そ の後のSUDCO MIKUNI(その4)

ま たしても
 2004年4月、春のBritish Runから帰って、何かしらT-140Vの調子がイマイチ、ということに気付きました。その最大の要因はSUDCO MIKUNIのキャブレターセッティングにあるのですが、過去、さんざん結果に満足、というものを得ていませんから、前回で「ほぼ確定」を打ち出したとこ ろだったのです。
 そういったなかで、やはり何かが不足していることを感じたのです。以下に記したものを一読すればお解りになると思いますが、今回の結果からして、こう いったリプレースパーツを装着した場合などは「1年間ほどの期間」で結果を得るべきでしょう。表面からは見えないキャブレター内部の動きですから、人間と い うものは、このようなものに早急に判断を下して「こうなんだ!」と断言すべきではない、ということを少しばかり感じました。

どういったことから...
 さて、このキャブレターの不思議に再びブチ当たったのは2004年の4月初めのようでした。どういった状況であったのか?。語るも涙ではありませんが、 以前からのスッタモンダの繰り返しを行っていたに他ならなかったように感じます。
 4月17・18日の両日、British Runで香川の大串までを往復して、結果として良好だったのですが、「どうして高速道路を通る気にならなかったのだろうか?」とか、「そのくせ一般道を7 時間も走っても体の異常さえ訴えないのはどうしてだろうか?」、などなど、一つずつまとめてみると、どうやらキャブレターそのものの機構的な特徴を僕が習 得していないのではないか、と纏めるに至ったところです。

 もっとも、カッタウェイにまつわること、ニードルクリップの位置、メインジェットの決定などは過去から十分にテストしましたから、この部分はほぼ大丈夫 です。この簡単なVMキャブレターの他の機構的な特徴は何か?、そこが掴めなかったわけです。それに加えて、このSUDCO MIKUNI 32mm VMキャブは、装着当初より、取り付けた成果などの資料が全くない状態から始めたわけですから 、我ながらよくやってきた、と思っていたところでもありました。
 キャブレターそのものをじっくりと眺め回していた時にふと気付いたことがありました。いや、うすうすは気付いていたのですよ。それでも決定的なものは感 じていなかったわけです。

 いかがでしょう?、モンキー用のケイヒンのPWなどを見ていただければ解るのでは... 、と思いながら、気付いたことは、「これって、ツーサイクルのキャブとチャウ?」ということでした。4年前の花園村でスズキのγ250のキャブをT- 120Rに装着して、なかなかの走りをしている方に対面しました。そうなんです。基本としてはSUDCO MIKUNIのキャブも汎用ですから、ツーサイクルにも応用できるはずなんです。
 同様に、AMALのコンセントリックにしてもツーサイクルに装着しているものもあったわけです。それだから、純然たる意味で、SUDCO MIKUNIのキャブは、このT-140Vにジャストフィットした基本セッティングでリリースされたものではない、ということに落ち着きます。

 しからば、同様のツーサイクルツインモデルを引っ張り出してみると、あれあれ、ヤマハのRD 400辺りがスゴイ一致ではないか、ということに気付きました。
 ツーサイクルのパラレルツインは180°クランクで、各工程直ちに作動します。それに較べて360°クランクのフォーサイクルですから、「作動行程に対 しての排気量ともほぼ2倍と考えれば、そこそこツーサイクルの応用が効くのではないか」と本当に稚拙な素人考えがフッと浮かんできました。
 T-140Vの今までのセッティングは先ほど記載した数点は全く動かしていません。残るはパイロットジェットのみです。そこで稚拙な考えを当てはめてみ ますと次のようなことが表面化しました。
 RD400はパイロットが#30、メインジェットが#220です。250はパイロットが#22.5、メインジェットが#220です。あれ、待ってくださ いよ。そう、これって、僕のT-140Vのセッティングにほとんど近いではないですか。排気量からすると、T-140Vが744ccですから、RD400 とほぼ同じ数値を示します。まさか、といいものを感じました。

 さ、5月25日、再度プラグコードを検討することから、オートショップ・ワタナベへPLOTのカタログからコード端子を発注しに出かけたとき、「さっ き、TWいじってたのがいたけど、ここから下りたヤツ?」と聞けば、「いや、違う」とマスター。「TWぐらいだったら簡単だよね」、と言うと、「勝手に付 けて調子が悪いから、って来られるから弱るのよね」、「第一にエアフィルターにしたら、下から大きくしないといけないんだから...」。

