見かけの28mm その2
事前に

 あれから数日間経過した。どうしてもモヤモヤが晴れない。このことだけでも、実際のキャブレーションの様子は一切分からない。これまでの考え方の蓄えと試行錯誤の繰り返し、関係雑誌の資料的記事、それらの合計だけが僕の資料だ。
 パイプの改造からしばらくしてプラグがグズリ始めた。どうやらノーマルプラグそのものは今後の選考課題として、ひとまずスプリットファイアーに交換する。コヴェントリーの清水さんがチョイスしてくれたSF-405Dである。NGKのB7ES相当だが、少し状況が違いアバウトなフィッティングのようで、経験からすると7番、6番相当と言えなくもない。
 かつて、RD-250でコンデンサーをボンファイアに変更したとき、7番プラグを相当ダメにした。一気に点火して連続高回転に持っていくとプラグが正常に働かなくなるようなのだ。それで幾分くすぶっていても8番を装着していた。点火コイルをスーパーサンダーに変更したSR500ででも同じことがしばしば起こっていた。あくまで僕の推論だが、プラグの状況は電極部分のきつね色などというものはあまり気にしなくていいように感じる。エンジンの掛かりが悪いとか、走行中どうもおかしい、というものがなければ、点火プラグは3000〜5000kmで交換するものとして、使用状況のフィーリングで選んだ方がいいように感じている。
 その他は何も変構していない。それでは「その2」へ.... 。

再び想像
 多くの雑誌などで、実際の状況からストックのエンジンにフィットさせるのであれば、28mmのキャブでもいいかもしれない。その上にシングルキャブにした場合は、ある程度のセッティングの緩和から、非常に有効であることを聞く。大別して、小さい口径の方がセッティングしやすい、というのが通説だろう。
 しかし、ここ一番、というときにはやはり口径の大きいキャブレターの方が.... 、と考えるのである。しからば今の32mmから34mm口径にするとどうであろうか。
 はっきり言って、前回実験したように吸入側を押さえれば使えなくもない、とおぼろげな判断をする。XT500のときはVM34mm径が有効であったが、SR500でそれがダメになった点はバルブの大きさが変更され、ブローバイガスがそのままキャブに戻されるから、と今でも信じている。とにかくSR500の最初のモデルで懲りていたが、同じバルブを使いながら34mm口径でも現在のSUキャブでは調子がいい。
 トライアンフに、現在のヤマハのSR500/400のSUキャブを持ってくれば結果は分かるだろう。が、スロットルワイヤーの交換はもとより、メインジェットの取り替えから始まる一連のキャブ調整は困難を極める。このことはバイカーズステーションの記事でお分かりになる。その上にSR用のキャブでは、いちいちキャブのフロート部分をはずしてのジェット交換となるからだ。スロットルワイヤーはキャブレター側は4本、ワイヤージョイントの後スロットル側は2本になる。煩雑きわまりない。
 ちなみに、花園村でお会いしたリックマンの750さんは28mmのFCRを装着していた。バイカーズステーション誌のTMRと基本的には同じである。しかし、戻し側のワイヤーは装着されておらず、弱いスプリングが装着されていた。この場合はキャブ側2本、スロットル側1本のワイヤーだ。
 しかし、アメリカでのトライアンフなど、発売当時のモデルを使用したAHRMAのロードレーサーはノーマルのキャブ形式かスタンダードなキャブ、ダートのレーサーなどはキャブレターの性格上、このミクニかAMALのMK-IIしか使用できないのである。したがって、ホンダCB-450でもヤマハXS-650でも効率が悪いSUキャブは34mm口径であっても使用されない。こういった過去に経験した様々なことから判断して、僕は32mmのSUDCO MIKUNIのVMキャブを選んだ。
 やはりここ一発、スロットルワークにダイレクトに反応すること以上に、僕は僕自身が感じるパフォーマンスをこのSUDCO MIKUNIのキャブレターは持っていると思うのである。

