オーディオ前書き

本来のオーディオとは
 友人のK君のアンプが調子が悪いという。サンスイの中古品だけど現代のアンプで、考えようによっては新しくした方がい いかもしれない。話はここからなのだけど、もし、アンプを交換するとおそらく彼のアルテックでは今までの音は出なくなるだろう。そうすると一般のレコード 鑑賞(古い)ファンはどうするのだろう。今の世の中ならよほどの思い入れがなければ僕はすべてをこの際だからシステムコンポに買い換えをするだろうと思う のである。
 僕の場合は最初からマージンを見込んだもので構成しているし、アンプが先でスピーカーが後になった希有な例ではある が、再生する音質に一定満足しているためにスピーカーを生かすアンプもおよそこのようなものを選べばいいというのが分かる。で、15年前ぐらいまではこう やって構築していたわけだ。
 ところが、CDが出たりLDが出たりした1980年代はオーディオとヴィジュアル(AV)の境目をつけようとヤッキに なっていた。そうそう、「ピュアオーディオのすすめ」なんていう言葉も目にしたが、今では死語に等しい。そして、DVDオーディオとかいう期待のものを 待っているのだが、これだってヴィジュアルである映像の分野とコンピュータの分野が先に来た。CDにも(レーザービームによる)焼き付けができるように なったが、これもコンピュータが先行した。
 現在では数万円も出すと立派なオーディオコンポーネントセットが入手できる。トータルでシステムの批評ができる。で も、オーディオ評論家先生はそういったことをしないな。おそらく明快な批評を下す判断基準が古いからだろう。一般の音楽鑑賞ファンははっきり言って評論家 先生の耳よりはるかに上の聴覚中枢をもっていらっしゃる。S誌なんざいまだに数百万円のコンポーネントの評論やって、というよりは製品の羅列に過ぎないが 季刊発行の雑誌としては異例のことである。
 「ベートーベンの9番を壮大なスケールと臨場感でお贈りしたい、あなたの部屋をパリのオランピアに」なんていうキャッ チコピーをもってきたとしても、製品紹介のようにはならない。それは雑誌社が持っているリスニングルームとか豪華なリスニングルームにそのキャッチコピー にふさわしいライブレコードとコンポーネントでもってライナーノートと同じような時間なりに合わせるとある程度は可能だろう。原音追求という言葉もディス クに刻まれたものと実際を合致させる追求から、ディスクに記録された内容をいかに忠実に再現するかに変更されたがやっている内容は変わりはしない。
 ところが、数種のものを犠牲にすると最近はこれができるようになった。しかも安く。その試みは僕がU氏のヤマハのイコ ライザーを使用してビートルズはイギリス盤CDのSGT.ロンリーハーツ・クラブ・バンドをカセットテープにダビングしたときに感じた。ビートルズファン の一人に聞かせると感激した、といっていたが大したことは何もしていない。このイコライジングもビデオ関係の臨場感なんかを強調させたり減衰させたりする ためのものだった。
 そう、だから、現在では主流は光り物が主なレコードなんだし、アナログのレコードはカセットテープぐらいのものだ。こ のカセットテープっていうのはビデオカセットと同様になくなりはしない。僕にも反省点はあるが、レコードは明確に区分される。それをよりよい音質で楽しむ にはどうすればいいかを考えればいい。
 それが大きいCDラジカセであっても僕は見下したりはしない。一部では数百万のシステムの音質を越えている場合もあ る。同一条件の設定と両者の違いを高度な計算により同一化してスピーカーから出る音を録音する。それを同一のシステムで聞き比べをやると本当に比較可能な のである。トータルで出す場合、メーカーはそういったことまで計算に入れているのである。
 最近僕がオーディオのことを言わないのはこういったことであほくさくなってやってられないからだ。もし、僕のようなシ ステムを構築すればどうですか、と今言ってマジになってつきあってくれる人が何人いるだろうか。そういえば車の中でCD が音飛びもせずに聞ける世の中になったのだなーって。
 こういった状況でも真に心の中に音質を追求する方向の人がいらっしゃるわけだから、そういった人はその目的に邁進して いただければいい。ただし、オーディオそのものはレコード音楽を楽しむことを忘れてはならない。


