアンフにはボンファイアに変更していたし、SRより前にスプリットファイアを装着して大いにびっくりしていたものだ。スーパーサンダーそのものは当然悪いものではない、と判断して装着に踏み切った。折しも、排気系もスパトラになっていたので、二兎を追う者は一兎も得ず、に陥っていた。おまけにその状態で、吸排気系をいじっていたので、一層難しい渦に飲み込まれていたのだった。

今の時点として
 吸排気系をすべからくストックの状態に戻してしばらくして、キャブのダイアフラムの制御スプリングの改造を行い、メインジェットの みを#162.5からポッシュの#165に交換しての状態にしていた。スパークプラグはスプリットファイアの SF-420Cのままだった。テストがてら、以前調子の良かったデンソーのW20EPR-Uに交換して、この項「その1」の状態になり、再びスプリットファイアに戻して良くなった、ということだ。
  現実としての結果はスーパーサンダーに対しては「スプリットファイアのSF-426Cがジャストフィット」にまで漕ぎ着けた。これで文句は無いはずだ。
 しかし、あまりにプラグが限定されてしまうと、万人向けのチューニングアップとかセットアップとはほど遠い。いかなる点火プラグにおいても、リファレンスである最初のBPR6ESの状況にならないと、真ではない。かといって、嘘でもない。こういった状況で再びテストを開始することとした。
 エンジン・吸排気系はニアノーマル。点火時期もスタンダード、ガソリンもレギュラー、そこへ強大な火花を飛ばす点火コイルが来れば、プラグに出てくるものは、以前申し上げた「点火プラグが死ぬ理由」に記載したとおりになるはずだ。

ノーマルの点火コイルと点火プラグとの関連について

 スプリットファイアはいいが、ほかのプラグの状況がどことなくおかしい。その確認のための実験はスーパーサンダーを元の点火コイルに戻して走行してみることとするのが順当であろう、と考え、実験を開始した。
 用意するものはノーマルの日本電装製のSR専用のCDI対応コイルである。今のものはバッテリーが大きい時のタイプとは形状が違い、どちらかというと、今流の点火コイルのように、コイルのセンターにコアが通っていて、その周りにコイルが巻かれるタイプである

 今回に限って、プラグはスプリットファイアをリファレンスとして、デンソーのW20EPR-U、NGKのBPR6EVXをチェックした。僕のカンでスタンダードのBPR6ESは、もうテストを行う必要はない、と判断した。
 点火コイルをスーパーサンダーからノーマルに取り替えて、プラグをデンソーのW20EPR-Uを装着して走行を開始した。
 ものの数キロも走らないうちに、異変に気づく。「これは何だ?、本当に、これまでのプラグと同じものか?」と。いや、全く別のスタンダードプラグを装着しているのではないか。強いて言うとコイル交換前のスプリットファイアを装着していた状態と大差無い走行感覚だ。すばらしい!。
 帰宅してプラグを見ると、「お見事」の一言だ。しばし、プラグを眺めていた。「アッチチチ... 」、熱いのを忘れて、思わずネジの部分をさわってしまった。それほどの変化なのだ。碍子の中までタン塩色にこんがり焼けている。臭いも金属が焼ける独特の臭いがする。本当にそうなっているのである。
 若干金属部分がすすけていることと、わずかに碍子の奥のくすぶりはハイオクガソリンの影響が残ったままライディングテストを行っての結果であろう。

 次はBPR6VXだ。これがあまり良くない。白金電極のプラグに当然期待できるはずのものがほとんど感じられない。
 強いて言えば、スーパーサンダーでテストした時よりわずかに良くなったかな?、という程度であった。プラグを見ると、奥の方がすすけている程度。
 写真ではその分が解るように若干明るくしているが、もう一点、上記のデンソーに比べると碍子のトップ部分の方の焼けが強い気がしないでもない。
 いかんせん、加速とかのアクセレーションフィーリングがちょっと来ないのだ。
 ちょっと「来ない」という表現がマズイかもしれないが、サーっとアクセル開度に呼応して回転が上がってくるという状況ではなく、フライホイールマスといっしょに、若干振動も加わってガガッググ、グ〜、と回転が上がっていく状態になるのである。SR乗りの方なら表現が理解できるであろう。
 このことから、スプリットファイアのような電極構造は別として、SRの場合はスタンダードのプラグのように、中心電極をわずかに超えるL字電極を持った、火花が広い範囲に出るタイプの方が好ましいのかもしれない。
 しかし、イマイチ確認が足らない、と感じる。点火コイルの特性の考えは別に記載するとして、もう一度プラグ自体の確認をすることとする。

 まずはノーマルの点火コイルの抵抗値はどうか?。テスターで測定すると8kΩである。
 プラグの抵抗値はどうなっているか?。NGKのRタイプはおよそ5KΩの値を示す。ところがデンソーは6KΩ、スプリットファイアに至っては8KΩを示すのである。プラグキャップはおおむね10kΩだろう。
 僕の想像からだが、スプリットファイアは通常の点火プラグに関して、逆転の発想から高抵抗の材質をセンター電極にして、プラグ自体を丈夫にしているのではないか、と考えた。
 したがって、くすぶりには対処できないが、CDIとかトランジスタ点火方式が一般的になっている現在の強力な火花を飛ばせる点火方式では、プラグコードを変更したりした場合、スプリットファイアならプラグである程度押さえることができるため、電極の形状は別にしても、体感上はプラグを換えただけでパワーが上がったとなるわけだろう。スタンダードな点火システムでは、もっと顕著にそれが現れるのは言うまでもない。
 また、僕の考えた構造上の特性からすれば、電圧電流の変化に強いし、独特の電極構造を持ったプラグだから、メーカーでも言っているように、オートバイでも5000km程度は十分にその性能を発揮することが分かる。
 BPR6EVXの走行フィーリングがあまりよくない感じを得たことから、通常形式のプラグでは、スタンダードのプラグの方が一般使用では使いやすいし、効率がいい、という結果が出た。
 つけ加えるとデンソーのL字電極のUカット(世界特許)はなかなか有効である。デンソーのイリジウムプラグのL字電極はデンソーのスタンダードタイプと同様の形式でUカットの溝を持っているのは、この有効性からであろう。

点火プラグの決定
 あくまでノーマルの吸排気系と点火系を持つSRで実験した結果、スプリットファイアはすべからく良好な結果が出た。最適なプラグとしては候補の一番に上げたいが、日本国内のどこででも入手はできない。ここ宇和島でも、松山まで出かけて購入するか、もしくは、ヤマハのパーツとしてとかの方法で、オートバイショップに4本ほどの単位で発注してもらうなどをしなくてはならない。
 この点から、どうしても一般的な普通のプラグを選定することがが必要だ。そのためとして、スタンダードのBPR6ESを筆頭に、デンソーのW20EPR-Uをチョイスするのが一番いい方法であろう、と思う。特にデンソーのUカットは確実にいい結果を出す。
 以上、終わりは簡単に結んでしまう。本来なら考察を加えるところだが、これは僕の思い入れも含め、(その3)として、いずれ報告したい。
 ところが、プラグではない別のことが大きく浮上したのである。それは点火コイルなのである。

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