Power Book 520c 不 思議な縁(その2)
第2幕
第1場 クラシック・ボックスからの520c

 写真では程度が不明。特に中古の場合は... 。いつもこのことが頭をよぎります。実際、僕自身も程度説明には相当に苦労します。写真は特に曲者で、「痘痕も靨(アバタもエクボ)」となる可能性を秘 め、実際よりもキレイな印象を見る者に与えます。当初はこういった意味合い、それに今回のクラシック・ボックスさんの520cは程度Aとはいえ、この機種 にしては高価、と感じざるを得ませんでした。
 ところが、前号で記しましたヤフオクの件をはじめ、相当数の出物はあるのですが、大多数の500シリーズはどうやら経年による何かが隠れているように感 じはじめました。もちろん、メインのインテリジェントバッテリーが生きているかどうかは対象外です。
 この経年の大半は内蔵バッテリーの不良、ドーターボード上のCPUの状況、そして1400シリーズまで続く電源コネクター部分の状況だろう、と薄々感じ 始めていたところです。
 しかし、過去数回クラシック・ボックスさんからブツを購入しての判断をすると、今回の520cも、それほど高価ではないと、購入に踏み 切ったところです。以下の写真はこの520cがモデルです。
 2003年 6月 3日、日通のペリカン便で突如やってきました。自宅は不在がちなために職場へ送付依頼していたし、その上に着払いですからお金の面で右往左往。これほど 早い到着でびっくりの一時でした。
 早速開封して息をのみました。「キレイ!」。液晶ディスプレー下のフロントカバーも異常ありません。どうやらバッテリーも生きているようです。早速通 電。
 システムは7.6.1で、各種インストールされているソフトウェアなどから、元のオーナーがKさんであることが分かりました。私の就業中ずっと通電した まま にしておいて、夕刻に自宅へ運びました。

第2場 点検と修正
 今回の520cをもう一度検証してみますと、まずCPUはMC68LC040で25MHzのクロックです。メモリーは32MBでオンボードと合わせて 36MBになります。ハードディスクは240MB。システム構成はMac OS 7.6.1といった状況でした。
 久しぶりにウキウキ気分です。ちょうど誕生日前に到着したので52歳のプレゼントの意味もあったし、何よりもバッテリーなどが生きていることに感動もの でした。しかし、数台500シリーズをさわっていますと、中古で購入した場合はどことなく欠点めいてくるところが分かるものです。
 とにかく、前オーナーが使っていたものを私が今から使うわけです。内容関係はどうしても前のオーナーのクセが残るのは確実です。それ以上に、クラシック ボックスさんで点検整備はされているのですが、どうしても私の考えるところと一部食い違うところがあるのも事実です。そのような観点から、手を入れるとこ ろを通常私が行っている方法を紹介してみたいと思います。

(外側からのボルトの増し締めなどは大丈夫でしょうが、手を入れるなどは改 造扱いになり保証の対象外になります。手を下した方の責任で対処してください。)

▼まずは、本体側のAC電源コネクター部分です。このコネクターの端子棒の輝きのないものは要注意です。また、アダプター側のホルダーリングとの関係もガ タが少ないことが大切です。
●端子帽が輝いていないものは接点復活剤など、それなりの整備が必要になってきます。アダプター側の外周のリングは締めるのではなく、スリットが均一にな るように広げてやる必要があります。
▼次にディスプレーを立てた状態で、円錐形のヒンジ部分の周辺が少し揺れるようなら、この下にある取り付け(トルクス)ボルトが緩んでいる可能性がありま す。
●この部分は多くの500シリーズに見受けられるものですから、一息だけきつく増し締めをしておく必要があります。
▼この影響から、ディスプレーのスピーカーグリルの付いた前面カバーの下側にあるヒンジとの取り付け部分が割れているものがありますので、ここの確認も必 要です。

  

▼これらの作業をするために、ディスプレー下のフロントカバーを外す必要があるのですが、これもフックが折れてしまっているものがあります。
●この部分の補修を考えているのですが、今のところアイデアが沸きません。

