最良のPower Book 5XXに近づける
こ とは突然に
 2003年も9月に入って、秋の面影なんて微塵も感じないような暑い日々が続いていました。Power Book 520cの不調を訴え始めたのはちょうどその頃でした。
 最初に遭遇したのは、フロントカバーが止まっているにもかかわらず、下のトップカバーに触れるのです。そのために、ディスプレーを閉めて後ろから見ると 隙間がゴボッと開いています。早速バラシテみると、スピーカーグリルのカバーのヒンジ部分が割れているではないですか。まいりました。
 再度エポキシで補強したのですが... 、やはり無理でした。補強部分はOKなのですが、その近辺が耐えられません。
 なぜだろう?。この時は知る由もなかったのですが、「5XXにはRev.AとRev.Bがある」というのを思い出しました。しかし、Rev.Aにはこの ような、そしてRev.Bはここが修正されたとか違っているなど、その実体は解らず終いでした。

今度の540c
 それらの結論を一気に解決の方向へ向かわせたのは、ヤフオクで2003年 8月21日に落札したPower PC化した540cでした。
 それでも、出品者の方には申し訳ないのですが、このまま使うことには忍びないな、と思わざるを得なかったのです。多くの付属物が揃っているにもかかわら ず放出された真意は不明ですが、この状態で点検清掃して何とか使ってやりたい、落札から5日後に商品を受け取った僕には感じられたのですが... 。
 とにかく汚い!。そう!、キタナイ汚れではなく、使用頻度の高さによるくたびれにも似た汚さがこのPPC 540cには見受けられました。付属物の状況を見ると相当に使用(酷使)していたのだな、と直感した次第です。元箱入りですから、こともあろうか、取扱説 明書の中には今としては相当高額な領収書までが入っていました。
 今回のブラックバードはこのようにして我が家にやってきました。これを使う?、と〜んでもない。「このまま使ってやりたい」と言った途端に、現実はそれ を許しませんでした。
 もちろん、先のハードオフで購入した540cで経験したパニクリはもうゴメンです。過去540cそのものをパワーアップすることが盛んに行われたが、そ の後550cが国内販売のみの仕様でリリースされましたから、この時点で540cをPPC化するのが一番いい方法でした。
 550cこそが筐体の色からしてブラックバードだったろう、と思います。そのCPUはLCの付かない純然たるMC68030が与えられたし、サードパー ティーが嫌がるドーターボードで全てが支配される形式のMC68040 Power Bookとしては最高だったのですから、550cがリリースされ始めたときに100MHzのPPC 603evのアップグレードカードをApple自らがリリースしたことは非常に好ましいことであったように思います。
 残念ながら5XXシリーズ全般にわたってACアダプターとのコネクターの形状、インテリジェントバッテリーなど、一部分弱いところもありますが、る相対 的に次の5300よりは格段にいい素養を持っていた、と言っても過言ではないと、この5XXシリーズは今でもそう感じています。
 今時こんな古くさいことを持ち出さなくったって... 、とおっしゃるな!。それまでの角張ったPower Bookはそれなりによかったのですが、5XXシリーズが持つ流線型のフォルムは多くの方々に愛されました。
 ディスプレーのホールドに若干の不安はあったのは事実ですが、その部分が次の5300シリーズで輪をかけたように「ダメ」の烙印を押されたのは僕以上に 多くのユーザーを悩ませたことか計りしれません。残念ながら、5XXシリーズがあまりに高価すぎた。それがPower Bookから多くのユーザーを去らせた一因ではないか、とも考えるところです。
 が、いずれにしても、Duo以上に5XXシリーズの良品が巷で見かけなくなってしまったのが実際のところです。

