SR500/点火プラグテスト(その1)
はじめに
 WBのスパトラとノーマルのキャブ、しかもエアクリーナーまで装備した僕のSR500で、過去、点火プラグについて様々な実験を行ってきた。その状態から、一気にノーマルのマフラー(排気系)に変更したのが2002年の8月頃。そこから年の瀬まで、快調に進んできた。
 点火プラグをスタンダードのNGKからデンソーに交換したのが10月の終わり頃、調子の良さにプラグの点検なんぞ一切行わなかった。2000km程走ったとき、確認のためプラグを外すと、「やはりそうか」、と確認し、再び実験を開始して一定結果を得た。そこから意外なことが分かった。
 あくまで僕のSR500で行ったことだから、通常のSR500やSR400はもとより、他の車種での結果とは結果が異なる場合もある。その点はご了承の程を願いたい。
 以下はその報告である。

SRの吸排気系における特徴
 まず、エンジン単体は真上から見ると進行方向に直角に位置し、シリンダー部分は前掲して取り付けられているのが分かる。
 ところが、ピストンのトップ部分、円周の横方向と縦方向に直角に線を交差させると、吸入ポートと排気ポートは各々方向が、直角で結んだ線とズレていることに気づかれるはずだ。つまり、わずかに右寄りから入った混合気は、燃焼室の左側に沿って点火プラグに到達する。爆発した排気は、わずかに右に寄って排気される。通常なら左から入って右に抜ける、という形を採るはずだが、そのようにはなっていないのである。
 次に側面から見てみよう。
 吸入側の通路は燃焼室にダイレクトに入らない。なだらかな下降線を描いて大型の吸入バルブから燃焼室に導かれる。これはノーマルの取り付けフランジを使用し、FCRのキャブを取り付けると、キャブが後ろに傾いているような取り付けになることから理解できるはずだ。
 ところが、排気はほぼダイレクトにエキゾーストパイプの取り付け(ダウン)角度に流れ込むようになっている。つまりシリンダーの前傾角度と、ほぼ同じ角度でエキゾーストパイプに導かれるのである。
 もう一点は、点火プラグを取り付けるときに感じられるだろうけど、決して燃焼室へ向かって斜め方向に真っ直ぐねじ込まれない。強いて言うと、吸気側に向かって斜めにねじ込むようにネジが切ってある。このことからも、吸排気系の位置取りがおわかりになるはずである。
 そして重要なことがもう一点。エアクリーナーボックス内のエアフィルターエレメントでクリーンになった空気だけではなく、クランクケースから戻されたブローバイガスがその空気と一緒になってキャブレターに導かれるのである。
 このことを、まず覚えておいたいただきたい。

SRのエンジンからの特徴
 すでに多くのエンスー諸氏はSRのエンジンは400ccと500ccとで内部が結構違っていることをご存じのはずだ。いろいろ特性をふまえてのものであろうが、ピストンの形状による爆発の状態が違うように感じられるのである。
 ここからは想像だが、次のようになるのではないだろうか。
 SR500ではピストンのトップがフラットに近いし、圧縮比もそんなに高くない。そのために、吸入された混合気は点火プラグから上下左右に、ほぼ放射状に火が広がって、そこそこの爆発をするのではないだろうか。
 それに対して山形のピストントップを有するSR400では、吸入された混合気は点火プラグから左右はほぼ均等に、ピストントップを山とすると、左のすそ野から右のすそ野へ放射状に火が広がるのではないだろうか。当然ピストンの形状から爆発した燃焼ガスは左右上下に渦を巻いてピストンを押し下げる。圧縮比の少しの違い以上に、500よりは遙かに大きい爆発をするのではないだろうか。
 よく行われるスポーツチューンでSR500のピストンを400のものと交換する方法が採られる。圧縮比が上がって元気になるが、僕としては400のピストントップの形状から、燃焼室内での圧縮バランスが均一にならない。それに400より長いストローク、次に出すクランクウェブの重量差からこの方法は好ましくない、と感じる。もちろん、わずかにピストン中央部の盛り上がったヨーロッパ向けの48Uのピストンも使用していないのは、この考え方からだ。
 ヨシムラのピストンも、デイトナのビッグフィンシリンダー用のピストンもピストントップの山が円錐状になっているのは、圧縮比の高さよりも、強い爆発力を得るための手段ではないか、と推測するのである。
 SR500がディスコンになって、これもあまり騒がれなくなったが、CV(ミクニではSU)キャブからのSR500のクランクウェブはSR400より軽いものが用いられているのは、国内で用いられるSR500としては、ヨーロッパ向けのSR500と状況が異なるために採られた策ではないだろうか。もちろんヨーロッパ向けの若干ではあるがハイコンプ(SR500)にフィットしたガソリンのオクタン価が日本とは違うことも影響している、と想像できる。
 次はシリンダーヘッドの状況だ。数回の金型変更で、現在のモデルはエキゾーストパイプ部分が上下に連結されているし、カムチェーンのトンネル周りも補強されている。
 このために、若干ではあるが、シリンダーヘッドの通風状態も変化していることは事実だろう。もちろん、中身は不明だが、材質変更も考えられるし、各ポートの形状変更もマイナーチェンジされているはずである。VMキャブからCVキャブに変更されて、キャブレターだけで調整が出来るほど甘くはない。メーカーとして国内のいかなるところでいかなる人々がSRというオートバイが楽しむことが出来るか、そういったことを考えた上でリリースされるのが、メーカーとしての責務でもあろう。