はじめに
 そこで、シリンダーヘッドに取り付けるフランジ部分の前にモーターサイクリスト誌に出ていた国内仕様のホンダX-11のインジェクションに装着されているのような遮蔽板を取り付けてみてはどうか、というアイディアが浮かんだ。今まではキャブレターを出た混合気を早い時点でどうするか、という対策ばかり考えていた。
 パイプの端をプライヤーで曲げる方法で一定の効果はこれまで申し述べたとおりだ。デメリットはどうしても残留混合気がシリンダーヘッドのずいぶん前で残ってしまうことである。
 今回の遮蔽板はそれを少し緩和してやる、と同時にスロットルを開けたときにも過不足無く混合気の流入を助けてやることに主眼を置いた。しかし、痛し痒しの状況はやはり出るのである。このことは後述するが、遮蔽板の混合気通路の形状を算出すること能わずで、シャシーダイナモなど無い青空工房のため、実走行でのフィーリングが主体となる。最低でも数十キロは走行しないと、結果がおぼつかない。おまけに天候で左右される日程はどうすることも出来ない。
 とりあえずは、口径を絞ることから始めた。


机上での考え
 誰もが考えるのは図のような同軸上の一点が交わる円を描くはずだ。この方法で行うことはダメとは言わないが、妙に引っかかるところがある。後日、僕の考えを宇和のT君に相談したのだが、逆に質問をされる始末。この展開が新たな方向性へのステップになるかもしれない。
 つまり、僕の考えは、 というものである。

 T君の問いは、どうしてキャブレターの口径断面は円形なのか?、というものであった。「ウッ、痛いところをつかれた」と感じると同時に、事実どうして円形なんだろう、どうして今まで気が付かなかったんだろう、という素朴な答えとも何とも言い難いものが頭を走った。
 そういえば、フラットバルブのキャブレターでもカッタウエイは円弧を描きキャブのイン・アウトはどれも円形だ。
 で、彼が言うには、四角形の口をしていてもいいはずだが、水道のパイプ、水まきのホースもみんな円形の断面なのは、これが一番いいからだ、というものであった。改めて「なるほど」と感じた次第。
 そういえば、何気なく使っている物の形状などで、ついぞ疑問視していないものは多い、ということに気付く。

 そんなことを雑談めいて行う。総合して、僕の考え方で今回はやってみよう、ということになって、円形定規、コンパス、分度器などを駆使して、単心円、二心円、三心円などで円を描きながら、わずか直径30mmの円となめらかに接するもう一つの円弧をどのように作るのか、ラフスケッチの山が出来上がる。しかし、上手くいっても、今度は加工の精度上の難しさが要求されることになっては身も蓋もない。どんなにやっても、稚拙な数学的知識しかない僕の頭では、なめらかさは出せなかった。
 とりあえず最終で作成したのは、前回記したアルミパイプを曲げた時の状況と一致させることとした。したがって、口径の状況は28mm〜26mm程度の面積になる。これを30mm径フランジに合わせたガスケットパッキン2枚で、遮蔽板の絞った方を上にしてサンドイッチにするわけである。仮のテストなので、遮蔽板とパッキンの間にシール剤は塗布しない。この時点で略図の形状の遮蔽板をガスケット共々作っておく。作業を行ったのは、はいつもの内田自転車商会さんである。
 インマニにパイプは挿入しないから、アダプターはこの時点でSUDCOの付属パーツに交換する



遮蔽板の製作ポイント

2000年12月23日(

まずはパッキン作りから始めよう。


製 作 編
 ほとんど略図の形状と同じ形の遮蔽板を先につくったパッキン(30mm径の穴のもの)をマスターとしてつくるわけだ。アルミ板はDIYショップでわずか150円だ。均一性を確保する関係から、製作はゆっくり行う。
 もちろん、最終はパッキン、遮蔽板をアダプターフランジに合わせてスムースに混合気が流れるように修正する。

 