PPC 540cを分解する
 汚いままで使ってみますと、ディスプレーが妙に赤い色合いなんです。これっておかしいんでないかい?、というほどではありませんが、以前の520cより は若干きれいかな、という状況、この時点でTFTはあきらめることにしました。
 今使っている520cのヒンジ部分のことがありますし、先に520cのディスプレー部分を分解してみることにしました。「アッ」と叫びましたね。何と今 使っているDuo280cと同じシャープ製のパッシブマトリクスだったんです。どうりでTFTと同様の透明感のある青みがかかった、作動させて時間が経つ とパッシブマトリクス特有のものが薄くなってDuo280cTFTと同じ状態に近づくのが納得できました。
 今回の540cは最初期のモデルのようで、ホクシン電気のディスプレーのようでした。東芝のものより若干赤みが少ないようにも感じます。いずれにして も、以前の540cとDuo2300cの東芝製TFTでは赤みが強くなった経験があり、この部分は520cのシャープ製パッシブマトリクスに交換します。

Power Book 5XXの各部を検証してみる

第1幕 筐体
 筐体には銅色の導電塗料が塗装されたものと、そうでないものが存在します。残念ながら、いつからいつまでが、という判断はできかねます。大方の見方は導 電とそうされたものは前期、されていないものは後期に分けられるのではないでしょうか。
 一度経験があるのですが、導電塗料を塗布した筐体に後期のボード他を組み付けして作動させたところ、どうもおかしい、という気分になってきてしましまし た。そう、どことなくなんですけどね。もっとも、その逆はやっていないので結果が出せませんが。
 思うに、シールド板だけでまかなうことができるとされたため、後期のモデルでは合成樹脂の筐体にシールド板だけでよしとしたのでしょう。このことは不必 要とされたディスプレー取り付けヒンジの金属プレートも1枚だけにされたのではないでしょうか。
 蛇足ですが、アセンブルは最初はUSAメイドですが、ワールドワイドでアイルランドメイド、最終とおぼしき極東はシンガポールメイド、などに分けられま す。個人的にはUSAメイドが好きですけど、シンガポール工場などになると、今流のエッジなどがシャープになって少しソフトさが欠けるような気がしてなり ません。
 現用はアメリカメイド、を使用しています、というか、ベースの520cがそのようになっていた、という次第です。

第2幕 ヒンジ部分 
 おそらくですが、520cをこのまま使いつづけるとディスプレーのスピーカーグリルはいくつも交換されてしまうのは言うまでもありません。パーツがほと んどない今ではかなわないことです。何とかしなきゃ... 。
 今回、ヤフオクで落札したPPC 540cのディスプレー部分をあげた時、その反発力のなさにびっくりしたのを思い出しました。
 ヒンジ自体の優劣からすると、確かにRev.Bに軍配が上がります。が、丈夫さだけで優劣をつけるわけにはいきません。後述する液晶の重さの状態からも やむを得ずの所もある、と理解していただきたいのです。
 しかし、私自身はRev.Aの弱さが残るヒンジの方が好ましいと考えます。ディスプレーの傾斜を150度以上に傾けてタイプする人はいないはずです。 Rev.Aのヒンジはその辺りからディスプレーが水平に倒れるようになっています。それほど弱いスプリングです。
 その角度になるまでは過不足なく働きますから、私としてはRev.Aのヒンジの方が5XXシリーズのトップパネルに対して壊さない強さ(反発力)と思う のです。

第3幕 ディスプレーホルダー
 まさか、この部分は変更がない、と思っていたのですが、さにあらず、この部分が一番の変更があるようです。
 つまり、スピーカーを独立したパーツとして考えていたのが初期型、スピーカー2個が一つで、プリントハーネスまで一緒にしたのが後期型です。
 幸い、この頃は音質云々が言われない時代ですから、スピーカー交換もなかったのでしょう、初期型のホルダーなら、部品として購入したスピーカーがパン ケーキ型で直径と厚さ(高さ)があえば音質のいいものに交換するところです。

第4幕 フロッピーディスクドライブ
 ソニー製と三菱製があるようです。ビーブ音がきついのが三菱製と思って間違いがないようです。一概にはいえませんが、デスクトップ機でカツンと音がして くわえ込むような方式になった時期から5XXシリーズも変更になったのではないでしょうか。
 そして、ソニー製は少々弱い、と私には感じるところです。