ここでディスプレー部分の相対的な対処方法を紹介します。
 ディスプレーと本体とをつなぐヒンジ、ディスプレーカバー、それにフロントカバーに対しての方法です。ただし、この部分はスピーカーユニットの取り付け られたディスプレーカバーはヒンジへの取り付け部分が完全なものでなければなりませんし、フロントカバーは少なくともセンターのフックが壊れていないもの を必要とします。
 用意するものは、#8のトルクスドライバーと10分硬化型のエポキシ系接着剤を用意します。5分硬化のものでもかまわないのですが、作業がどうしても性 急になってしまうので、私は10分硬化のものをお勧めします。
 必要ならステンレスの小さい平ワッシャー、マスキングテープ、ビニールテープを用意します。

●電源コネクター、バッテリーを外します。
●ディスプレーを水平近くまで倒し、センターカバーを外してディスプレーカバーのヒンジへの取り付け状態を確認します。
◆この部分にヒビが入っている場合は、取り付けのタッピングビスをほどいたときにバラバラになるものかどうか確認を要しますので、この時点でわずかに緩め てみます。
■緩めたときにヒビだけならそのままの状態にしておきます。ヒビではなく割れている場合はマスキングテープを用意してバラバラにならないようにしておきま す。
●ヒビが入っていないもの、ヒビが入っていても原型を保っているものは、この時点でエポキシの接着剤を表面に少し塗布し補強します。

   
 
 作業はこれだけです。硬化した後で組み立てれば、エポキシ接着剤の効果はすぐに分かります。本来なら、ディスプレーカバーの取り付けはトラスのタッピン グビスに交換すべきところでしょうが、元のタッピングビスを使う場合はタッピングビスの径と同じ平ワッシャーを入れておけば、締めつけトルク、ディスプ レー開閉時の力の集中の関係から有利に働くのではないでしょうか。

 次に破片がバラバラになって、全てが揃っている場合の対処方法を記します。
◆バラバラになった破片を集めておきます。
●まず、ディスプレーカバーの裏側からビニールテープを貼って、表側にピンセットなどを使用して破片を並べます。
●その上からエポキシ系の接着剤を塗布します。


 
 破片が揃わない場合は、エポキシ系の接着剤で取り付け部分を形成します。
●はさみで切り取れる程度の薄いスチロール板を用意し、取り付け部分より少し大きめに切り取ってエポキシ系の接着剤で取り付けます。
●接着剤が硬化して動かなくなれば、取り付け側からエポキシ系接着剤を塗布しておきます。
●完全に硬化した後で、ピンバイスなどで取り付け穴を開けて出来上がりです。

最終取り付けはこのようになります。この場合はアルミ板でワッシャーを自作しております。



 少々支離滅裂ですが、私のやった修正方法を紹介させていただきました。

第3場 システム構築

 上記の欠点めいたところの修正を行った後で、作動をさせてみたのですが、ハードディスクの容量が残りわずかになっているため、インストール済みのアプリ では作業が出来ません。やむなくイニシャライズしてMac OS 7.5.5でシステムを構築してみることとします。
 機能拡張、アプリケーションなど慎重に選んでインストールしたのですが、どうしても240MBのハードディスクではブランク部分は100MBを切ってし まいます。ハードディスクはそのうちに容量の大きいものに変更することとして、現時点で520cを使える状態にしました。
 概要はMC68LC040の25MHzのCPUですし、メモリーも合計36MBです。それでも7.5.5は7.6(.1)よりも快調ですし、そう重いア プリ ケーションなどを使わないのなら、このまま使ってみるのがいいのではないでしょうか。

第4場 ボードを換えるよりは...