 「今、何て言った?」と僕。「今まではエアクリーナーボックス内の空気を通していた状態でのセッティングで、フィルターにしたら(キャブの)後ろは思 いっきり空気の中、ダイレクトで空気が入るんだから」。
 そうか、すっかり忘れていたことでした。でも、パイロットジェットを大きくしていったら、プラグが燻りすぎる、という結果を今まで得ています。これはど ういったことから起こることだろうか?。それに対して、「燻るのは普通として、今の燃料の状態からすると、プラグの碍子は白っぽい感じになるぐらいを全開 の時とすればいいから、アクセレーションのいい状態で止めることだね」ということでした。

 フムフム、そうすると、今のパイロットジェットをRDより少し大きい#27.5にしてみよう。それでダメなら気分のいいときに再挑戦してみたい、と決め てかかりました。そして「暖気が終わったところで、エアスクリウを1回と1/2回転ほどの位置から締め込んだ方向で回転が上がるなら、パイロットジェット の番手を上げないとならないから... 」ということも付け加えていただきました。

 何か大きな自信のようなものが生まれてきて、僕自身もやってみよう、と感じ入って、聞いた足で早速取りかかりました。アバウトから始めるんだし、まずは #22.5を#27.5に変更することにしました。すでに慣れた作業ですから20分で完了です。
 どうして#27.5か?、というと、#25と#30ではさんざんやりました。やった時期はニードルポジションから、パイロットジェット、でさんざん繰り 返し、その結果、メインジェットの番手に移るまでにニードルのポジションとインマニの長さは確定した結果を得ることが出来ました。恥ずかしいことながら、 パイロット系を最初に決定すべきだったのでしょうが、結果があまりに変化するため、決めやすいものから決めてしまった、というのが正直なところです。で、 一番成果が上がりつつあったのが#30のパイロットジェットの時だったわけです。#45ぐらいにすると、メインジェット関係なく走ってしまう結果も得てま したから、#30からどの辺まで下げるとどうすることも出来なくなるその限界が#22.5だった、というところです。そのため、#25よりは#27.5を 装着しようとしたところです。
 一応、キャブセッティングがどういったものか、下記の表のとおりです。

項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#220
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#27.5
キタコより(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nテーパーラウンド 間もなくラウンドタイプに交換予定
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

 この仕様で、まずはスクリウ関係の調整ですが、アイドリング関係は#22.5の時のままにしました。始動性は全く問題ありません。むしろパイロット ジェットを#30にしたときに近いものがありま す。
 ところが驚いたことに、アクセルを捻っていってもストールしないのです。もしや... !?、期待が高まります。暖気が終わったところで一度エンジンをストップさせ、ライディングの準備に取りかかります。夕暮れが近ずいていますが、薄暮時ぐ らいになる時間帯ですから、いつものテストコースへ入れることとします。
 エンジン快調、つながりの悪いクラッチを除いてほぼ万全です。務田の坂も一気に登り切り、若干ヒンヤリとした空気を受けながら、「やはりトライアンフ乗 りだな」と自分の特徴を感じています。現実にSRに乗っても、ま、SR500を操る気分にはまだまだ乗り切れない気分ですから、やはりトライアンフが フィットしている んでしょうね。

 気分良く帰ってきてキャブのスクリウ調整を行いました。帰った時点ではアイドリングが900ぐらいに落ちてます。何とも頼りのない音でポロポロ回ってい ますから、近代ウエポンを装備している手前、標準より若干高めの1100回転程度にしておきたい、という気分で作業を進めます。
 右のシリンダーから始めることとします。理由は簡単、SUDCO MIKUNIではエアスクリウは左右のキャブとも右側に装備されているからです。エアスクリウを1回と3/5回転程 度の今野状態から締め込みます。途端に回転が落ち始めます。ありゃ〜、これだけ変化するのなら、今度は開いてみよう、ジワリ〜っと左へ回しますと2回転付 近でスッと回転が上がり始めました。続いて左のシリンダーを行いますと、右よりもクリティカルに反応します。結局、この時点で1000回転付近になりま す。それから、アイドルスクリウで1200近くに上げて、再度エアスクリウの確認。やはり、2回転戻し近くが一番調子がいい状態になります。
 が、このキャブの特徴ですが、この戻し 回転より1/5から1/4回転締め込んで止めることとします。理由は始動性の関係から、ウォーミングアップにスリーシーズンで最長5分を要したとしても、 2回転近くではどうしてもギクシャクしてしまうんですね。調整不足といえばそれまでですが、リプレースのツーサイクル用に近いキャブですから、この程度の ことはアバウト状態として、平気で行っていいのではないか、と判断します。
 アイドリングを1100程度にして、数回のプレッピングの後、調整を終えました。