これらのことを考慮して、現在の520cをPPC化するために、変更使用したものを以下に記します。
(あくまで改造ですので、 Appleの補償対象外となることはもちろん、自己責任となることをご承知おきください。)


これが初期型のディスプレーカバーです。
少々分かりづらいのですが、スピーカーコードが途中でコネクター(白い部分)によって接続されています。
おそらく、音が出なくなった場合、スピーカーだけが交換できる、と当初Appleの技術陣が考えたのではないでしょうか。
マザーボードへは最終端子が一度縦に回転して取り付けられます。ディスプレーの開閉に対してリボンハーネスの余裕を見越していたのではないか、と考えまし た。
今回はこのモデルを使用します。

こちらはスピーカーコードがダイレクトにリボンハーネスに装着されてい ます。多くの方々がお持ちの5XXシリーズはこの形式ではないか、と思います。
マザーボードへの接続端子もそのまま上から下りる形式です。

下のリビジョンBと同じメーカーのリビジョンAのディスプレーヒンジで す。
動作(シャフト)部分の材質が本体の材質と違います。
何より違うのは、リターンスプリングの巻き数がリビジョンBより少ないのがお分かりいただけると思います。
このため、このリビジョンAのヒンジではディスプレーを水平近くにすると、勝手に倒れることがありますが、個人的には、液晶表面と一体になった(フロント パネル部分の)ヒンジ取り 付け部分が破損するよりは好ましいと思います。
今回は、リビジョンBのシャフト制御プレートとともにリビジョンAのヒンジを使用しました。

リビジョンBのヒンジです。
上のリビジョンAよりは数段強力です?。
というのはリターンスプリングの巻き数が多いことでもお分かりだろうと思います。
シャフト押さえのプレートはアースも兼ねているようです。
しかしながら、強度が増した分、ディスプレーカバーのヒンジ取り付け部分の破損は急激に増えたようです。

後期モデルの筐体です。下の筐体と違う点は、銅の粉体吹き付けの導電塗 装が施されていないことです。
完全なテストは行っていませんが、どうも5XXシリーズでは導電塗装の施していない方が調子がいいようなので、今回は520cとして購入したアメリカメイ ドのこのタイプの筐体を使うことにしました。
確認は取っていませんが、このタイプはアメリカアセンブル、アイルランドアセンブル、シンガポールアセンブルがあるようです。

前期タイプの筐体です。上の後期タイプはドーターカードを取り付けてい ますが、これには取り付けていません。
導電塗装はボトムケース全般に及びます。
メインバッテリーを外せば簡単に確認が出来ます。
三菱電気製のフロッピードライブです。
作動させるとビーブ音がきついのでおよその確認が取れます。結構強力で、大半のフロッピーディスクが動きます。
ダイカスト部分が下のソニー製より分厚いようです。

SONY製のフロッピードライブです。
作動音は比較的静かなのですが、どうも読みとりなどが出来ないフロッピーディスクがあるようです。

初期型に取り付けられていたディスプレーヒンジ部分とマグネシウム製の インナーフレームとを結ぶアース端子です。下のように装着されます。
おそらく、ヒンジの材質違いから、アースが浮くのを防ぐためではないか、と思います。
今回はヒンジがリビジョンAを使用するため、この端子を装着することにしました。

これが上の端子を装着した写真です。受けの部分が見えると思いますが、 この部分にヒンジが接することになります。

終幕 これから
 一気に5台のオーナーになった僕からすると、5XXシリーズを入手するポイントを次のようにまとめてみました。

●まずは520cを選ぶこと
 このことは540cのTFTがいいように思われるでしょうけど、程よい暖色系の画面が、そのうちに何らかの形で「赤味」を帯びさせた状況を呈するように なってくる、と思われるのです。もちろん、東芝とかその他のメーカーによる違いはあるでしょうが、Duo 2300cと2台の540cで得られたことからの結果としてのことですから、何とも言えません。
 しかし、パッシブマトリクス特有の欠点はありますが、ノーマルの520cはもとより、540cに520cのパッシブマトリクスを装着した場合でも、 520cのパッシブマトリクスの方が好ましい結果をもたらせました。