 前回の終わりに、もう一度組立直しをするつもりでしたが、今回入手した520cの程度が良かったので止めにしています。この520cに対して今後一番に やることはハードディスクを容量の大きいものに交換することでしょうが、全体として少しばかり動きのいいものにしたいと考えます。それにはPPC化にする のが一番の早道でしょうし、540の33MHz、550cのMC68040のドーターボードに交換ということも考えます。
 普通に使用する場合は現状の25MHzのドーターボードでもいいと思いますが、やはり人間ですからと、少しでも上を目指すのは当然のなりゆきかもしれま せん。
 ここでは分解写真などは割愛しますが、CPUの乗ったドーターカード、メモリーなどのカード類は、放熱板の下に一点集中のコネクターで結ばれています。 本来なら専用工具でこれを外すのですが、無い場合、マイナスドライバーなどの金属を用いると、時として良くない方向へ陥ることがあります。
 そこで、専用工具のない場合は、割り箸などを加工したものを用いていただきたいと思います。そしてキーボード、フロントグリル、リアカバーを外した後 で、マ グネシウムのインナーフレーム、フロッピーディスクドライブなどに手をふれて体内の静電気を逃がしてやる、という最近のマシンにはほとんど気にしなくてい いような、方法も採らなければなりません。
 残念ながら手持ちの33MHzのボードが壊れていたので装着して変化の確認は出来なかったのですが、540cが昇天するまでの間の使用感覚から すると、体感速度が速くなる一方、若干発熱量が上がるようです。想像からですが、この発熱がCPU自身が装着してあるボードなどに影響が出てくるのではな いでしょうか。
 25MHzのボードでは起動時に若干イライラがつのるだけで、それ以後はなかなか快調ですから、このままでもパフォーマンスはなかなかのものと思ってい ます。
 アマチュアはアマチュアなりに、ヒートシンクを兼ねたCPUドーターボードカバー のフィルムでふさがれた放熱穴に千枚通しで穴を開けてやるなどの方法を 採るのもいいか、と感じます。

第5場 この時点で考察

 最初の出会いから520cが3台、540cが1台が、あっという間に私の元にやってきました。クラシック・ボックスさんからのものが一番程度がよかった ために事なきを得ましたが、500シリーズはオーナーの使い方というか、キカイをしっかり使っているかどうかで快調かどうかが決まる、ということが明白に なりました。
 もちろん、Appleの考え方が今のノートパソコンの行き方と少しばかり違う表記をマニュアルに記載していたことと、筐体を含め全体としての弱さがある ことも、若 干ながら、この500シリーズの評価を少し下げているようにも思われます。
 その第一はインテリジェントバッテリーです。このバッテリーが相当に曲者です。バッテリーに人工頭脳を持たせているから、万一の場合、本体を守る役割に 回ることが出来る、とAppleでは評しています。ところが、完全放電させると、通常ではPower Book 100のようになってしまいます。100ではバッテリーが死んでしまうのですが、インテリジェントバッテリーでは生きているにもかかわらず、インテリジェ ントバッテリー・リコンディションでも回復できない場合は使用をあきらめざるを得ないのが実情です。
 私は常に感じるのですが、1400までのPower BookはAC電源で作動させることが主たるもので、バッテリーのみでの使用は二次的なもの、としていたのではないか、と思わざるを得ないのです。した がって、今回入手した520cは、左右のバッテリーベイに搭載してあるバッテリーも左側のものしか動いていない状態でしたので、それを右側に移しました し、購入後も本機の移動とかの場合を除いて、ずっとACコンセントにつないだままにしているところです。そして、2か月に1度、バッテリー残量が少なくな る(スリープする)までバッテリーで駆動してやり充電をする、という方法を採っています。
 もう一点はディスプレー周辺のフレームというか、合成樹脂製の筐体が弱いことが上げられます。強いて言うと、操作上、強度が伴わないように感じていま す。今回紹介した方法は稚拙ながらも当を得た簡単な方法ではないか、と感じています。
 液晶も色合いなどは悪いですが、デュアルスキャン・パッシブマトリクスのいい面をもっと前面に出すべきです。わずかに赤みがあるかな?、という点を除い て540cのTFTカラー 液晶はキレイですが、PPC Duo 280cを使ってみますと、少しばかり青みの強いディスプレーの方が目に対して操作が楽なのではないか、と考えてしまいます。現在のPower Book G4のようにDVDの編集とかの使い方はしないし、古いOSだから、アプリケーションにしても今の重いものとは比べものに ならないのは事実です。また、消費電力もわずかでしょうがTFTよりは少ないのではないでしょうか。
 このようなことから、私としてはデュアルスキャン・パッシブマトリクス液晶を用いた520cを500シリーズのメインにしてもいいのでは... 、と考えています。事実、生産台数も一番多いし、生産期間も一番長かった、という事実があります。
 とにかく、これで今回購入した520cが使えるようになったわけです。

[もどる]



inserted by FC2 system