アナログ〜ディジタル録音
前書き(考え方)
ちょうど15年ほど前(1986年ぐらい)になるだろうか、オーディオのCDが出てきてしばらくしての時期だった。ソ
ニーからVTRのカセットを利用してPCM録音できるキカイが発売された。テープ部門とコンバーター部門がほとんど同じ形状でペア
になったもので、非常に興味を持ったが、何しろ高価で、手が出なかった。しばらくするとDATと称するちっこいテープと録音再生機が発売に
なった。
このDATを購入された方も多いはずだが、実のところ、著作権にカラム一件からかしら、子のテープから孫のディジタル
録音は出来なくなった第二世代が発売されて以降、さっぱりになった。
もちろん、このためだけではなく、アナログのカセットテープのようにA・B両面に録音できるような方法ではないため、
マスターとなるDATの音楽テープ(ソフト)が発売されなかったこと、これらが一体となって、急速に衰退していった。
間もなく、ミニディスクが出てきたが、これは地味ながら、着実に人気を出している。度重なる改良で音質もなかなかいい
ものがある。
僕とディジタルの出会いは、宇和島の旧公会堂で、ソニーのフェアがあったとき、妻と共に、CDPから始まるソ
ニーのCDプレーヤーの第1号機からCDの音を聞いた時であった。全く無味乾燥した砂漠のような感覚の白いテーブルシーツの上に置かれたコンポか
ら雑音もなく、突如「山口百恵」のプレイバック・パートIIが流れたときだ。一瞬唖然とした。早送りなどやるとまるでテープ
のように進むではないか。歌舞伎の太鼓で雪のシーンがある。それが流れたときは一瞬背筋が寒くなる感覚に陥った。
妻は「ヤバイ、この人はまたこれを買うつもりだ」とばかり、顔をこわばらせたが、当時168,000
円。ちょいと手の出るものではないから見送った。同時に、ふくよかさというか瑞々しさのようなものが消えて、カチっとした音、本来は角が丸四角の絵画とい
うか音像なんだが、それの四隅を直角にしてしまうような音に違和感を持って、一部マニアに名機と呼ばれるマランツのCD-34を購入するま
でには数年を待たねばならない。そういえば、発売してすぐに見向きもされなくなって、最近人気が出てきた、AppleのPower
CDもピックアップ部分は、フィリップスのスイングアーム方式だ。これだけでも、この機械に価値があるのかな?。
もちろん、このソニーの最初のCDプレーヤー発売以後、CDの入れ方から始まって、様々な改良が加えられ、ソフトの製
作技術、ハードのDAコンバーター部分を中心に、CDのドライブ方法、伝送方法など、当時からすると格段の進歩が感じられ、今に至っている。
前書きがえらく長くなったが、このことを念頭に置いて、ソニーの廉価版PCMプロセッサーを購入できなかったことが、
僕のディジタル録音から遠のかせたし、録音機にしても、オーディオコンポのカセットデッキにマイク端子がなくなていることも、このことに加担していた。け
れども、コンピューターを通せばディジタル処理できるはずだ、という考えは一向に消えないし、そう信じていたから、何とか簡単にディジタル
ソースを作りたい、という火種は持ち続けていた。
コンピューター購入と
時に1990年頃、職場の同僚M君が、僕が東芝のワープロを買う!と言ったものだから、「これからはコンピューター、
しかも簡単な操作のものが主流になるので、ひとつMacにしましょう」と盛んに言い始めた。「Macってマクドナルドか?」といった状況だし、「日本じゃ
NECだろうが」といった状況のときでもあった。「Macで音楽の録音は出来るか」とM君に問うと、「業界ではほとんどMacだ」との返事。「ひとつ多摩
のPlus
Yuに問い合わせたら?」と、そこの「Iさん」とスッタモンダのやりとりをして、SE/30を購入することになる。
残念なことに、当時はどちらかといえば音楽創りにコンピューターが使われていた時代だし、メモリー1MB当たり
10,000円の時代だから、僕もこんなことをやるには、金銭面だけでもSE/30では難しい、と考えていた。そういったところから10年が経過
したわけだ。
僕にとっては、動機がどうもピントはずれ。でも、それが思わぬところで繋がる、ということがしばしば出てくる。何にし
ても、それに向かって、というところがないわけだ。
今回(2000年)ロジテックのCD-RWのキカイを購入したが、OS
XをPowerBookにインストールする際のハードディスクのバックアップをするため、というのが本来の購入動機だった、が、「Boneさんほどの人が
CD-Rに録音しないってのはおかしい」と同僚でモトクロスライダーのY君がいうものだから、「そんなものか?」と、だけ感じていた。バックアップも難な
く行えたし、CD-RWを使えば、比較的簡単に作業できる。CD-Rでも2〜3枚の失敗で慣れる。使い勝手はなかなかいい、と感じた。
いよいよ録音へ
カーステレオなどでの利用のために、音楽CDのバックアップを多くやった。息子からこれとこれとを頼む、と数枚のCD