プラグの状況から
 デンソーのW20EPR-Uのプラグを点検して分かったのはくすぶりのスポットが今でも存在することであった。この部分を特定するためにプラグの外側にフェルトペンで印を付けて、プラグをシリンダーヘッドにねじ込むと、必ずシリンダーに近い側に落ち着く。
 もちろん、どのようなプラグでもL字電極側には若干くすぶりが出来る。まれだが、この部分がシリンダーに近い部分になる場合がある。
 キャブレターをSR500スタンダードの状態で保った時に3000km走行して交換したNGKのBPR6ESがこれだ。以前に紹介したのでご存知かもしれないが、この状態をリファレンスとしているため、僕はずっと、このプラグを保管している。
 吸排気系、点火系はスタンダード、キャブレターの状況は、メインジェット#162.5、パイロットジェット#45、パイロットスクリウ戻し回転2回と1/2、という全くストックの状態であった。
 マフラーをスパトラからノーマルに、そして吸入側もほぼノーマルに近い状態に戻してのテストでは、スプリットファイアSF-426CのみがリファレンスのBPR6ESに近い焼け方であった。
 が、ここで注目していただきたいのは、多くの点火プラグで起きる碍子周りの焼け方だ。くすぶりのスポットがL時電極の部分だけになっているところだ。もう一度、スタンダードの新品プラグの中心電極とL字電極の状況を上からと横から見ていただきたい。数本見比べればお分かりになるだろうが、L字電極が中心電極に対してわずかに左右いずれかの方向にオフセットされているものがあるはずだ。
 おそらく、点火部分を上から見て、中心電極に対して真上にL字電極を持ってきた時に出る火花の強さのうち、火花が弱い方向にL字電極が曲げられているはずだ。メーカーでは1本ずつ電流を流して、そのチェックを行って出荷しているのではないだろうか。
 どうしてもくすぶりが一方向に偏る場合は、プライヤーなどでL字電極をひねって、くすぶっている方向へわずかに持っていけばいい。
 ただし、電極に細かい傷などを付けないよう!。深い傷だと異常発火の可能性が出る。

再びテスト

 しからば、スタンダードプラグに限って起きる白っぽい電極はどういった理由からか?。そこで、BPR7ESに変更してテストを行う。
 結果はわずかに改善される。通常のSR500ではハイギアになると、若干シャクルというか、ノッキング気味に加速する。7番でこの状態がわずかに改善される。ということは、6番プラグでは若干早期点火になっているのだろうか。
 それなら6番に変更し、ガソリンをハイオクに変更してみることにする。
 結果は大した変化がない。当然7番に上げても大きな変化は一切ない。
 では、ニードルジェットのクリップポジションか?。これは当たらずも遠からずのとおり、現在の焼け具合の状況では、ニードルのポジションで起きるようなものではないし、キャブレターのジェット類のセッティングでもない。
 ましてや、気温が低い冬だし、混合気の状態も少しばかり重い、というか、ガソリンの霧状化も夏場とは異なる。
 もちろん、僕のSR500にはカンリンの重量フライホイールが装着してあるから、イナーシャの関係からピストンスピードがスタンダードより速いのかもしれない。しかし、これとて、ハイギアでのノック気味の原因には考えられない。
 ハイオクガソリンのままで、再びスプリットファイアに戻すと、見えないものが見えてきだした。今度は活発さがやや消えて、何かカッタルイのである。明らかにハイオクガソリンではスタンダードのセッティングには必要ない、ということであろう。
 今の僕のSR500なら、スプリットファイアのSF-426Cがベストフィットである、と結論づけたい。

しかしながら...
 どうやら分かりだした。今の仕様なら、スプリットファイアのSF-426Cとレギュラーガソリンで十分にパフォーマンスを発揮する。燃料タンク内のハイオクガソリンが無くなる頃、思いも寄らぬことが判明したのだが2002年も押し詰まった大晦日のことであった。
 その後のことは年が変わってのこととしたい。おそらく、このページをご覧になっている多数のエンスーの方々は気が付いていらっしゃるだろうが、肝心要のことを僕が忘れてしまっているのであった。

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