プロローグ
 僕がオーディオに目覚めたのは中学2年生の時ではなかったか、と記憶しています。ちょうど今から34年も前のことになります。父にせがんでビクターの ポータブルステレオレコードプレーヤーを買ってもらいました。約束でレコードは個人で買え、というものでした。僕の本心はビートルズが聞きたかったからで す。それも、追手通りのスバル座にポップギアが上映になったり、同級生と栄町の日劇でHELPを見たときから急カーブを描いて傾注し始めたからです。残念 ながらA Hard Day's Nightは宇和島での上映はありませんでした。また、小学校時代からクラシックギターをやっていたもので、リッケンバッカーのギター(当時は知らなかっ た)にも興味を示していました。が、いずれにしても彼らの音楽を自宅で楽しまないとどうすることもできない、と考えて父に対してのおねだりだった、という のが本当のことでしょう。

 このプレーヤー、実はアンプになったり改造を試みましたが、現在も現役です。重針圧を利用して中古レコードのど うしても取れないグルーブのゴミを取り去るのに効果がありますし、ピックアップを逆にしてSPレコードが再生できるので重宝しているのです。
 これを機に少しずつオーディオの世界に入り込んでいくわけです。
 遍歴は改めて申し述べることにして、ヘッドページで申しましたように、一つの雑誌のCMが再び中学高校時代のオーディ オ事始めに引き戻すことになるわけです。

                            

リフトアップ
 ポータブルの後はビクターのモジュラーステレオでした。途中、あまりの音質の悪さにスピーカーを2度も変更しました が、レコードは正常なのに針飛びを起こしはじめ、いよいよ次のステップへということで、サンヨーのOTTOでアンプを揃え、レコードプレーヤーはちょうど ソニーの在庫処分品でBSRのチェンジャーが組み込まれた製品が格安で入手できました。オープンリールのソニーデッキといっしょに支払いをしました。
 このシステムはずっと結婚後2年間、実に9年間にわたって使用しました。ピックアップカートリッジが交換できないタイ プだったので、苦労してシュアーのカートリッジを取り付け、適正針圧にするために硬貨をテープ止めなどして使いました。
 家の失火で全てが失われ、現在のシステムを構築するまで実に10年もかかり、金額も200万円ほどつぎ込みました。一 定のものは出来上がったし、時代はディジタルオーディオの世界になり200万円ぐらいは端金のオーディオの世界の風潮になり、少しずつオーディオから遠の きはじめてCDなんかも全く購入しなくなっていました。

のろしの火
 僕のシステムでCDを再生すると電気代がけっこうかかります。つまり真空管方式のアンプによるところ大だからです。 ADの再生だとトーレンスのベルトドライブプレーヤーは回転が安定するまでは数分回し続けなければなりません。冬だと部屋の温度(16度以上)を上げない となりませんから手軽にを無視したレコード鑑賞になってしまう、こういったことに嫌気がさしていたのです。
 が、ラジオ技術誌を書店で立ち読みをしていたときにBSRの昔どおりのチェンジャーを見つけたのです。しかも指定箱入 りの新品。値段も3万円までです。急に胸騒ぎがしはじめました。何か言いようのない、それでいて懐かしい、そういった気分で家に帰りました。すでに、頭の 中にはどういったトランジスタアンプが必要なのか、真空管で行くか、そういった考えがスイスイと浮かんできていたのです。
 早速発売元へ電話をしました。もうウキウキです。MacのQuadraが入手できたときとは違うウキウキです。そう、 片方は夢の実現でしたが今回はこれから始まるんだ、っていう気分なのです。火は点きました。

 

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