を渡されて閉口したこともあった。CD-CDの録音(焼き付け)は難なく行えていた。まだ、アナログ録音のことは眼中になかった。頭の中からサウンドボー
ドだの付帯機器のことが消えなかった。まだまだだな〜、と考えていただけだ。
友人の宇和町のY君が「シャープファイブをCDに落としたいものだ」というので、サウンドボードなんかが必要で、結構
ゼニがかかるんじゃないか、と言ってはいたが、僕も同じようなことは考えていた。高石ともやとナターシャ・セブンのLPボックスなど、CDとして保存し、
MacならアナログディスクからはAIFFの形式にして取り込んで、ハードディスクに保管しておけばいい。こういったCD化されていないアナログ音楽レ
コードはCDで保管しておきたいのである。当然、個人の使用目的で。
結局、いつもアナログ録音をやる、っていう時点で終わってしまうのだった。何気なくMacのスペックをカタログなんか
で見ていたときであった。大半のキカイがマイク入力を備え付けているではないか。しかも16ビットのステレオ入力だ。もしかして、これって簡単に外付けマ
イク端子から音源を取り入れられるのではないか、と考えた。
ものは試し、早速CD-Rのメディアを購入して、やってみることとした。
実に簡素な僕のコンピューター録音システムは写真のとおりだ。
流れとしては
1.まずはオーディオテクニカのサウンドバーガーでアナログディスクを再生する。
2.次にサウンドバーガーのライン出力端子からPowerBookの外部マイク入力端子へ信号が入る。
3.これでAIFFのファイルがCD-RWのライティングソフトによって作られる。
4.PowerBookから(僕の場合は)SCSIカードを通してAIFFのファイルからCD-RWレ
コーダーへ記録される。
という方法だ、
録 音
2001年8月19日(日)台風11号の余波で風が強い。とにもかくにも、附属のMac
CDRの説明書を読む。まずは試し録音だ。CD-RWのメディアを使用して録音。当然、スタイラス(レコード針)を通しての録音は等倍速。CD-Rへのラ
イティングは安定性のある4倍速だ。
出来上がったものをCD-ROMで再生、ウ〜ン、一瞬うなってしまった。固有のノイズは入るがなかなかいい音である。
それではCDプレーヤーではどうだろうか。アレ?!、再生しない。おかしい。後日、家庭用のCDプレーヤーにはCD-RW再生の対応品が少ないこ
とが分かったのだが、それでも、音質は十分ということは分かったから、とりあえずはCD-Rに記録するとして、作業を開始した。
音楽CDと違って、アナログ録音の1曲1曲は録音開始と終了が手作業だ。これが困難を極める。そして、ライブなどの連
続録音では、LPレコードならA面、B面の二つのトラックとして分割して収めざるを得ない。これが最大の難点だし、埃、キズのノイズはキャンセルできな
い。これも残念だが、あくまで簡便さと保管が目的だから、頑張る。
結果、慣れにもよるが、LP1枚の50分ものなら、およそ1時間でAIFFのファイルが作れる。ライブなどは若干早い
時間で完了するようだ。CDに焼き付ける時間を含めると、およそ1時間半の時間が必要だ。かなり時間を食うが、致し方あるまい。とにかくAIFFのファイ
ルが出来ることだけでも幸いだ。その上にCD-Rに焼き付けておけば、よほどのことがない限り、そのままの状態で保管できる。
考 察
冒頭申し上げたように、PCMプロセッサーを購入していれば、今頃はなかなかおもしろいコレクションも出来ていたはず
だ。しかし、ビデオカセット同様、保管場所に難儀をしていることは間違いがない。頻繁に使用しないテープならいざ知らず、そこそこ使うテープとなると、こ
れも逆にプロセッサーを使用しないとならない。ディジタル転送が出来るとはいえ、再生装置は大がかりになることは否めない。
あれから10年が経過した2001年、ようやく、僕のコレクションで重要なものはCD-Rに焼き付ける道ができた。
ま、Macなればこそ出来た、というと語弊があるかもしれないが、Macのサウンドはコンピューター内蔵のものとしては今でも出色の出来ではないか、と確
信している。
若い方々にアナログディスクが流行っている、という。しかし、CD化したアナログディスクの音質は一部とんでもないも
のなんですよ、ということが感じられるかもしれない。これからCD化をやってみようとされるなら、昔、盛んに言われたクロストークのことが、今になってア
ナログディスクをCD化すると全くなくなってしまったり、ミキサーのボリウムスライドが感じられたり、音が繋げられているか所が分かったり、なかなか興味
のある現象が出てくることも往々にして有り、の世界が広がるのも感じていただけれるのではないだろうか。
とにかくアナログのディジタル録音は大成功であった。
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