 おそらく1時間もあれば製作できるだろう。

走行フィーリング
 始動時は、前回のパイプを修正したものと比べて大きな変化はない。強いて言うと、ウォーミングアップの時間が少なくなったような気がした。なかなかいいフィーリングを示す。
 数百メートルも走ると、「アッ」という声を発してしまった。モービルのハイオクガソリンを追加した後、旧松尾峠から三浦へ出るコースを採る。「あのね、たかが数ミリ遮蔽を行っているだけなんだヨ、アルミパイプの時とどうしてこんなに変わるんだ?」信じられないことが起こりつつあった。
 ノッキング現象も起こらない。とにかく「前へ!」とバイクが引っ張る。本当に信じられない変化だ。周回コースのため、内田自転車商会さんへ帰ってきても、すぐさま、「次、行くぞ」という気分になって、どこまでも乗っていたい気分になってしまった。



2000年12月24日(
 どうしても昨日の変化が事実かどうか確認を取りたかったので、少々外気が冷たいが走らせることにした。コースは国道56号線を宇和町まで走り、T君に対面できれば、そこで一段落。再始動の後、歯長(はなが)峠を通って、三間町から宇和島まで帰ってくるコースである。
 午後3時25分、始動は実に簡単。2〜3分のウォーミングアップをして、ギアがスムースにシフト出来るようになったところで走り始める。知永(ちなが)峠の緩やかな登りで(先に)回転数を確認すると3000rpm程度を示している(T-140Vは国産車とメーターの配置が左右逆、しかも25km/h刻みなんだ)。数台の乗用車をパス。気がつくと80km/h近くである。フルスロットルなんぞ、鞭は入れていない。5速でこのぐらいだから、というのではないが、すごいトルクの固まり。それ以上に感覚として車格が800ccぐらいのバイクになっている感覚が支配する。
 T君に会えずそのまま帰る。歯長(はなが)峠でもタイトなコーナーだが、かなりのハイペース。フロントが19インチのために、エイ、ヤッ!と腰を入れ、ハンドルバーを切り、結構体力勝負だ。
 しかし、本当にこれが今までのトライアンフだろうか、という感覚になってきた。およそ1時間半のライディングであったが、かなりパフォーマンスが上がって来ているように感じた。


2001年 1月 6日()はれ
 3日に所用で松野町まで走った折、2段加速型のエンジンになっていることに気付いた。第一の原因は、どうも燃料パイプを交換した時に、キャブレタートップのスロットルワイヤーのアウターがきっちりと入っていなかったことであった。その確認の走行はその日のうちに終えていた。スプリットファイアーのSF-405Dは良好である。
 久々の好天だったので、前述の遮蔽板の件と合わせて、セッティング確認の意味も含めて宇和のT君宅まで走る。普段通りにスタートしても、どうしても法華津(ほけつ)峠にかかると4速が使いづらくなる。3速まで落とす必要もないときにグズるのである。回転数は2500rpm程度。前の自動車がのろい(といっても60km/h)から、少しずつ間隔が開いたり狭まったり、こちらはエンジンが何ともおかしい。こういった感じで往路を走った。
 帰り際、T君との話の中で、グズる時の回転域での燃料供給不足が生じているのではないか、という結論を導き出した。ずっと前に彼が乗っていたカワサキのW1Sも、エアクリーナーをはずしたときにちょくちょく起こっていた現象だ、という。
 わずかなガソリンを増やすためにはどうするか?。ウム〜、最後に手を出していないところ、それはニードルのポジションを変えてやることだ。これによって、若干各ジェットのスクリウを調整しなければならないかもしれないが、大きな変化ではあるまい。そこで、ポジションを真ん中の3番目から一段下げてクリップをセットした。純粋な円錐状のテーパーニードルだから、この程度でいいはずだ、と自分で決める。変更までわずか10分。ずいぶん慣れたものだ、と感心。
 始動時にこつが必要になった。温間時の再始動はスロットルをあおらないようにした方がいいようだ。冷間時はいつもと変わりない。ただし、少しでもエンジンが(暖かい程度に)冷えるとチョークを要求する。この点だけが変化した点だ。
 さて、宇和町内の国道56号線から変化が出始めた。グズりは全くなくなっている。しかも入りづらかった4速、5速が気持ちよく入り始めた。エンジンがすさまじく軽い。う〜ん、回転そのものでもなく、何というか、スッスッと行くんだな。ちょっと言葉で表現できない。12月24日のインプレにクイックさが加わった、とでもいうか、そんな気分になってしまった。
 宇和島についても、まだ「前へ!」の気分だし、「次、行くぞ」になってしまい、自分自身が大変な思いをし始めてくる。とにかく寒いこともあるが、バイクを降りたくないのだ。もう少し乗ってみたい、もう少し乗っていよう、いいな、という気分であった。