●AC電源アダプターとのコネクター部分がきれいなこと
 この部部がくすんだりしていると、ただでさえ不安定なこの部分で電気の流れが非常に悪くなるようです。ACアダプターは交換できますが、ボードを交換す るとなると、CPUカードとマザーボードの兼ね合いから、ことが少々面倒になります。本体側の端子が輝いていればOKだろうと思います。

●メモリーは出来れば32MBを搭載してあること
 少なくとも20MB以上のメモリーが絶対に必要と思います。

●漢字トーク7.5.1〜7.5.5がインストールされていること。
 無ければAppleサイトから7.5.3をダウンロードしてCD-Rかフロッピーで準備すればいいようです。7.5.5へのアップデートは簡単に行えま す。MC68LC040のCPUではOS 7.6.1では少々遅い、と感じます。

●フロントのマイクカバーはツメがあるかどうかしつこいほど調べること
 大げさなという無かれ、ハードディスクの交換、メモリーのアップなど、その都度この部分をさわらなければならないですし、リビジョンBの強力ヒンジが加 わると、この部分は相当負荷がかかります。しかもツメが華奢なため、オーナーがおそるおそるやることが余計に破損を招くように思います。
 ディスプレーを水平近くに倒して、ツメの位置にあるところをキーボード側から小さいマイナスドライバーで軽く押し込み、片手を添えて、ドライバーの柄を 上下するだけで解除できますから、おそるおそるやってコジ開けようとすれば必ずこのツメを破損させることになります。少なくともセンターのツメが大丈夫か 確認することが大切です。両端は不細工ですが、メンディングテープで固定が出来ます。

■ヒンジはリビジョンAを...
 なかなか難しい問題ですが、ディスプレー部分を150〜160°程度に傾けた場合、水平に倒れ込もうとするもの、あるいは、ディスプレー の開閉にどことなく弱々しさが感じられるものがリビジョンAのヒンジだろうと思います。
 このリビジョンAのヒンジだとディスプレーのフロントパネルの取り付け部分への影響も少なくなります。

■消耗品はストックしておくこと
 すでに、5XXシリーズも巷で少なくなりました。メインバッテリーをはじめ、バックアップバッテリーなどを入手しておく必要があります。

▼バッテリー駆動は補助として考えること
 意外に思われるでしょうが、ACアダプターをつなぎっぱなしにしておくこと!。この一文が取扱説明書に記載されていないため、多くのPower Bookで、メインバッテリーが逝ってしまったように思います。
 リチウムイオンバッテリーになるモデルまでは、ACアダプターをつないだままにしていた方が、いざバッテリーで駆動するときに対しても有効だ、というの が僕の持論です。

 このことは2003年の時点で記しています。決してバカを言ってるんじゃないんです。後先になりますが、僕の「ブラックバードが飛んできた」を一読して いただければ、その一端がご理解いただけるのではないでしょうか。
 そろそろ、時間が来たようです。今の僕の520cはメモリー最大でドーターカードは純正の100MHzのPPC 603ev仕様になっています。OS 8.1でも使えるかな、と感じています。ATOK 13のキー設定が少しおかしいところもありますが、日常業務では過不足無く動いてくれています。
 蛇足ですが、同じMC68LC040であっても、僕は25MHzの520c用を選びます。このわけを言ったところでどうにもならないでしょうが、そこそ この動作をしますし。その上に安定性が大きいように感じます。
 いずれにしろ、このマシンがメジャーになるなんて考えてもいません。ちょうど古い自動車をレストレーションして今に活きさせるのと同様に、OS Xとなった今のMac、しかもOS 9までは動かないとなれば、古いMacにも再び注目せざるを得ないのです。その時にはカッコイイPower Bookを使いたい、というのが... 。
 ま、そんなこんなで僕のPPC 520cは快調に作動しています。

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