6月1日

インターミッション
充填効率について
 僕が不思議に思うのは何か?、というと、それはリプレースキャブレター単体を見て常に話題に上るのはインレットマニホールド側の口径にのみ注目が集まっ て、キャブの善し悪しなどが比べられるのではないだろうか、というところである。
 実際にキャブレターを装着する時点になると、SRにFCRなら、その口径は39mmを指定する場合も「OK」な場合もあり、この点は「そのとおり」とい うべきところもあるが、現実には空気採り入れ口も重要な意味合いを持っているのではないだろうか、と最近感じ始めた。
 このことは話題にも出ないし、雑誌の記事にもあまり紹介されない。SUDCO MIKUNIのセッティングが煮詰まって来始めると、この点も考えなければならない、と新たな問題点を投げかけてきた。
 ことが起こったのは2004年の6月も半ばに入ってだった。
 ちょうど、K&Nのエアフィルターから、SUDCOの付属品の太鼓型に交換したとき、別項でも記載しているとおり、プラグが昇天してしまったの だ。急遽、K&Nに戻して、プラグをBR7ESに交換して事なきを得たが、今度は発火面の金属部分のくすぶりが異常に多い。この時点で、キャブレ ター側の要求として、今のテーパー型では空気の充填効率が悪いのかもしれない、と気づき調査をしてみることとした。
 キャブレターの効率っていうと、キャブレターが作動して混合気を作っ て、シリンダーの中に入れて爆発させる、その混合気の作り方が如何に上手に行えるか、で決定されると思う。そのため、その法式なり形状なり機能などがとや かく言われるところであろう。
 ところが、多くのキャブレターの作動自体はノズルから吸い 上げられるガソリンをテーパー状の針で、ピストンと呼ばれる空気量調節器で空気の量を各々加減 して混合気を作ることにある。キャブレター=気化器と表現しているが、実際は噴霧器とか霧吹きなのである。
 そういった動作をするキャブレターだが、その機能云々が評 価されるのは混合気をシリンダー内に如何に効率よく導くか、に注目が行きがちだ、と考えるとこ ろである。
 ところで、キャブレターより前に位置する大気の吸入状態は どうなんだろう?。ここを論じたものは雑誌などにはあまり出ないようだ。出したところで、大気 のキャブレターへの導入状況などスモークでも焚かない限り難しいし、実際にガソリンを気化して作動する際に、空気に色を付けろったって、混合気を爆発させ ると何も残らなくなる。ジーゼルエンジンの噴射爆発の映像化に似たようなものをアマチュアが確認出来るわけがない。
 多くのリプレースキャブでは大小2種類のボディーが使わ れ、各々3種類程度の口径が用意されているのではないだろうか。
 つまり、FCRのように、インマニ側も空気採り入れ口側も 別のパーツを装着してコントロール出来るものはいいが、通常のキャブレターではこの部分が(大 小の)一定だから、アマチュアの場合だと経験とカンでこの部分と空気の流量とを勘案して、レースならファンネルの形状と長さを選び出し、その後、ジェット 類を選び出し、根気よくセッティングするところである。
 しかしながらSUDCO MIKUNIでも大気の吸入コントロールできないように、大半のキャブは吸入側の口径に頼っているのみではないだろうか。後ろの空気採り入れ口の状況と か、その口径などはほとんど論外になっているのが現状だ。
 僕のT-140Vに装着しているSUDCO MIKUNIのVMキャブの空気取り入れ口の外径は57mmである。この口径を考え、先ほどのプラグの状態、キャブレターの機能を満たす充填効率の面など を考慮すると、かなり大きいエアフィルターが必要ではないか、と考えるところである。

  次は夏本番の下、エアフィルターを交換してどうなったかを報告することとします。

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