考 察
 以前、ポイント点火の時に使用していたボンファイアという高性能コンデンサーがあった。現在はRD-250、GX-750に使用している。それ以前にスワーラップ(スワール&アップの意)という商品名の切り欠き状の傾斜をかけたフィンをインレットマニホールドの中に装着して、混合気を渦状にしてシリンダーの中に送り込むものが売られていた。僕もXS-650に装着して、かなりいい結果を出していたのを思い出す。もっとも、その当時ボンファイアがあれば、これも無視できるものであったが、スワーラップ自体はいいものであった。サバンナロータリーの13Bエンジンで非常にいい効率を示していた。
 先日は商品名は忘れたが、ハーレーのスポーツスター用のサイレンサーのディフューザーパイプとして口径の異なる同心円のパイプを一か所で内部内部で止めている製品を雑誌の写真で見た。音量は変わらないが音質が変わる、というなかなかのものであるらしい。
 これらの点を考えれば、再びパイプを考えてもいいのではないか、と自分勝手な考えを再び巡らせた。あれあれ、堂々巡りではないか、とお叱りを再び受けるように感じるが、今度は出口、今まで触れなかった根本の「もの」が存在するのである。
 それは、排気系、そう、マフラーである。現在、僕のT-140Vではノーマルに近い容量、排気効率がまぁまぁの長いマフラーを装備している。それにフィットさせている吸入システムなのである。まさしく今回は、インレットのパイプをやると本当に堂々巡りになるので止めたが、インレットのパイプ加工は、排気系が変化したときは簡単に行える実験方法として有効なように感じている。
 したがって、今回の実験での結果は95パーセント成功であろう。トライアンフではあまり使われないが、排気をスーパートラップ、あるいはマフラーを短くしてエキゾーストパイプを計算ずくで高回転型にし向けるようにすると、今回の遮蔽板は取らなければならない、かもしれない。けれども、ある程度のマフラー容量を確保しないと、現在の国内でのストリート走行は困難を極めるために、極端な小口径の短いマフラーはトライアンフの場合、ふさわしくないのは明白である。
 では、見かけの30mm径の時にどうしてこのことを記さなかったのか?。おそらく疑問に感じられた方がいらっしゃるはずである。あえて出さなかったのは、国産のSRにおいてもそうなんだが、まず最初にエンジン関係に手を付けるのはマフラーだろう、と思うのだ。このトライアンフにも購入して2年もすると、オリジナルのマフラーは水抜きの穴が無いために穴が開いて使い物にならず、息子が「やかましいバイク」というワッセルのメガホンを装着していた。キャブがAMALの頃、何しろパイロットジェットが最初から着いていない。筒抜けのワッセルのマフラーでさえガスが濃かったんだ。それで千葉のストーリーの古谷さんと相談して#25のパイロットジェットを装備した。この状態からワッセルのマフラーがダメになったんで、今のマフラーに変更したら調子が悪くなった。もちろん、スクリウの調整だけでこれはOKになったんだが、トランジスタ点火にした途端に今度はプラグがダメになる。こういった、いたちごっこの繰り返しだったんだ。
 で、当初AMALをMIKUNIに変更することのみに終始したのは、他を変更せずにキャブレターだけに集中したかったからだ。それでもここまで1年半以上の期間が必要だったんだ。その上に排気系を同時にやるとどうなるか?。資料も何にもないところで迷路に陥るだけになってしまうのだ。このページにそれを出すことは出来ない。
 ようやく、この仕様でここまでになった。次に排気系に手を加えるとどうなるか、ここ暫くは静観したいし、この仕様でしばらく乗ってみたいんだ。次のお知らせはいつになるか分からないが.... 。

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