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ロントフォーク交換(その2・フロントハブとブレーキ関係)
あれからどのぐらい経ったのだろう、と長渕剛の乾杯ではないが、完敗を
喫するのではないか、と思われるほどのT-140Vの状況だ。2003年も押し迫った頃、ようやく落ち着きを見せてきた。といっても僕自身がである。
フロントフォークを交換したのが2003年の始め、そこからタンクを塗装に出し、夏過ぎにフロントハブをバラし、ディスクプレートの修正を行った。その
後、やろうとすればするほど「やる気」が遠のく状態が続いた。燃料コックの一件から、今年はこれまで、にしてしまいたいまでになってしまった。
一方のSRはロックハートのオイルクーラーを装着してから不思議に調子が良くって、もっぱらこちらばかりが相手になってしまう、そういった状況が続いて
いたところだ。
そんなこともあって、すっかり記載したつもりのものを忘れているのに気付く。あわてて、ここに記載することとなった。
● 話を遡らせて
どこまでになっていたかな。そう、フロントフォークのレッグを左右入れ替えたところ、ディスクブレーキの作動が上手くない。そのために、ハブを分解し
た。その後キャリパー周り何とか、というところでそのままになっていた。
コヴェントリーからのものは流石に品がいい。
ところが、精度が元に戻ると、今までよかったものが急に悪くなる。今度ばかりはフロントホイールのハブ部分の組み付けにすっかり
参ってしまって、組み付けながら当時のメーカーを恨むことに終始した。
が、時間はかかったものの、いざ組み付けになると、なかなか考えられた方法だ、ということが見えてきた。
問題となったフロントディスクプレートとキャリパーの間隙、プレートをキャリパーのパッド間の中心に位置させるにはどうすればいいか、ということを主に
記載したい。
● フロントフォーク交換前
センターの出ていないフォークレッグから今の純正に交換する前に、フロントディスクブレーキのパッドをデイトナの赤パッドに交換してた。どうしても入ら
な
いため、面取りと初期なじみを兼ねて、ガラス板の上にペーパーを敷いて、ほぼ水平になるように気を付けながら、パッドを削った上で装着した。
ところが、フォークレッグを交換したところ、ディスクプレートとキャリパーの間隙が取れない。調整するにも、ロックナットがほどけず、苦労してきたとこ
ろだった。
で、このことは別項で紹介しているが、ここで、フロントホイールハブのベアリング取り付け状況をおさらいしておきたい。
○ ハブの右側に内側のベアリング受け(リテーナー)を軽く打ち込む。
○ ベアリングを打ち込む。
○ 外側のリテーナーをサークリップの溝が出るまで打ち込む
○ サークリップを装着する。
○ 左側からシャフトを打ち込む。これで右側のベアリングが装着される。
□ 左側のベアリング受け(リテーナー)を装着する。
□
ベアリングをベアリングアウターストッパーのネジが切ってあるところが見えるまで打ち込む。
- 打ち込んでいくとカンカンという音がしているが、スピンドル(シャフト)に「これ以上打ち込めない」という張り出しがあって、それにベアリン
グが当たった時
からときからガツガツという音に変わる。そこで打ち込みを止める。
- 特殊工具が無い場合はシャフトがすでに右のベアリングに貫通しているため、シャフトを金床などの上に置いて、ベアリングの周囲を少しずつ均等
に打ち込んでいく。フロントフォークのオイルシール打ち込み工具などが使える。
□ ベアリングアウターストッパーをねじ込んでおく。
□ ベアリングセットナットをねじ込む。
▽ シャフトを回して軽く回るかどうか確認する。
- 軽く回らない場合はまず右側からシャフトを叩いてみる。
- これで軽く回るのなら、この位置でベアリングアウターストッパーの穴にポン
チをあてがって軽く叩いて回り止めとする。
- ベアリングセットナットを締め込む。
- もう一度軽く回るかどうか確認して、セットナットをホールドし
たまま、アウターストッパーを緩めてロックする。
とこういった状況で組み付けられているのが分かった。この方法においては、ベアリングがベア(ノンシール)のタイプに有効であり、僕のようにシールタイプ
に交換すると、若干左右のギャップが出てくる。その調整の方法に思わぬ時間を費やすことになるのである。
● スペーサーを作る
こんなことがあって、フロントホイール取り付け最終時点ではディスクプレートとキャリパーの間隙が内側へ1mmほど入り込んでいるのが確認できた。
フロントフォークアウターにあるキャリパーの取り付け部分を削るなんて芸当はできない。その時はハブスピンドルの調整方法もおぼつかない状態だったの
で、さしあたって、宇和のT君にお
願いして、0.5mm厚のアルミ板でスペーサーを3枚作ってもらった。 ディスクプレート取り付けは4本のボルトとナットだから、その内の2か所が
フィット
していればいいので、穴の加工は若干楽になる。
こういったものは、若干広めのアルミ板に柳刃のはさみで切り取りした方が仕上がりがキレイなのだが、コンパス状のカッターの方が速い。が、仕上がりはバ
リ取りなど面倒、という痛し痒しだ。
左側がスタンプ方式で写し取った型紙。右は作ったスペーサー。
◆ 取り付けができない
フロントホイールのスピンドル取り付けは終了している。別項で再塗装したディスクプレートを装着したものを取り付けることにした。2003年 9月
7日の日曜日、午後3時過ぎ、暑さに閉口しながら青空工房を開く。
簡単にヒョイとホイールを持ち上げて、下へゲタを履かせてクランプで止めればOK、ものの20分だ、と考えていたが、一向にスピンドルが収まる(凹型の
切り込みの)ところへ
収まらない。数回試みるが、右側に大きくスピンドルが出る。ディスクの位置は元の木阿弥。そんなバカな... 。
お先真っ暗、イギリスの人の考え方を恨む、と同時に、暑さのためか、SR400のフロント周りに交換したい、とまで考えを巡らせる始末。マジで投げ出し
たくなってしまう。すでに全身から汗
が吹き出している。気温は32度だ。今は9月だゼ!、意識が朦朧となりながら、ベアリング修正のことを思い出していた。
打ち込みでサークリップのあ
る方は右、左?。お
いおい、進行方向に対して右か左かだろうが、バカタレ。そう、それなら右だ。右にベアリングとスピンドル
を打ち込んで左のベアリングを打ち込み、アウターストッパーで受け止め、その位置でセットナットをかけたのだ。
それが、今はスピンドルが右に出ている。それな
ら左のアウターストッパーとセットナットを緩め、右側からスピンドルを少し叩いてやればいい。そう、それは分かっているのだけど、それをやっても以前無理
だったのではない
か。そんなことはない、今度修正を加えてセットナットが動くようになったではないか。それに、国産シールベアリングとイギリスのノンシールのベアリングと
の幅の差も考慮されていない中で修正作業を行ったのだから修正はできるはずだ。間違いはない。
● 上手く行ったが...
早速アウターストッパーとセットナットを緩め、スピンドルを右から軽く叩く。右は明らかに引っ込んだというところで止めて、取り付け。お見事!。
でも、おかしい。今度は左に出過ぎる。おいおい、またかよ。すでに、規定トルクと思しき「感トルク」で締めつけたクランプを外す。
今度はセットナットを緩め、スピンドルを左から軽く叩く。アウターストッパーとセットナットが締まって、たたずまいを見ると、当初の位置になっている。
が、今度はホイールの
回
転にガタが出るので、アウターストッパーを若干緩める。再び装着。今度は上手く行ったのだが、ディスクプレートとキャリパーの間隙が少し気になる。
走っていないのだから、この位でヨシとする。いや、どうも気分が悪い。スペーサーも作っているのだから、もう少し追い込めるのではないか。
その前に、考えをまとめよう。今の状態なら、0.5mmのスペーサーを入れて、左へディスクプレートを動かせばいい。それは分かっているのだが、どうし
ても通常の組み付けでも補正無しで出来るのが順当ではないか。再度クランプを外し、セットナットを緩め、スピンドル左から叩く。やりすぎは元の木阿弥だか
ら、動いたか動かないかのところで叩くのを止める。
またまた装着。そう、今度は満足できるところまで行った。
ディスクプレートのさびの部分でシャッシャという音がするが、回転はスムースだ。これでしばらく乗ってみて、フロントフォークのオイル交換の時に、再び
クランプを緩め、セットナットの締めつけトルクの修正をすれば、ディスクプレートがキャリパーの間隙のセンターに来るはずである。それでダメな場合は
0.5mm厚のスペーサーを1枚入れれば完全になる。
● まとめ
後日、コヴェントリーの清水さんに電話。氏は僕以上の項目にわたって、この部分に対しての諸々のよからぬ項目で、僕と同様のことを考えられていたよう
だ。
僕の場合はディスクプレートの状態が良かったことと、ハ
ブのセンターが出ていたこと、この点が幸いして、ほぼディスクプレートの取り付けは全体のスペーサーのことを考えればよかったが、清水さんは0.4と
0.6mm厚のワッシャーを作っていらっしゃるとのこと。
つまり、ディスクプレートの歪みが取れない場合とハブのセンターが出ていない場合は、4本のディス
クプレート取り付けボルト1本1本に違うスペーサーが入るという仕組みだ。0.4mmと0.6mmを合わせれば1mmとなる。最大、ディスクプレートと
キャリパーの溝との間隙は1mmというのは考えすぎだろうか。が、通常の調整範囲はこの間で収まるはずだ。
ただし、これとても、スピンドルのベアリングの打ち込みが完全な場合でのこと、これでも僕と同じ作業の上に、ディスクプレート取り付け段階でテストを繰
り返さないと
ならない。そのためだろうか、フロントホイールのスピンドルには左右エンドの表面に凹状の窪みが作ってある。これで振れ取り台に乗せればOKなのだろう
が、国産の振れ取り台はスピンドルの両端をくわえ込む形になるから無意味かもしれないし、タイヤを装着した上では、振れ取り台に乗せることは無理だ。旋盤
加工でのスピンドルのセンターポンチということだけかもしれない。
本当のところ、この微妙な調整をさせる、というか、この方法を採ったイギリスのエンジニアはなかなかの者とするか、何やってんだバカ、とするか。
現在の国産車のこの部分の調整は、現実としてベアリング交換の歳には少し難しい面もあるのが事実だ。特にインナースペーサーのポジショニングと片方のベ
アリングの打ち込み具合
によっては、スムースな回転が得られない場合がある。その点、右に打ち込んで左へ出してロックする。この方法を数回行って決定すれば、ベアリングが固定さ
れるため、相当長期にわたって性能が維持できるのではないか。おそらく彼らはそこを採ったのではないか、と考えるのだが、これは褒めすぎかな。
ようやくフロントホイールが確定したので、次はキャブレター周りに移ることにしたい。